第25話 はしか
文字数 1,031文字
[パルマにいる母、マリー・ルイーゼ]
(手紙)
ディートリヒシュタイン先生へ
フランツの様子を見に来るよう、お手紙を頂きましたが、ちょっと、行けそうにありません。なぜなら、パルマの君主として私は、この国の民に対して責任があり……、……。
元気だったフランツが、熱を出した。
ひどい熱が3日も続き、発疹が出た。
数週間後。
ディートリヒシュタインが部屋に入るなり、フランツは尋ねた。
(小さな声)
きっとお母さまは、パルマで、貧しい人々を助けるのに、お忙しいんだね。
ディートリヒシュタインは、たまらない気持ちになった。
(涙ボロボロ)
普段の謹厳な態度を、ディートリヒシュタインはかなぐり捨てた。
彼は、プリンスのもとに駆け寄り、その小さな体を抱き締めた。
プリンスは、声を上げて泣き出した。
気がつくと、なんと、ディートリヒシュタインの目からも、涙が溢れていた。