第11話:桜の花見、猛暑、四川大地震

文字数 1,779文字

 各電力会社も危機管理体制の整備や周辺地盤の再調査などに追われた。8月16日、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で気温が40.9度まで上昇。国内観測史上最高気温が74年ぶりに更新。8月は全国的に猛暑が続き、日本全国で、熱中症により救急車で、病院に運ばれる人や死亡者が続出した。

 とにかく熱い夏であった。9月には、米国で低所得者向け高金利型「サブプライム」住宅ローンの焦げ付きが多発。これをきっかけに世界の金融市場が大きく動揺。リスクに対する警戒感が急速に高まり8月以降、信用の収縮、株価急落、ドル安などが一気に加速した。

 ローン債権を証券化した金融商品に投資したヘッジファンドや金融機関は相場の急落で巨額の損失を計上。その後、資金繰り難に直面、一部は破たん。米国や欧州の中央銀行は市場に巨額の資金を供給。米国は利下げ、英国は住宅ローン会社への緊急融資に踏み込み事態の沈静化を図った。

 これまでのところ、実体経済に大きな影響はないもののサブプライム問題を発端とした市場混乱を理由に2008年の景気見通しは米国、欧州、日本いずれも下方修正された。この年は、夏の暑さで、家の中で冷房をかけて、じっとして夏を過ごした。やがて10月に声を聞くころには、涼しくなった。

 この頃、世界的に環境問題が注目され地球温暖化問題に対する国際的な関心が高まった。アメリカのゴア前副大統領の講演活動を記録した映画「不都合な真実」が、全世界で大ヒットした。

国連の「気候変動に関する政府間パネル『IPCC』」は、温暖化の主因が、人為的な温室効果ガスの増加だと、ほぼ断定。そして、環境への影響を予測する報告書をまとめ、ゴア氏とともにノーベル平和賞を受賞した。

 温暖化対策は、6月のドイツ・ハイリゲンダム主要国首脳会議「サミット」でも最重要議題となり、各国が緊急に協調行動を取ることで一致した。そして、国連が中心になり気候変動枠組み、国際協定づくりに向けた行程表が協議された。

 やがて、2008年を迎えた。中国製冷凍ギョーザを食べた千葉、兵庫両県の3家族10人が中毒症状を訴え、うち女児が一時意識不明になったことが1月末に発覚。日本で農薬使用が禁じられている有機リン系殺虫剤メタミドホスが検出された。

 製造元は中国河北省の食品会社「天洋食品」。高濃度だったことから人為的混入の疑いが強まり日中の警察当局が捜査を開始した。日本側は、メタミドホスが袋の内側から検出された上、成分に不純物が含まれていた。

 日本で使われている高純度の試薬とは異なるとして国内の混入を否定。中国側は国内での混入可能性は極めて低いと主張。しかし、中国で製造元関係者が事件後の回収品を食べ中毒症状を起こしたことが8月に判明。中国の公安当局は同社工場での混入を視野に捜査を進めた。

 2008年2月、如月勝男は、柏の千葉県立東葛飾高校を受験して合格。4月からバスで自宅から通い始めた。その後、サッカー部に入部した。日本では、1300万人が加入する75歳以上が対象の「後期高齢者医療制度」が、4月に開始された。

 日本で、高齢化で増え続ける医療費を高齢者と現役世代の分担割合を明確にするのが導入の狙いだった。しかし、当初から「年齢で区分する差別的な制度」との批判が飛び出した。それまで加入していた国民健康保険に比べて保険料が急激に上がった人も多かった。

 さらに、厚生労働省の説明不足が問題となった。年金から保険料を天引きする仕組みも反発を招き、政府・与党は口座振替もできる事にした。しかし野党4党は同制度の廃止法案を国会に提出。5月12日には、中国四川省を震源とするマグニチュード8の大地震が発生。

 死者・行方不明者が8万人超の大惨事となった。その後、北京五輪を控えた胡錦濤指導部に大きな衝撃を与えた。最も大きな被害を受けたのは、当時授業中だった子供らで校舎倒壊で6500人以上が死亡。背景には校舎建設費を安く抑えるための手抜き工事という根深い問題が潜んでいた。

 温家宝首相が迅速に被災地で陣頭指揮を執ったほか、震災直後には内外メディアの自由な取材を認めるなど異例の政府の対応に注目が集まった。さらに日本の国際緊急援助隊が他国に先駆けて駆け付け中国の対日感情好転につながった。政府は復興に全力を挙げているが、被災地が負った傷跡は大きい。
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