あとがき、または与太話、または供養

文字数 3,037文字


 どうも立花みかんでーす。洗濯物を取り込んだ時に、たんぽぽの綿毛がついてました。
もうすぐ春ですね。恋をしてみませんかー。

 ……薄明の丘が完結しまして一週間ちょい経ったでしょうか。改めまして、最後までお付き合いいただきありがとうございました! 
 もう最後の一週間は一心不乱。もはや完結以外に道は無し、とりあえず完結させる!! え!? 残業!? アァアアア!! となりながら、無事に上山泉の物語を終わらせることができました。
 この物語はリメイク版、とついていることから、実は高校二年生……? くらいに書き始めたものになります。大学四年生の時に完結させたものを、三年の月日をかけて書きなおした感じです。
 絵師に出会ったのも高校生のときです。絵を描ける女の子を、あの手この手を使って誘惑しました。してません。意気投合してここまできました。だよね!?
 絵師とは二人三脚でこの物語を進めて来た……と言っても本人はちょっち遠慮するんですが、事実二人三脚で進めて来たのです。確実に言えることは、あなたがいなければここまで私は来ていなかったでしょう。ありがとう、どうぞこれからもよろしく。

 そしてプロトタイプでも言っていたんですが、私はこの物語を書いて筆を折るつもりでした。私にとってこの薄明の丘は、私の中に生きて来た彼と彼女、そして小説を書く私への墓だったんです。それが――絵師と出会って、こうやって読んで貰えているうちに、物語の登場人物である彼らが命を経て、私の手元から自分の意志で這い出てしまいました。
 そうするとあら大変ですわ。私の中にどばどば流れてくる情報量。支配が逆転するとはこのことか?
 なので――まだまだ立花みかんは行くぜ! この文字列の大海原!!
 ということなんですなぁ~。

 この物語は、高校生の私が必死に書いたもの。だから、終盤はあえていじることをやめました。前半めっちゃいじったけどな……。
 読み辛かったとは思いますが、ここまで読んで下さったあなた、本当にありがとう。
 どうかあなたの物語も、私に読ませてくださいね。

 それでは~~~~~~~~!!!! 差し込もうげへへと思って見事忘れていた文章!!
 を、ここに記入!!
 ほんとすっかり忘れてた。てへへ~。





XX 上山泉の独白

強制された愛だと思う。
矯正された恋だと思う。
――それでも、それでもね。
あの瞬間だけは、本物だったの。
この世界に落ちて来た時。目を開けた時。私ね、わからなかったけれど、全てが歪に歪んでいたけれど、これだけは、はっきりと自覚してしまった。
怖い。
置かれた状況が、わけのわからない今が、身を這う怨嗟が、耳に木霊する叫びが――――全部が一気に解かれたように襲い掛かって来て……あ、だから、あなたは私に強制したの?
そっか……そういうことか。
ああ、そう。本物、本物は―――。
あなたの、後ろ姿。あの闇の中で、恐ろしい金色が私を見下ろす中で、助けに来てくれた一つの銀色の光。
あの時の鮮烈な印象は、深く心臓に深く刻まれた。
その電流の様な思いの痺れは、本物でしょう。
あの時が、本当の思いの・・・・・・始まりで、終わりだったのかもしれないね。

私、スワードのこと、本当に好き、だったの――……。

でも、もう、わかんないや。
どれが本物でどれが偽物だっけ?もう全部本物で良い?もう、全部偽物で良いよね。
思いをあげる必要なんてないでしょう。そもそも、お前たちはわたしに思いを与えなかった。
与えられてないのに、この私が与えると思ったの?
思いあがるな、傲慢なる神様たち。
お前たちが私に与え続けていたのは、裏切りの結末だけ。
だから、焼き尽くしましょう。
全て、あの二つの悲しみを慰める歌となって、世界に鳴り響け。
世界に、世界になり、…………。
……世界、世界は、もう無い。
私の、世界。
ああ、あああ、ああああああ。
嗚呼――――――。
全部消えろ。
凪いだ世界でなら、私も、

壊れることが出来るでしょうか。



(みかん:忘れてたな、これ。月明かりの結界で過ちに気付けたかもしれないのに……)


