恐怖の一軒家 天寺さん家
文字数 2,098文字
瑞生はひたすら走る。短距離走の走り方ではなく、それなりの長距離を走るときの持久走で、ルナがいるであろう場所を目指す。
2018/01/11 15:38
マラソンはあまり得意ではないが、今すぐにルナの安全を確保しないと危ない状況なので急いでいる。走れメロスは一説によると早歩きぐらいだったそうだが、まあそれと同じくらい必死な気持ちで走っている。
2018/01/11 15:38
そんな瑞生を見下ろし、10メートルほど上空で、孫悟空が使ってそうな雲に乗って結姫が瑞生が目指す場所に向かっているところだった。
2018/01/11 15:39
うわあああ、なんだあの便利グッズ。魔法か何かか？ 必死に走ってる俺がばかみたいじゃないか。
2018/01/11 15:41
くそっ、なんだあの瑞生とかいうやつ。こっちが下手に出ればあれこれ見抜いてきて、早めに会話を切り上げておいて正解だったわ。
2018/01/11 15:41
と、10メートルくらい上空で言っているのが瑞生にも聞こえる。
2018/01/11 15:43
あと、突っ込みが甘いのよね。こっちがボケに回るなら突っ込んでほしいのに。ああいうやつが私みたいな頭の悪いやつの天敵なのよ。
2018/01/11 15:43
論点はそこでいいのだろうか。いくら独り言だからって意味のない話はいくらでもある。
2018/01/11 15:45
結姫の速度は時速40キロほどで、空を飛ばないで地面を走っていたなら家に突っ込んでしまう。しかしながら、あまりにも目立つので、そのまま入っていった家がよくわかる。そこが瑞生の目指す場所だと一目でわかるほどに。
2018/01/11 16:03
結姫が消えたのは古びた一件家だった。恐らく法隆寺と同じ技術で作られたが、時代遅れのレッテルを張られ、異様に安い値段で販売されている古民家というやつだ。
2018/01/11 16:04
住むのに不自由しないが、住んでいるのが怪しい奴だとアピールすることにも不自由がない。現に入り口の扉は厳重に鎖がまかれており、入ることが困難だ。空を飛んで入るなら中庭からすんなりだが、見る限りだと結姫は頻繁に空を飛んでいるのだろう。
2018/01/11 16:06
入り口を使わないで、空から入っている証拠だ。
2018/01/11 16:07
塀を乗り越えてはいるか。
2018/01/11 20:03
瑞生は走る速度をあげて、いわゆる高跳びの準備動作に入る。
2018/01/11 20:04
塀の高さと言っても人間の身長くらいなもので、どこかしらに捕まるところがあれば上るのは余裕である。
2018/01/11 20:04
ＲＰＧにはできない壁越えマジック！
2018/01/11 20:05
瑞生はあっという間に不法侵入をこなしてみせた。
2018/01/11 20:06
塀の中はごく普通の古民家だったが、庭にヘリポートがある。近くにはさっきまで結姫が乗っていた雲のようなものが一つ漂っており、ここに着地したのは間違いなかった。
2018/01/11 20:06
またヘリポートと言っても、下手な円形に歪んだＨ、スプレーで描いただけの雑な作り。個人の趣味の域を全く出ていない仕上がりに、瑞生は困惑する。
2018/01/11 20:09
やべえ、やべえよ。一体どこから突っ込んだらいいんだ？ どう考えてもその道のプロじゃねか。俺なんかがかなうわけないだろ。今からでも引き返そうかな。
2018/01/11 20:11
ふと庭を見渡すと、巨大な鍋が魔法使いの秘薬づくりのように煮えていた。ガスではなくて、炭で燃えている、家の外に設置するやつだ。しかしながらそれが秘薬ではなく、ただのスープなのは言うまでもないし、香りからしてこれから食べるのはわかる。
2018/01/11 20:12
恐らくはもうすぐ結姫が戻ってきてこれを食べるのだろう。
2018/01/11 20:19
瑞生は何のためらいもなく、その鍋に病院からくすねてきた睡眠薬を混ぜて、庭の木陰に隠れた。
2018/01/11 20:19
しばらくして結姫が鍋に駆け付ける。
2018/01/11 20:20
あーあ、やっちゃった。お鍋を火にかけたまま外出なんて、なかなかスリリングなことを私もするわね。まあ、家の外だから大丈夫だと思うけど。
2018/01/11 20:22
そういえば、何の鍋を作っていたのか思い出せないわ。まあ、食べてみればわかることよね。
2018/01/11 20:23
お前！ そんなことくらい覚えてろよ、あほかよ！
2018/01/11 20:25
瑞生は思わず声をあげてしまった。あまりにも激しいボケで。
2018/01/11 20:26
あら、そこに誰かいるのかしら？
2018/01/11 20:26
……。
2018/01/11 20:26
カーカー（カラスの鳴き声の真似）
2018/01/11 20:27
なんだ、ハトか。
2018/01/11 20:27
これ以上突っ込んだら負けだと思って、瑞生は何も言わなかった。
2018/01/11 20:27
うーん、いい人生はおいしいお鍋からよね！
2018/01/13 20:53
結姫はそう言って睡眠薬がたっぷり入った鍋を一口飲む。
2018/01/13 20:55
うーん、おいしい。いくらでも食べれちゃうわ！
2018/01/13 20:56
と、あまりにも勢いよく食べるもので、3分後には眠りについてしまっていた。
2018/01/13 20:56
その場で寝転がってしまったので、たぶん風邪をひくだろうな、と瑞生は結姫をお姫様抱っこし、家の中の押し入れを漁って布団を準備、結姫をそこに眠らせる。
2018/01/13 20:57
ヤゴコロジック特有の無駄に紳士的な行為発動中。
2018/01/14 09:12
そして近くに会った机からメモ用紙を一枚盗み、同じく転がっていたボールペンでメッセージを書く。手紙を結姫の枕元に置いて、瑞生は満足。
2018/01/13 20:58
そのメッセージにはこう書いてあった。
2018/01/13 20:59
お前の頭は天才のそれに近いな。今度俺にもボケの秘訣を教えてくれ。
2018/01/13 21:01
だった。
2018/01/13 21:01
今のところルナの姿は確認できないが、今回はここまで。
次回をお楽しみに。
2018/01/16 21:20
根性の曲がった告知
作者はその低い知能で同人サークルを経営しています。
以下、サークルのブログです。
http://dentatusya.blog.fc2.com/
ブログ内で通信販売のお知らせがありますが、作者、転職活動、シナリオ活動、絵師への発注作業、作詞作曲活動、勉強、仕事、家事、で多忙のため、何人たりともこれを問い合わせないでください。
自己都合で過労になっても保険はおりません。常識ですね。
2018/02/02 22:36
