スキマ

文字数 336文字


 隙間があるのが気になってしかたがない。なんとかして埋められないだろうか。完全にわたしのまわりを壁で囲いたいのに、何度修繕してもどこかに隙間ができてしまう。まるでわたしがわざとそれを作っているかのように。ほら、もう入りこんできたものがある。ぺたり、ぺたり、ぺたり。顔や首筋に次々張りつき、わたしの内にある温かなものを無遠慮に吸う。取ろうとしても、その自在に形を変える軟らかい体をなかなか剥がせず、無理に剥ぎとって捨てると傷が残り長く痛む。すでにわたしの至るところにその傷があり、苦しまない日はないのだ。もうたくさんだと忌避すべく壁を作るのだが、知らぬうちに隙間ができる。わたしはそこから侵し入ってくるものを拒めない……。侵入者の正体は恋。恋心がわたしの命を吸って肥りゆく。


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