XX 器
『わたしは』
  『あたし』
『わたシ―――』
       『たちは、器』
『うつわ』
   『ウツワ』

 わたしたちは器。あの人のための器。彼が欲しいのは貴女自身じゃなくて、貴女。貴女自身はいらない。欲しいのは、必要なのは、あなたのガワ。
 あなたが完成形。あの子は壊れてた。でもあなたで彼の願いが叶う。いいこと、いいこと、いいこと?
 あなたには才能がある。あなたには資格がある。わたしたちを紡いで出来た、最後の妹。
 あの子も才能があった。資格があった。けどあのこ、壊れてた。せっかく接着出来たのに、あのこ、あのこ自身を棄てられなかった。
 それは駄目。それだと駄目。それは必要ない。それは願い通りではない。
 だから失敗作。その一点だけが最大の欠点。補えない。壊れたお人形。お人形はメイクされてなきゃだめなんだから。
 でも、あなたは違う。
 あなた、あなた自身、捨てられるでしょう?
 だってあなた、いま、あなた?
 おめでとう おめでとう おめでとう スワード
 これでわたしたち、やっと愛してもらえる。
 あいして あいして あいして あいして
 すわーど しりうす しりうすがすわーど すわーどがしりうす
 わたしはあなた あなたはわたし 自分自身はさようなら

 あなたはあなた あなたはうつわ しこうのうつわ
 わたしたちのさいこうけっさく きれいなうつわ 
 さあ、受け入れて。


(みかん:これめっちゃよくね? 忘れるなよ……)



XX 最終話、薄明の丘

 赤い紋が繋いだ命の香り、その先に二人が立っていた。
 甘い香りを風に乗せて、彼と彼女は、私に逢いに来てくれた。
 言葉が出なかった。指を動かそうものなら、春の世の夢の如く消えてしまいそうで。
 そんな私を笑い飛ばして、二人は春の日差しを透かしていた。

「――ごめんなさい」

 口に出たのは、最哀の懺悔。
 
「逃げてばっかりで、ごめんなさい。私の責任を、押し付けてごめんなさい。……湊、実花……、最後まで、守られてばっかりで、ごめ……っ!」

 溢れ出した涙が止められない。
 指で押さえても、掌で拭っても、次から次へと溢れてくる。
 俯いた視界に入る、栗色の髪。緩やかに巻かれたそれは、憂う瞳を丸めた可愛らしい少女を、私の瞳に招き入れた。
 微笑んだその頬に、私の涙は伝わない。

『泣かないで、なんて言えないよ』

「実花……?」

 小さく呼ぶと、その花は揺れた。

『泉。約束を守ってくれて、ありがと』

 肩に触れる風が、柔らかく漂ってる。
 私に触れられない全てが、覆せなかった最期を自覚させている。

「約束、なんて……。私は、今も昔も守れてばかり!誰かの思いを踏みにじった今だって、わたしは死ねなかった!生きて、なんて酷い!二人の命の先に立ちたくなんて無い!二人と一緒にいたい!生きていたい!!――生きて、いたい、よぉ……!!」

『泉。……俺も、俺たちも泉と一緒に生きて、いきたかったよ……』

『うん。そうだよ、あんなところで、死にたくなんてなかった』

 胸を貫く言葉だった。
 そうだ、そうだよね!誰だって、犠牲になんてなりたくないよね。

『聞いてくれるか。

(みかん>>>> 聞かんでいいわ~~~~い!!!! わいこの展開知ってるよ!? 叛逆のほむほむーじゅじゃん!! 知ってる!! このまま闇落ちしちゃうよ!! 二回も闇落ちとかやめてよね!?!?)




 はい、ちゃんちゃん。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

・上山泉(かみやま いずみ)

 街の市立高校に通う、今年3年生になった女子高生。勉強は中の中、体育も普通。自慢と言えば、美人な実花と色々有名な湊との幼馴染であることくらい。同じ高校に入学したばかりの妹がいる。

 愚者の一人。何も知らず何もわからずに振り回されている。護衛のアスティンをかなり心配している。

・佐倉湊(さくら みなと)

 泉と同じ高校に通う。実花とお似合いだ、と密かに囁かれる程の顔と身体能力を持つが勉強はあまり目立たない。男女分け隔てなく接し、締めるところは締める手腕で教室の主導権を握っている。未だ女子からの告白が絶えず、それが遠まわしに泉を傷つけていることを実花に何度も指摘されている。

