第19話 パパは罪を犯したの?

文字数 1,390文字

(心の中で)

さて、"page(フランス語で、召使い)" 問題だ!


(フォレスチ先生に)

先生! "page" は、ドイツ語で何と言うの?

ん?


(傍白)

あれだな。自分はフランス帝国の「ローマ王」だった、って、言わせたいんだな。自分には、付き人(page)もちゃんといた、って。


でも、過去ばかり振り返るのは良くないと、この間も、他の先生方と話したばかりだ……。

(若干、きょどりながら)

"Seite(ザイト)" だよ。



(傍白)

私は嘘はついていない。

プリンスはフランス語だと言ったわけではない。

だから私は、英語の"page"の説明をしているのだ。



(フランツに)

"Seite" とは、本の一枚一枚の紙の……、

お祖父さまは、違うことを言っていたよ!
(間)


(ため息)

"Edelknabe(エーデルクナーベ)(付き人、従者)" だ。

(勝利!!)

(やった! 遂に言わせたぞ!)


パリでは、僕に、"page" がいた! それなのに、なんで、ここでは、僕の "Edelknabe" がいないの?

ウィーンでは、そういう習慣がないからだよ。

君のお祖父様(皇帝)にだって、召使いなんてついてないだろ? いつもついてくる「召使い」なんて、仰々しくて、邪魔なだけだ。

んーーー。

(そうかも。確かに、ジャマな時もあった。イタズラする時とか)

(心の中)


もう、「ローマ王」の話はどうでもいいや。お祖父様が話してくれたけど、よくわからなかったし。


それより、もっと大事なことがある。

ねえ、フォレスチ先生。

今のフランスの王様は、誰なの?

ルイ18世だよ。



ブログ「ルイ18世」

それじゃ、彼が死んだら、彼の息子たちが跡を継ぐんだね?
その甥たちが死んじゃったら? そしたら、誰が次のフランスの王様になるの?
(おっと……)

知らないよ、そんなこと。神様だけがご存じだ。

(さあ、ここからが、大切なところだ!)


でもさ。前に、フランスには、「皇帝」がいたよね。

うん、いたね。
それは誰?

(心の中)


何が何でも、フォレスチ先生に、パパの名前を言わせてやる!

皇帝「ナポレオン」って!

プリンス……。


(間)


それは、君の、大切なお父様じゃないか……。



(傍白)

逃げられない……。

なら、この機会に、彼に教えなければならないことを、伝えねば。

フォレスチは、ナポレオンとスペインとの間の戦争を語った。


スペイン戦争は、フランスの一方的な侵略だった。各地でゲリラが相次ぎ、泥沼化した戦いは長引いた。


これが、結果的に、ナポレオンの没落に繋がった。


フォレスチは、スペインの民衆が、フランス軍に対して、いかに勇敢に戦ったかを強調した。

人々が、自分達の国の君主の為に戦うのは、立派なことだと思う!
少しの間が空いた。

そんなひどいことが……。


そういえば、パパは、「島」から「脱走」したって、聞いたことがある。

パパは、閉じ込められていたの? 僕が悪いことをした時に、お仕置きされるみたいに?


パパは、罪を犯したの?


(はっ!)



(傍白)

彼はまだ、たったの5歳だ。この子に、いったい、何と言ってあげたら、いいんだろう……。



(フランツに)

我々に判断できることじゃないよ。

……。
お父さんを、ずっと愛してあげなさい。そして、彼の為に祈るんだ。
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登場人物紹介

フランツ(フランソワ)


ナポレオンとオーストリア皇女、マリー・ルイーゼの息子。父の没落に伴い、ウィーンのハプスブルク宮廷で育てられる。


無位無官のただの「フランツ君」だったのだが、7歳の時、祖父の皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を授けられる。

ディートリヒシュタイン伯爵


フランツにつけられた、コワモテ家庭教師。家庭教師は他に、フォレスチコリンがいる。

オーストリア皇帝フランツ


フランツの祖父。なお、「フランツ」の名前は、ナポレオンが、この祖父から貰った。

マリー・ルイーゼ


フランツの母。ナポレオンと結婚したご褒美に、ウィーン会議の時、パルマに領土を貰う。

片目の将軍(後パルマ執政官)ナイペルクと、絶賛恋愛中。

ナイペルク


皇帝がマリー・ルイーゼにつけた護衛官。後、パルマ執政官。家庭教師のディートリヒシュタインとは古い友人。

ナポレオン


エルバ島に封じられてから、百日天下を経て、セント・ヘレナ島で亡くなるまでの時代設定です。

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