第13話 逃げたらダメだ

文字数 600文字


宮殿のサロンに集まった紳士方が、当代の、勇敢な軍人についての、品定めをしていた。


まずは、カール大公だろ?



※皇帝の弟

 ブログ「カール大公」

シュヴァルツェンベルク将軍を、忘れちゃいけない!



ブログ「シュヴァルツェンベルク大使」

[ソンマリバ将軍:イタリア人の将校]


ロシアの将校だが、クトゥーゾフ将軍も、素晴らしかった。惜しいことに、亡くなられてしまったが。



ブログ「ミハイル・クトゥーゾフ」

あなたも、勇敢な将校のお一人なんですよ、ソンマリバ将軍! まさに、3本の指に入るほどの!
(足元から)


僕も勇敢な将軍を知ってるぞ!

げげげ、ナポレオンの息子じゃないか。

いつの間に……。

で、それは誰だい?
僕のお父さんだ!


(言い終わるなり、だっと駆けだす)

待ちたまえ!


(追いかけてくる)


待ちたまえったら、君!

…………。


(振り返る。真っ赤な顔をしている)

(礼儀正しく、敬意をこめて)

君は正しいよ、ムッシュ。

君が父親について言ったことは、全く、正しい!

えっ!?



(この国の人は、みんな、パパのことを嫌いなんじゃないのか?)


(家庭教師の先生たちでさえ、パパのことは、一言も話さない……)

だがね。

逃げたらダメだ。そういう大事なことを言ったら、決して、逃げたらダメなんだ。

だいじな、こと……。

うん。

君はもう、フランスからのお客さんじゃない。

我らがオーストリアの一員なんだ。

頑張りたまえ。

な?

踏ん張って生きていくんだ!!

…………。
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登場人物紹介

フランツ(フランソワ)


ナポレオンとオーストリア皇女、マリー・ルイーゼの息子。父の没落に伴い、ウィーンのハプスブルク宮廷で育てられる。


無位無官のただの「フランツ君」だったのだが、7歳の時、祖父の皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を授けられる。

ディートリヒシュタイン伯爵


フランツにつけられた、コワモテ家庭教師。家庭教師は他に、フォレスチコリンがいる。

オーストリア皇帝フランツ


フランツの祖父。なお、「フランツ」の名前は、ナポレオンが、この祖父から貰った。

マリー・ルイーゼ


フランツの母。ナポレオンと結婚したご褒美に、ウィーン会議の時、パルマに領土を貰う。

片目の将軍(後パルマ執政官)ナイペルクと、絶賛恋愛中。

ナイペルク


皇帝がマリー・ルイーゼにつけた護衛官。後、パルマ執政官。家庭教師のディートリヒシュタインとは古い友人。

ナポレオン


エルバ島に封じられてから、百日天下を経て、セント・ヘレナ島で亡くなるまでの時代設定です。

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