第1話 ウィーン会議の頃

文字数 586文字

1813年、帝王ナポレオンは、ライプチヒの戦いに敗れた。


 敵方の連合軍が、首都に侵攻してきた。皇妃マリー・ルイーゼは、幼い息子、ローマ王(フランツ)を連れて、パリを逃れた。


 マリー・ルイーゼは、オーストリアの皇女だ。オーストリアの敗戦により、勝者ナポレオンに「売られた」のだ。


 今、怪物ナポレオンの手を逃れた娘と孫を、オーストリア皇帝は、ウィーンのハプスブルク宮廷に引き取った。

[イギリスから観光に来ていた貴婦人]


ウィーン会議が始まったわ!

でも、なかなか進まないようね。

おもてなしに、毎日、どこかで舞踏会や晩餐会が開かれている。

いろんな国の王や大使が集まって、この街は、なんて賑やかなんでしょう!

今日は日曜日。シェーンブルン宮殿庭園の、一般開放の日。

さて、私のお目当ては……。


[陽気なウィーンっ子]


あ! チビナポだ!

[フランツ]


(軍人のポーズを取り、おもちゃの銃で、撃つ真似をする)

うっ!

やられた~~~!!

(ばたり)

.o○゚

あ、あの子ね!

か、可愛い子じゃないの!

 

悪鬼の子なのに?

ナポレオンの息子なのに!!


……かわいいわ。

 

(思わず、ほっぺにキスをしようとする)

[フランス人の付き人]


マダム。(止める)

キスは、プリンスの手になさるものです。

ん。

(おもむろに、手を差し出す)

まあ、生意気に……。

でも、なんて、愛らしいんでしょう!


(腰を屈め、フランツの手にキスをする)

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登場人物紹介

フランツ(フランソワ)


ナポレオンとオーストリア皇女、マリー・ルイーゼの息子。父の没落に伴い、ウィーンのハプスブルク宮廷で育てられる。


無位無官のただの「フランツ君」だったのだが、7歳の時、祖父の皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を授けられる。

ディートリヒシュタイン伯爵


フランツにつけられた、コワモテ家庭教師。家庭教師は他に、フォレスチコリンがいる。

オーストリア皇帝フランツ


フランツの祖父。なお、「フランツ」の名前は、ナポレオンが、この祖父から貰った。

マリー・ルイーゼ


フランツの母。ナポレオンと結婚したご褒美に、ウィーン会議の時、パルマに領土を貰う。

片目の将軍(後パルマ執政官)ナイペルクと、絶賛恋愛中。

ナイペルク


皇帝がマリー・ルイーゼにつけた護衛官。後、パルマ執政官。家庭教師のディートリヒシュタインとは古い友人。

ナポレオン


エルバ島に封じられてから、百日天下を経て、セント・ヘレナ島で亡くなるまでの時代設定です。

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