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 そりゃそうだ、美味い物を食って京都伏見の伏流水で造った旨い酒が飲めるものと思っていたら。戴いたのは頭に木刀1発である。
この男、若い故に人の接待を分かっていないと腹が立ってきた。
こう言う奴には、お仕置きだなと、いつになく上から目線で良三君、若武者を睨んだ。
若干震えていた若武者だが、1発当てたので、これはいけると思ったか、少し笑顔になった。
そして再び、

「ヤー!」

と打って出た!だが!何せ柔術とは、甲冑武術とも呼ばれている代物。
戦場で素手になった時、剣や槍を持つ者と戦う武芸だ!
当然、武器を持つ者とも練習を、みっちりやっていた。

 だが、あまり得意ではなかった筈の良三君。
何やら、ひらりとかわすと。そこに剣を持った無防備な腕が現れた。
 成る程、こう言う事か、と良三君。
千回の練習でも、一度も出来なかった事が、
この非常時に発現した。
だが、攻撃手段を学んでいない、が又もや木刀で殴られてはと、拳で力任せに若武者の腕を殴ったー!
ゴキッ!と嫌な音が道場に響いたかと思えば。若武者、ガランガランと倒れ込んだ!
一馬さんそれを見て、何と!驚いた!
田舎武芸者、傲りがたしと思ったか、どうか、

「遅れを取りおって!」

と若武者を叱ると。

「次!」

と、もう一人の門弟に言ったのだったぁー!
もう一人の門弟、明らかに若武者よりも年嵩で、有段者の風格、師範クラスかと思える男。
ゆっくりと良三君の前に出た。
良三君、こりゃ面白いと、ご馳走よりも自分が武芸で相手を倒したことにご満悦だった。
流石に京の水は、私に合っていると、良い気になっていた。
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