ライメイ

文字数 444文字


 雷がなかなか止まないと思ったら怒号だった。どうやらわたしが怒られているらしい。とても遠くからわたしをめがけ、鋭い声が次々にやってくる。何を言っているのかわからないけれども、相手がわたしにとてつもなく腹を立てていることは十分わかる。他人にそのように大きな怒りを生じさせた覚えはない。しかし怒号が続くうちになんだか心がしおれてきた。窓を閉めきってもまだ聞こえる。もういいかげんにしてと身を縮め、無駄と知りながら耳をふさぐ。家が揺れるほど大きくなってきた怒号。だがそれがふいに止んだ。しばらく待ってももう声は聞こえてこない。おそるおそる窓を開けてみると、低い山なみの上にまん丸な月が上っていた。実に神々しい光。それは高貴な婦人の歌声のようだった。相手もきっとこの月を見て、自らの乱暴な声を恥じたのだろう。わたしは月に向かい頭を垂れて感謝し、安らかな眠りにつく。夢のなかでわたしはそろって怒りっぽかった祖母と母を思い出し、恐れつつもその手をさすってあげた。いまはふたりとも遠い故郷で眠っている。


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