ユビ

文字数 198文字


 小指で約束をするなど少し恥ずかしい。彼が言いだしたことなのに、その指はガラス片のように冷たかった。わたしは手際よく制服を着て恋人の住まいを去った。別にいいのだ、彼が指先でほかのひとのやわらかさやかたさをたのしもうとも。恋の世界では太陽や月がいくつ頭のうえを無邪気にめぐろうとかまわない。わたしも次の約束にむかって急ぐ。かたい、割れた冬の街を踏みながら。あたたかい小指を手袋のなかでつくりながら。


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