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文字数 693文字

 その頃、本物の宮本武蔵の所には客が来ていた。言わずと知れた、服部半蔵と柳生十兵衛だった。
 半蔵とは知り合いだったので喜んだが、
柳生十兵衛がやって来たのは意外だった。
つまり公儀隠密が二人もやって来たのだから、これは大変な事になったと宮本武蔵、腹を括っていた。

「まあまあ、田舎なれども。美味いものでも、用意しましょう」

と宮本武蔵は客間に二人を通すと。
宴会を始めた。酒を飲み、つまみを食べながら半蔵はニコニコ笑っていた。
半笑いの十兵衛に武蔵は酒を注ぎ、次に半蔵に注いだ。

「あははは、久し振りだな。関ヶ原以来か。
お前も年寄りになったな」

と半蔵は笑って飲んでいた。
十兵衛は苦虫を噛み潰した様に黙っていた。

「お互い様だよ。こっちとら田舎に引っ込んで師匠なんて言われて、柔術なんか教えているが
一体、どれ程の者が役に立つのやら」

「そうだな、心半分技半分と言うからな。
覚悟のない者は、戦場では生き残れない」

そんな、昔話をしていると。

「うん!」

と、十兵衛が咳払いをした。
それを見て宮本武蔵。

「どうやら遊びに来た訳じゃないようだな。
あの件かな?」

と聞きました。
そこで、チラリと十兵衛を見ると半蔵。

「若い者は、せっかちでかなわんな。
では、用件を先に済ますか」

と座り直すと。

「吉岡一馬を倒した、剣豪宮本武蔵を匿っているな?」

と言った。武蔵、

「やはり、その件か・・・。確かに、剣豪宮本武蔵を匿っておる。捕まえに来たのか?」

と、少々困ったように聞いた。
すると十兵衛が、

「最早、捕まえてどうこうするでは、片がつかなくなっておる。しかも、巷では偽物武蔵は、今やヒーローになっておる。佐々木小次郎が噂を広めているのでな」
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