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文字数 778文字

 そして、ヤー!トウー!と激しい剣撃を、
ヒラリヒラリとかわし。一撃も受けずに相手を翻弄した。
 良三君、日頃は上段者ばかりと練習をしていたので、この手の輩が慣れていた。
 しかも相手が、撃ち殺そうと真剣なのを全く気が付いていない!
肥後の道場では、殺さないように手加減してくれていたのを知らないものだから。
俺はやはり日本一強いと勝手に思っていたぁ!

 相手は、これは只者では無いと焦り、息が上がってきた。
そこで良三君、相手の脇腹にガツン!と蹴りを放ったー!
見事にとは言えなかったが、力任せの蹴りをくらって、ウッと道場の端へと相手が倒れたー!

これで終わりだなと思っていると。
何処に隠れていたか。次から次へと門弟が現れ。次は俺だ、次はと木刀を振り回してやって来た。
 流石に疲れてきた良三君、こりゃいかん!
避けきれずに何発か貰ったが。
そこはルールも何も無い。相手の木刀を握って投げ飛ばしたり、蹴りを打ったり、拳で殴っ飛ばしたり、投げ飛ばしたりと。
最早、乱闘、ストリートファイトへと道場は、変貌していたぁ!
 そこで良三君、

「待たれい!このままでは御馳走が冷める。
怪我人も増える。
吉岡一馬殿と、お相手致したい!」

と無い知恵を絞った、一言を放ったぁ!
名指しをされて行かぬは武士の恥。
しかも相手は疲れている上に、何発か打たれて手負いの状態。
私が一撃で仕留めて、肥後の柔術家、宮本武蔵打ち取ったり!
と宣言してやろうと、ニヤリと笑うと。
良三君から奪った書状を袂から出して。

「良かろう、私を倒したら、これを返してやろう」

と言ったぁ。
あっ?忘れてた!
良三君は、それを返して貰いに来たのを、
すっかり、失念していたぁー!

「良かろう」

と、良三君これで終わりだな。
後は酒を飲んで・・・、いや帰ろう。
どうやらこいつら本気だ。
 全く京の都は勝手が分からん、と一馬さんを倒して逃げる算段をつけていた。
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