 愚者の一人。単独行動を厭わない。この世界でもあの世界でも、取捨選択を迷わない。

・安藤実花(あんどう みか)

 泉と同じ高校に通う。街一番と言っても過言では無い程の美貌を持つ。しかもないすばでぃ。しかし、本人は自分の容姿を理解しているものの、興味が無くいつも泉を飾ろうをしている。幾度と無く男子を振ってきたために、もはや高嶺の花となってしまった。

 愚者の一人。強固となった意志で、その人の隣を離れない約束を更に固いものとした。

・安倍 鏡子(あべ きょうこ)

 最近泉たちの街に引っ越して来た、転入生。自信に溢れ、それに伴う実力の持ち主。日本に残る陰陽師達の頂点に次期立つ存在。

・玄武(げんぶ)

 鏡子が従える『十二神将』の一柱。四神の一柱でもある。

 幼い外見に反した古風な口調。常に朗らかな表情であるので、人の警戒を躱しやすい。

・スワード=グリームニル

 三大諸侯の一人、東の諸侯。銀の髪と橙の瞳を持つ優しい風貌の男性。愚者である上山泉を保護し、その身をあらゆる危険から守ろうと奔走している。

 宮廷魔導士団の団長であり、魔法術を司る。橙の瞳を持つ全ての者の頂点に立つ。

・アスティン

 東の諸侯、スワードの側近的な存在。深緑の髪と橙の瞳を持つ柔和な性格の男性。知識を司る。

 泉の護衛……と本人は胸を張っているが、どうにも……。

・フライア

 東の諸侯、スワードの筆頭侍女。ダークブロンドの髪と橙の瞳を持つ女性。外に対し感情を見せないが、内に対しては凛とした姿の中に微笑みを見せる。アスティンのお陰か、戦闘能力の高さが伺える。

・バレン

 青を混ぜた金色の髪と、薄桃色の瞳を持つ可愛らしい少女。声と容姿、仕草に雰囲気――少女を見る少数の者達は、心臓を貫かれたような痛みを思い出すだろう。

・アレウス

 円卓の騎士であり、騎士団の長。ミルクティーの様な、と形容された髪と金の瞳を持つ男性。伏せ目がちな目と、低い声が相まって不気味さを醸し出している。

 特定の人物に対して、執着を持つ。

・ヨハネ

 円卓の騎士。序列第二位。ブロンズの髪に金の瞳を持つ、笑顔を絶やさない男性。かの使徒ヨハネと同一人物である。

 殺しをもはや厭わない。

・リアラ=サルース

 三大諸侯の一人、西の諸侯。赤銅色の髪に緑の瞳を持つ女性。

 現在においては些か感情の起伏に疎い様に感じたが、過去においては……?

 

 緑の瞳を持つ者の頂点に立つ、一人。


・アルピリ=サルース

 三大諸侯の一人、西の諸侯。赤銅色の髪に緑の瞳を持つ初老の男性。竜の姿を持つ。

 主に風を支配下に置いており、癒しの全てはサルースから発生している。


 緑の瞳を持つ者の頂点に立つ、一人。

・巫女(みこ)

 濡羽色の髪に、愚者を示す色の瞳の女。一目でわかる巫女服を身に纏い、古風な口調で話す。弟である巫に公私を叩きこんで長年立つのに、上手く分けられない様子にそろそろ手刀だけじゃ物足りないのか…と真剣に悩んでいる。

・巫(かんなぎ)

 濡羽色の髪に、愚者を示す色の瞳の少年。古風な装束を身に纏っているように泉は捕えているが、その服は身のこなしの軽やかさを助けるように出来ている様子。舞が得意で、昔はよく姉の演奏と共に神楽に立っていた。公私を別けることに拙く、すぐに己の意とする呼び方を口にしてしまう。

・エリーシア

 先代の王にして、初代。

 その大いなる力で、三千世界を創造したと言われる。

・シリウス=ミストレス

 神々が住まう国にて、その頂点に座す神王。

 冷酷な紅の瞳に、地を這う紺碧の髪。

 枯れ果てた神々の庭を、血で、雨で、濡らし続ける。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み