フグ

文字数 295文字


 あの(ふぐ)の腹のなんと立派に膨れていることか。服罪の期間を終えてもうすぐあの中から出てくる者がいるのだ。それが一人の君子であればよいが、自分はなにも悪くないのにと拗ねた無数の蟲が放たれるのかもしれない。不安を感じた世間が騒ぐ。神々もどちらを鰒の腹に封じたか覚えていないらしい。星の姿を装い天空一面からただ一匹の鰒の泳ぐ様を注視している。わたしは海に釣糸を垂れ、鰒の白い腹が開くのを待つ。あの中にいる者は君子でも拗ねた蟲でもない。わたしは知っているのだ。かつてわたしに生の労苦をすべて押しつけ、自分は生まれるのを避けた、わたしの双子、わたしの片割れがその服罪を終え、いよいよいのちを得るのだと。


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