ズイドウ
文字数 376文字
丸い隧道を歩いている。風が後ろからひょうひょうと吹いてくる。背の低いわたしがかろうじてかがまずに歩けるくらいの高さで、壁には規則的な間隔で小さな穴が開いている。何者が何の目的でこのように作ったのか、謎ばかりの建築物だ。穴の向こうに、たぶん悪魔どもがからかっているのだろう、影が穴をふさぐように現れては消える。いつ悪魔が内部に侵入し襲いかかってくるかわからない。不安を感じながら、わたしは出口を求めて進む。どこまでも続くかと思われた隧道だが、行く手にようやく丸い光が見えた。わたしは安堵した……。だが、ああ、到着してみるとそこは虚空に突き出ており、それ以上の行き場はなかった。呆然として体の力が抜けた時、背後からひときわ強い風がやってきてわたしを空中に押し出した。あッと思うひまもなくわたしの姿はほどけてしまい、ひとつの音色となり笛の先で軽々と舞った。
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