第11話
文字数 1,743文字
11
ところで僕はスピードガンにはあまり興味がなかった。スピードガンで投げた球の初速を測ったところで、その数字には大した意味はないと、とある大投手が言っていたし。スピードガンなんて捨ててしまえとも。
僕も思い切りそう思う。だから僕が目指したのは、スピードガンの数字じゃない。
実は僕は、地元でキャンプをやっているプロ野球チームの紅白戦とか練習試合とかを、野球の勉強のためにできるだけ観に行っていた。
「放牧」されていたが故、僕には「不思議な自由」があり、だから「研究のためプロの試合観てきま~す♬」とか監督に言ったら、「おうおう、そうか」としか言わなかったんだ。監督は僕のこと信用しきっていたし。練習サボってゲームセンターなんて、天と地がひっくル返ったって、行くはずはないと思っていたみたい。
それで、試合は出来るならネット裏のスコアラーのすぐ後ろとかの席に座った。何たって入場無料だし、スタンドはがらがらだし。だけどそうかと思えば、周囲には野球界の「レジェンド」と言うべき人が結構座っていて驚いたり。それはもう、巨人の星に出てきたような人だっていたりするんだぞ!それはまあいいけど。
それで、見ていると、スコアラーが球種とスピードガンでの球速を言い、もう一人が記録する。
そして試合では、150キロのまっすぐがかっぱ~~んと打たれたり、そうかと思えば135キロのまっすぐに差し込まれることも。
それで思うのだけど、それじゃスピードガンって何なんだろう? もちろんスコアラーの人は「業務」としてそういう記録をしているのだろうし、それは参考データとして意味はあるのだろうけれど。
だけど結局! スピードガンの数字ではなく、打者の目でどう見えるかこそが大切なんだと僕は思う。
例えば僕が打者だったら、投球フォームからイメージ作って、そしてタイミングをとる。だからイメージするよりも少しでも早くボールが来れば、そして球が伸びれば、それは「速い球」と言えるんだ。
だから僕はいつもいつもそんなことを考え、そういう球を投げようと練習してきた。
打者から見て、見かけより速くて手元で伸びる球。
ゆったりと投げ始め、ぴゅっと腕を振り、ぴっと指を…
実はプロの本物の「伸びる球」を実際に見たことがある。
例によって野球の勉強のため、監督に「行ってきま~す♪」といってからプロ野球の春のキャンプを見に行き、そこで見たのはとある、すらりと手足の長い有名な大投手だったのだけど、室内練習場のサードの位置でノックを受け、それをファーストに投げるというサードスローの練習をしているときだった。
そのとき僕は単なる一ファンとして室内練習場に入れてもらえ、幸運にもファーストの後ろ2mくらいの場所にあるネットの裏から、それを見せてもらう機会があったんだ。僕は興味津々でネットにへばりついてそれを見ていた。「危ないよ」とか注意されながら…
それで、その投手がサードで捕球してステップしてからぴゅっと、結構しっかり腕を振って投げたんだ。その投手、試合でMAXは140くらい。だからそんな投げ方ならせいぜい130くらいだろう。
それからボールはマウンドのすぐ上を通過したのだけど、そのままじゃ絶対にワンバウンドだと僕は思った。一塁手もミットを下に向けて、ショートバウンドで捕るような体制だったんだ。
だけどそれからボールは加速を始め、何と飛行機みたいに上昇も始め、一塁手は思い切りジャンプしてやっとこさ捕球した。
現実にはありえない現象だろうけれど、僕にも、プロの一塁手の人にも、そういうふうに「見えた」んだ。
僕らがそう見えるのなら、打者にだってそう見えるだろう?
野手の人が投げた球では、そんなことありえないのだろうけれど、これが本物のプロの投手の伸びる球なんだと、僕は驚愕したことを覚えている。そしてそれが大投手たる所以なんだろうね。
出来るか出来ないか分からないけれど、僕もあんな球を投げたいなと思った。それに少しでも近づくためにも、練習を頑張ろうと思ったんだ。
つまりあんな球が僕の目標だね。だからスピードガンの初速なんかどうでもいいことなんだ。
だけど考えてみると、あれが130キロなら、僕にも投げられるのかな?
