第28話 母と過ごす夏

文字数 504文字


母との、楽しい休暇が始まった。

一行は、殆どの時間を、ウィーン近郊のベルゼンボイク城で過ごし、バーデンやラクセンブルクへの小旅行にも出かけた。



7月22日。

フランツは、皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を与えられる。これにより彼は、地位と、一定の収入を確保することができた。


フランツの得た「公爵」は、「大公(男系王位継承者に与えられる)」に次ぐ身分である。


[マリー・ルイーゼ]


お父様(皇帝陛下)。ありがとうござます。

これでフランツは、無位無官のただの少年ではなくなりました。

[亡命中のナポレオンの母、レティシア※]



(遠くイタリア、ローマで)


「ライヒシュタット公」だって?

なんだか、うつろな響きだねえ。



ブログ「レティツィア・ボナパルト」

あの子の父親が与えた以上の名前を、誰も与えることなんて、できやしないよ!



※フランツの正式名は、フランス語で、

ナポレオン・フランソワ・シャルル・ジョゼフ・ボナパルト

ナポレオン!

この名は、世界中に永遠に響き渡るだろう。フランスの栄誉の元にね!

[家庭教師のディートリヒシュタイン]


髪の長い君を、母上(マリー・ルイーゼ様)にもお見せしたことだし!

さあ、フランツ君!

髪を切るぞ!

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登場人物紹介

フランツ(フランソワ)


ナポレオンとオーストリア皇女、マリー・ルイーゼの息子。父の没落に伴い、ウィーンのハプスブルク宮廷で育てられる。


無位無官のただの「フランツ君」だったのだが、7歳の時、祖父の皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を授けられる。

ディートリヒシュタイン伯爵


フランツにつけられた、コワモテ家庭教師。家庭教師は他に、フォレスチコリンがいる。

オーストリア皇帝フランツ


フランツの祖父。なお、「フランツ」の名前は、ナポレオンが、この祖父から貰った。

マリー・ルイーゼ


フランツの母。ナポレオンと結婚したご褒美に、ウィーン会議の時、パルマに領土を貰う。

片目の将軍(後パルマ執政官)ナイペルクと、絶賛恋愛中。

ナイペルク


皇帝がマリー・ルイーゼにつけた護衛官。後、パルマ執政官。家庭教師のディートリヒシュタインとは古い友人。

ナポレオン


エルバ島に封じられてから、百日天下を経て、セント・ヘレナ島で亡くなるまでの時代設定です。

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