第43話 いつでも選挙に出られる

文字数 1,025文字


 小坂部和樹と和田彰良が再びラバーズ事務所を訪れている。前回の訪問の際は吉岡雅樹と笑原拓海の出演料横流しを疑い、その金が民政党パーティー券購入を通じて、二人のアイドルの宣伝に使われたものだと嫌疑を掛けていた。しかし、その確たる証拠までは掴んでおらず、ラバーズを追い込むにまでは至らなかった。だが、今回は違う。小坂部と和田には証拠があった。
 前回同様、ラバーズ事務所側は副社長の海堂メイコと顧問弁護士の仲道節雄が立ち会った。小坂部はメイコと仲道に軽く会釈した後、単刀直入に言った。
「吉岡氏、笑原氏、両名とタレント契約を解除したそうですね。理由は何ですか?」
 メイコが無表情で呟く。
「お答えできません」
 小坂部は言った。
「では代わりに申し上げましょうか?」
 仲道が鋭い眼光で睨みつけてくる。
「両名はいまフリーになっています。これならいつでも選挙に出られるからです。違いますか?」
「所属タレントでない者のことについてはコメントいたしかねます」
 メイコははぐらかす。小坂部は構わず言った。
「しかしラッキーでしたよね。タネをまいたのは民政党だが、政治資金規正法に先に引っかかったのが野党議員とは。そこが野党は脇が甘い。会計担当者任せにできず議員が直接キックバックを受け取っていたなんて。これでは特捜部も起訴せざるを得ない。ああ、いや誤解せんでくださいよ、民政党の緒沢議員も具に調べあげたのですが金銭授受の関わりがどうしても立証できない。結局民政党の思う壺だ。辞職した二人の野党議員の選挙区では繰り上げ当選者もおらず、来月補欠選挙が行われるようですよ。二人といえば・・・ちょうど合いますね」
 弁護士の仲道が問う。
「何がおっしゃりたいのでしょう?」
「これは二人のための枠ですよね?」
 呆れた表情を作る仲道。
「以前も申し上げたが、検事さんのお話は当て推量ばかりで根拠がない。事務所に所属していない者がなにをどうしようと関係ない」
 小坂部は補聴器を入れ直し険しい顔で言った。
「では、何故吉岡氏と笑原氏は民政党の推薦を受けるのですか? ラバーズ事務所からどこぞに裏金が回っていたからではありませんか?」
「証拠は?」
 仲道はあくまでも強気だった。しかし、小坂部もそれ以上に強気だった。
「先日、吉岡氏から淫らな行為を受けたと主張する元女子アナウンサーから訴えがありましてね、ラバーズ事務所から黙っていて欲しいと。出馬することも。代わりに相当な額のお金が提示されたとか・・・」

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