ところで僕はスピードガンにはあまり興味がなかった。スピードガンで投げた球の初速を測ったところで、その数字には大した意味はないと、とある大投手が言っていたし。スピードガンなんて捨ててしまえとも。
僕も思い切りそう思う。だから僕が目指したのは、スピードガンの数字じゃない。
実は僕は、地元でキャンプをやっているプロ野球チームの紅白戦とか練習試合とかを、野球の勉強のためにできるだけ観に行っていた。
「放牧」されていたが故、僕には「不思議な自由」があり、だから「研究のためプロの試合観てきま~す♬」とか監督に言ったら、「おうおう、そうか」としか言わなかったんだ。監督は僕のこと信用しきっていたし。練習サボってゲームセンターなんて、天と地がひっくル返ったって、行くはずはないと思っていたみたい。
それで、試合は出来るならネット裏のスコアラーのすぐ後ろとかの席に座った。何たって入場無料だし、スタンドはがらがらだし。だけどそうかと思えば、周囲には野球界の「レジェンド」と言うべき人が結構座っていて驚いたり。それはもう、巨人の星に出てきたような人だっていたりするんだぞ!それはまあいいけど。
それで、見ていると、スコアラーが球種とスピードガンでの球速を言い、もう一人が記録する。
そして試合では、150キロのまっすぐがかっぱ~~んと打たれたり、そうかと思えば135キロのまっすぐに差し込まれることも。
それで思うのだけど、それじゃスピードガンって何なんだろう? もちろんスコアラーの人は「業務」としてそういう記録をしているのだろうし、それは参考データとして意味はあるのだろうけれど。
だけど結局! スピードガンの数字ではなく、打者の目でどう見えるかこそが大切なんだと僕は思う。
例えば僕が打者だったら、投球フォームからイメージ作って、そしてタイミングをとる。だからイメージするよりも少しでも早くボールが来れば、そして球が伸びれば、それは「速い球」と言えるんだ。
だから僕はいつもいつもそんなことを考え、そういう球を投げようと練習してきた。
打者から見て、見かけより速くて手元で伸びる球。
ゆったりと投げ始め、ぴゅっと腕を振り、ぴっと指を…
実はプロの本物の「伸びる球」を実際に見たことがある。
例によって野球の勉強のため、監督に「行ってきま~す♪」といってからプロ野球の春のキャンプを見に行き、そこで見たのはとある、すらりと手足の長い有名な大投手だったのだけど、室内練習場のサードの位置でノックを受け、それをファーストに投げるというサードスローの練習をしているときだった。
そのとき僕は単なる一ファンとして室内練習場に入れてもらえ、幸運にもファーストの後ろ2mくらいの場所にあるネットの裏から、それを見せてもらう機会があったんだ。僕は興味津々でネットにへばりついてそれを見ていた。「危ないよ」とか注意されながら…
それで、その投手がサードで捕球してステップしてからぴゅっと、結構しっかり腕を振って投げたんだ。その投手、試合でMAXは140くらい。だからそんな投げ方ならせいぜい130くらいだろう。
それからボールはマウンドのすぐ上を通過したのだけど、そのままじゃ絶対にワンバウンドだと僕は思った。一塁手もミットを下に向けて、ショートバウンドで捕るような体制だったんだ。
だけどそれからボールは加速を始め、何と飛行機みたいに上昇も始め、一塁手は思い切りジャンプしてやっとこさ捕球した。
現実にはありえない現象だろうけれど、僕にも、プロの一塁手の人にも、そういうふうに「見えた」んだ。
僕らがそう見えるのなら、打者にだってそう見えるだろう?
野手の人が投げた球では、そんなことありえないのだろうけれど、これが本物のプロの投手の伸びる球なんだと、僕は驚愕したことを覚えている。そしてそれが大投手たる所以なんだろうね。
出来るか出来ないか分からないけれど、僕もあんな球を投げたいなと思った。それに少しでも近づくためにも、練習を頑張ろうと思ったんだ。
つまりあんな球が僕の目標だね。だからスピードガンの初速なんかどうでもいいことなんだ。
だけど考えてみると、あれが130キロなら、僕にも投げられるのかな?