第73話 いまならファンを楽しませる冥利、わかるだろ?
文字数 691文字
その時、飯倉のスマホが鳴った。
着信を見て、飯倉はニヤリ微笑み、画面の応答をタッチした。
「よお、慎之介」
相手は先日飯倉が会っていた門川慎之介だった。
「飯倉さん、あれから3人でもよく話し合ったんだ」
「うん」
「で、俺たち飯倉さんの元で、もいちどやろうって」
「そっか! 決断してくれたか!」
飯倉が支倉にオッケーサインを出す。
「剛士も了解してくれたんだな?」
「俺より乗り気だった」
飯倉は福田剛士とも個別に会っていた。用件は皆同じ、『笑門来福⤴吉日』の再結成だった。が、門川慎之介も福田剛士も後日返事しますと態度を保留していた。
「飯倉社長なら、やりたいことやらせてもらえるだろうってね」
「えらくおしとやかになったな」
かつてラバーズ事務所社長に盾突いていた頃の慎之介の姿が飯倉には思い出されていた。
「ただ・・・」
慎之介の声が幾分沈む。
「あの二人が承知するかなって」
飯倉がその名を取り上げる。
「正志と拓海か?」
「ええ」
「大丈夫。俺と支倉君で説き伏せて見せるから」
「何十年経っても彼らとの溝は、埋まってないですよ」
「言っただろ。そこに視点を合わせちゃ進歩がないって」
「ファン目線、ですか?」
「ああそうだ。君らのことを根強いファンが全世代で待っている。ファンが何を望むか、そちら側から見るんだ。そうすれば溝なんて見えてこない」
「俺はそうしてきたつもりですけどね」
「経験が足りなかったんだ、あの頃は。皆自分中心で。いまならファンを楽しませる冥利、わかるだろ?」
「だからお受けしたんです」
飯倉は大きく頷き言った。
「それがわかっていれば大丈夫だ。君たちはもう昔の『笑門来福⤴吉日』じゃない」
着信を見て、飯倉はニヤリ微笑み、画面の応答をタッチした。
「よお、慎之介」
相手は先日飯倉が会っていた門川慎之介だった。
「飯倉さん、あれから3人でもよく話し合ったんだ」
「うん」
「で、俺たち飯倉さんの元で、もいちどやろうって」
「そっか! 決断してくれたか!」
飯倉が支倉にオッケーサインを出す。
「剛士も了解してくれたんだな?」
「俺より乗り気だった」
飯倉は福田剛士とも個別に会っていた。用件は皆同じ、『笑門来福⤴吉日』の再結成だった。が、門川慎之介も福田剛士も後日返事しますと態度を保留していた。
「飯倉社長なら、やりたいことやらせてもらえるだろうってね」
「えらくおしとやかになったな」
かつてラバーズ事務所社長に盾突いていた頃の慎之介の姿が飯倉には思い出されていた。
「ただ・・・」
慎之介の声が幾分沈む。
「あの二人が承知するかなって」
飯倉がその名を取り上げる。
「正志と拓海か?」
「ええ」
「大丈夫。俺と支倉君で説き伏せて見せるから」
「何十年経っても彼らとの溝は、埋まってないですよ」
「言っただろ。そこに視点を合わせちゃ進歩がないって」
「ファン目線、ですか?」
「ああそうだ。君らのことを根強いファンが全世代で待っている。ファンが何を望むか、そちら側から見るんだ。そうすれば溝なんて見えてこない」
「俺はそうしてきたつもりですけどね」
「経験が足りなかったんだ、あの頃は。皆自分中心で。いまならファンを楽しませる冥利、わかるだろ?」
「だからお受けしたんです」
飯倉は大きく頷き言った。
「それがわかっていれば大丈夫だ。君たちはもう昔の『笑門来福⤴吉日』じゃない」