第82話 問題はあんたとこなんだ

文字数 616文字

「曽我さん、電話です。KF企画の桜塚さんって方から」
「おう回してくれ」
 アジアンニュースJPエンタメ部に電話をかけてきた相手、桜塚と名乗る男。
「どうだった?」
 曽我が前置きなく訊ねるのはこの人物をよく知るからである。訊ねているのは吉岡と笑原の事務所の回答である。
「承諾もらいました」
「おお、そうか! どちらもか?」
 曽我の方が年齢が上であるためか、それとも二人の関係性のせいか、曽我はぞんざいな口調だった。
「ええ、どちらからもです」
「さすがだな」
「SSのお陰です」
 桜塚はNHCの会長の名前を符牒で使う。それはつまり笑原拓海や鯉川真虎登と通じているということである。
「そりゃ断れんだろう、やつらにとっちゃ大恩人だ」
 曽我の口端が緩む。かと思えばすぐにまた表情が厳しくなる。
「だが、問題はあんたとこなんだ。今度はちゃんとやってくれよな。こないだのようなことあっちゃなんねえぜ!」
 曽我は核心に迫った。桜塚はそこで初めて二人の共同作戦に触れた。大本の計画を作ったのは曽我である。
「お任せください。示し合わせたとおりやっていますから。選対の候補予定者にも既に名前が挙がっています」
「なら結構だが」
 曽我が納得したように頷く。電話の向こうでKF企画の桜塚、いやもとい民政党の鶴岡も頷く。
「御大(おんたい)が動いてくれたんだよな」
「彼はもう党とはなんの関係もありません」
「鶴ちゃんよ、俺に嘘つくなよ。わかってんだぜ、御大が動いてくれてたのは」

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