コエ
文字数 213文字
古い鏡のように凪いだ海の、その水平線の彼方から、何ものかが鳴く声が聞こえてくる。この世は神々が愛しあい去った名残にすぎないと占い師が言っていたが、あのように悲しい声を出すものは、置いていかれた神のなれの果ではなかろうか。あのものこそが、人の世に悲しみを撒き、そのなかから湧いてくる情愛を生み出しているのではなかろうか。わたしは恋に破れた後の泣き笑いの顔のまま、恨みと感謝の感情を膨らませ、水平線に向けて力いっぱい吠えかえす。
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