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文字数 716文字

 すると、

「いたか!」「いない!」「こっちだ!」

と声と足音が聞こえてきました。
 小次郎、立ち上がり待っていると。

「貴様!何者だ!あっ!そなたは・・・」

と提灯を持った男が、寝転がっている一馬に気が付き顔を照らした。

「一馬様・・・」

 沢山の吉岡の門弟に囲まれ小次郎の回りに、殺気をはらんだ空気が流れた。

「き、貴様がやったのか!?」

と一人が聞くと。他の門弟が、

「待て、その方は確か・・・。この間いらしたお客人。佐々木小次郎さんだ」

と言った。小次郎は、ふーっとため息をつくと。良かった一暴れしなくて済みそうだと。

「如何にも。私は佐々木小次郎である。
一馬殿は試合をなされて、討ち死にされた。
私は立会人として、その一部始終を見ていた。お止めなさいと止めたのだがな。武士の誇り沽券に関わると、聞いて下さらなかった」

と嘘八百を並べた。
 さて、これで騙せる筈だが・・・。
小次郎は神妙な顔で門弟達を見回した。
 すると、

「試合なら致し方ない。だが、我ら一門の名誉の為に。その者を討ち取らねばならない。
名は何と?」

と年嵩の門弟が聞いた。
佐々木小次郎しばらく悩んだが。

「宮本武蔵と名乗っておった」

と言った。周りから、

「宮本武蔵!」「あいつか?」とか「許せん」とか口々に言葉が漏れた。
 すると、

「肥後の柔術家、宮本武蔵か?」

と聞くので。

「違う。何でも、静岡の剣豪!宮本武蔵と名乗っておった。刀同士の試合であった」

「剣豪?宮本武蔵とな?」

「さよう、そう名乗っておった。
肥後の柔術家宮本武蔵とは同姓同名で、困っておると言っておったわ」

「成る程、それでか・・・。柔術家と思って剣を交えれば、隙きが生まれ遅れを取ることも有り得る。あやつ、只者では無い兵法家であったか」
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