馬鹿・2頁

文字数 670文字

 しかも、藪千代さんのお家がお取り潰しになるとは。
そこで漸く、自分の仕出かした事の重大さが、分かりました。

「すまん俺のせいで。チクショー、この牢屋を出て武芸者にでもなるかな?」

と言いました。

「お前が謝るとはな。あはは、少しは反省した様だな。お前の言う武芸者とは剣客の事だろうだが今、幕府はその手の輩に手を焼いておってな。簡単にはなれんぞ」

「そうなんだ、小次郎はなったのになぁ〜
一体、いつ迎えに来るんだろう?」

 良三の能天気な言葉を笑顔で聞きながらも。藪千代さん悟りを開いたかの如く、読書をしながら書をしたためておりました。
 良三君、やはり詰まらないので、

「何か難しそうだね。そのミミズが這いずった様な字は何?絵?」

「あはは、これはオランダから持ち込んだ新聞と言う物だ。内容はオリンピックについて書いてある」

良三君、田舎者の勉学の出来ない唯の百姓です。字など読める筈もありません。
ふーん、と言うばかりです。

「その、おりんひくって、なーに?」

「あは!オリンピックとは色んな技芸を競い合う大会の事だ。例えば、速く走るとか高く跳ぶとか、そう言うのを競い合うのだ。
日本にも、こう言う大会があれば、剣客の様に殺し合う必要もないだろう」

「ほー、凄いんだね。それで書いてあるのは何?読めるの?」

「当たり前だ。私は勘定方の役人をしている父上から、子供の頃より言われておった。
これからは武芸ではなく学問が物を言うとな。
だから蘭学を学んだのだ」

「ほう、学者やね」

 藪千代さん、良三が学者の意味など分かっていないのだろうな、と思いつつも、笑顔で本を書いていました。
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