第2話 年齢の近い叔父さん

文字数 713文字

[フランツの叔父、フランツ・カール大公]


ああ、また、フランス語の授業で、赤点取っちゃったよ。ハプスブルクの授業は、厳しすぎるんじゃないかい?

ああ、いい天気だ! 脱走してきて正解だった。こんな日に勉強させようなんて、教師どもの神経を疑うね。


(歩いていく)

あれ? あいつは……。

フランスの服を着て、フランスの靴を履いている!

だが、玩具は僕のだ! ドイツ製だ!

やれやれ、姉上の息子だ。フランスから来た、超クソ生意気なガキンチョだよ……。

おもちゃのスコップで、夢中で穴を掘っている)


はっ!

(フランツ・カールに気がつく)

……。
……。
…………。
………………。

そんなに見たって、無駄だぞ。

僕は、フランス人の子どもとは、遊ばない!

[フランツの母、マリー・ルイーゼ]


なっ、何事!?

(フランス語)

ママッ! この クソガキ を、どっかに連れてってよ!

クソガ……、って、フランツ・カール(私の弟)じゃない!

あなた、この子に何をしたの?

(フランス語)

いやなやつ、いやなやつ、

ぎゃーっ!

ぎゃーーっ!

ぎゃーーーっ!

(フランス語だったので、フランツが何と言ったのか、わからない)


何もしてねーよ! つか、早くそのガキ、黙らせてよ!


無理よ、こうなっちゃったら!

ギャーッ!

ギャーッ!

ギャーッ!

ムリって、自分の子だろ!?

だいたい、姉さんは、子どもに甘すぎるんだよ。お菓子だって、自分のテーブルから、いくらでもあげてるじゃないか!


ああ、うるさい、うるさい!

耳が痛ぇーよぉーーー!

(耳をふさぐ)

(同じく耳をふさぎながら)

私なんか、もう、吐きそう!

でも、ダメなの。こうなったらもう、私じゃ手に負えない……。

ギャオーーン!

ギャオーーン!

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登場人物紹介

フランツ(フランソワ)


ナポレオンとオーストリア皇女、マリー・ルイーゼの息子。父の没落に伴い、ウィーンのハプスブルク宮廷で育てられる。


無位無官のただの「フランツ君」だったのだが、7歳の時、祖父の皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を授けられる。

ディートリヒシュタイン伯爵


フランツにつけられた、コワモテ家庭教師。家庭教師は他に、フォレスチコリンがいる。

オーストリア皇帝フランツ


フランツの祖父。なお、「フランツ」の名前は、ナポレオンが、この祖父から貰った。

マリー・ルイーゼ


フランツの母。ナポレオンと結婚したご褒美に、ウィーン会議の時、パルマに領土を貰う。

片目の将軍(後パルマ執政官)ナイペルクと、絶賛恋愛中。

ナイペルク


皇帝がマリー・ルイーゼにつけた護衛官。後、パルマ執政官。家庭教師のディートリヒシュタインとは古い友人。

ナポレオン


エルバ島に封じられてから、百日天下を経て、セント・ヘレナ島で亡くなるまでの時代設定です。

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