第５話　縁起のよいグループ名

　『笑門来福(しょうもんらいふく)⤴吉日(ヨッシャー)』はリーダーの吉岡正志(よしおかまさし)をはじめ、笑原拓海(えみはらたくみ)、門川慎之介(かどかわしんのすけ)、來嶋詩郎(きじましろう)、福田剛士(ふくだたけし)、日下部悠斗(くさかべゆうと)の６人で構成されるアイドルグループで、笑原→門川→來嶋→福田→吉岡→日下部から一字取って名付けられた縁起のよいグループ名である。彼らは男性アイドルばかりを抱えるラバーズ事務所に所属している。
　所属タレントの多くは小学校のそれこそ低学年時代からオーディションを受けており、親同伴で熾烈な戦いを勝ち抜いてきた美少年たちだった。なかにはオーディションなどすっ飛ばし事務所からダイレクトスカウトされるエリートもいて、そういった少年は決まってすでに売れているグループのバックダンサーに抜擢され、そのすぐのちに選りすぐりのエリートたちだけでまた別のグループを結成していた。
　『笑門来福⤴吉日』の６人も日下部悠斗を除いて、あとの５人はスカウト組で、オーディションを知らない。事務所の社長、海堂丈太郎(かいどうじょうたろう)が直々に次の時代に活躍しそうな少年たちをつまみ上げ、有無を言わせずグループを結成させた。当時この事務所で最も売れていた『エクストラパラダイス』のバックを務めさせ、すぐさま『笑門来福⤴吉日』として独立デビューさせた。
　しかし、『笑門来福⤴吉日』は売れなかった。容姿もタレント性もそれまでのアイドルと比べ決して劣ってはいなかった。奇抜な名前が悪かったかといえばそうでもない。