第30話 マリア様の教会

文字数 423文字


7月から9月の間、10週間ほど滞在し、マリー・ルイーゼらは、パルマへ帰っていった。


えーんえーんえーん
ああ、これこれ、泣くでない。
ぐす、ぐすぐす、わーーーん

わかっておる。母上との別れは、辛いものだ。パルマは遠いものな。

だが、そんなに泣くものではない。

えーーーーーーん!えんえんえん、えーーーーーーん!

わかった。わかったから……。

そんなに泣いたら、息が詰まってしまうぞ。


ほら。これをお飲み。トニック水だ。



※キニーネ入りの炭酸水。

えーんえーん、ごふっ!


マリー・ルイーゼが滞在していた部屋の前を通りかかる。


(涙がいっぱいの目で、母のいた部屋の窓を見つめる)


うえーーーーーーーん!

大変だ!

このまま泣き続けたら、プリンスは窒息してしまうに違いない!



心配になったディートリヒシュタインは、泣き続けるフランツを連れて、マリア様の教会にお参りにいった。



マリー・ルイーゼは、フランツが12歳になるまでの7年間に、わずか3回しか、息子の元を訪れていない。


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登場人物紹介

フランツ(フランソワ)


ナポレオンとオーストリア皇女、マリー・ルイーゼの息子。父の没落に伴い、ウィーンのハプスブルク宮廷で育てられる。


無位無官のただの「フランツ君」だったのだが、7歳の時、祖父の皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を授けられる。

ディートリヒシュタイン伯爵


フランツにつけられた、コワモテ家庭教師。家庭教師は他に、フォレスチコリンがいる。

オーストリア皇帝フランツ


フランツの祖父。なお、「フランツ」の名前は、ナポレオンが、この祖父から貰った。

マリー・ルイーゼ


フランツの母。ナポレオンと結婚したご褒美に、ウィーン会議の時、パルマに領土を貰う。

片目の将軍(後パルマ執政官)ナイペルクと、絶賛恋愛中。

ナイペルク


皇帝がマリー・ルイーゼにつけた護衛官。後、パルマ執政官。家庭教師のディートリヒシュタインとは古い友人。

ナポレオン


エルバ島に封じられてから、百日天下を経て、セント・ヘレナ島で亡くなるまでの時代設定です。

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