主人公記憶を失い、最初の台詞を忘れる。
文字数 1,845文字
薄暗い部屋にＬＥＤの明かりがともった。
2017/08/25 23:19
ふぁ？
2017/08/25 23:21
余りにも気の抜けた返事よのう。
しかし、記憶喪失特有の脱力感から、脱出できていないので無理もない。
2017/08/25 23:21
（どこだ・・・ここ）
2017/08/25 23:23
男はあたり一帯を見渡した。
しかし、白い壁で四方を囲まれた空間で、大した情報は手に入らなった。
2017/08/25 23:23
あからさまに隔絶された空間、そして壁の一枚に、強固な鉄の扉。
2017/08/25 23:24
どう考えてもに精神病院の一室だと感づいた男は！
2017/08/25 23:25
誰かいないのかーっ！
2017/08/25 23:26
と、叫ぼうとしたが、たぶん迷惑にしかならないと気付いてやめた。
こういう訳が分からない状況こそ、慎重に。
2017/08/25 23:26
（なんだ？ 左目がかゆい。かゆいというか、かゆい？ いいや、痛い？ いたくもない。だけど、うずいているというか・・・）
2017/08/25 23:27
肉体的感触を先に気にしたあたり、この男は割と大丈夫そうだ。
2017/08/25 23:28
しかしッ！
次第に自分がどうしてここに閉じ込められているのか、という疑問を持ったとたん！
2017/08/25 23:29
（俺は誰なんだ？）
2017/08/25 23:30
男は自分の状況を確認する。
2017/08/25 23:30
自分は今、清潔なベッドの上に横たわっており、白いシャツを着せられて、さっきまで眠っていた。
それ以前の記憶は全くない。
2017/08/25 23:31
とりあえずベッドから起き上がって、鋼鉄製の扉を手のひらで叩いてみる。
2017/08/25 23:32
どうした、もう気が付いたのか？
2017/08/25 23:33
誰だかわからないが、反応があった。
2017/08/25 23:34
（どうする？ ここはだれ、私はどこ、系のギャグを出したほうがいいのか？ 状況がシリアスなのかシュールなのかいまいちわからない）
2017/08/25 23:35
この男、バカか？
自分の置かれた状況を理解しようと努力したのに、なぜ着地点がそこになる？
記憶喪失ゆえの愚かさだろうか。
2017/08/25 23:36
ここどこですか？
2017/08/25 23:43
結局勇気が足りなくて、普通の質問を投げかけた。
しかし、扉の向こう側の相手は、男が話の通じる相手だと認識したとたん、
2017/08/25 23:45
がちゃんこ、と音をたてて、扉の鍵を外してしまった。
2017/08/25 23:46
（うそだろう、『がちゃんこ』ってなんだよ、明らかに大掛かりな鍵じゃないか。
そんな危険な生き物として扱われてたの、俺？）
2017/08/25 23:46
お前、名前を何というんだ？
2017/08/25 23:48
思い出せない。
2017/08/25 23:48
なんだ、記憶がないのか。
2017/08/25 23:49
部屋の外の女は考えた。
この記憶のない男の相手をするか、それともこの後の予定を守るか。
2017/08/25 23:50
この後には友達と雑談というあまりにも重大な予定が控えている。
しかし、この病室に男を放置するのもかわいそう。
考えに考えを重ねる。
2017/08/25 23:50
記憶のない男は、無駄に早く感じる時の流れの中、この後自分がどうなるのか、不安に思った。
2017/08/25 23:52
だが、どういうわけか、目の前の女性に恐怖の感情を抱かなかった。
肉体的な感覚として、この女性が信頼できる相手だと理解した。
2017/08/25 23:53
理由ですか？
えーと、その生物が持つ固有スキルのようなもので説明できないんですけど。
相手が信頼できるかどうか一目で見抜く能力、あーあ、面接官の持つスキルだ。
この男はクズ。
2017/08/25 23:54
お前、自分が何の妖怪なのか思い出せるか？
2017/08/25 23:56
ついでに、女性が人の形をしているが、人間ではないことも分かってしまった。
2017/08/25 23:57
俺の種族？
2017/08/25 23:58
そう、種族、お前は何に属しているのだ？
なにから生まれたんだ？
2017/08/25 23:58
ひたすら思い出せないで切り返すのも失礼だと思うんだよねえ。
2017/08/25 23:59
思い出せない。
2017/08/26 00:00
失礼なやつ、しかし事実は事実か。
皆現実を受け入れてくれ。
2017/08/26 00:00
困ったぞ。
お前自分のことを何も知らないのか。
これは困ったぞ。
2017/08/26 00:01
それ、俺とどっちがより困ってると思う？
2017/08/26 00:02
お前が何に困っているのか、そのことを私が知らなければ答えられない。
私はお前を助けたいのだが、どう助けたらいいのかわからない。
2017/08/26 00:03
男はボケたつもりだったが、正面から切って捨てられた。
2017/08/26 00:08
ここはどこですか？
2017/08/26 00:09
ここは京都の一角にある病院だ。
ある日、お前が私の家の前で倒れていたのでな、ここに運んだ。
2017/08/26 00:10
倒れていたって、その前は？
まあ、知るわけないですよね。
2017/08/26 09:40
そんなことより、お前は何の妖怪なんだ？
それがわからないのでは、私はどうしようもない。
2017/08/26 09:45
妖怪前提の話をするので、男は自分が妖怪の一種なのではないか、と思い始めた。
2017/08/26 09:45
実のところ、男は人間なのだが、拾われた相手が妖怪だったのだ。
これからは妖怪として生きてもらうしかあるまい。
運が悪かったな。
2017/08/26 09:45
俺、これからどうなるの？
2017/08/26 09:46
ふむ、そうだなあ。
私はこの後予定があるからなあ。
どうする、お前もついてこないか？
2017/08/26 09:47
予定ってなんですか？
2017/08/26 09:47
妖怪同士の茶話会だ。
2017/08/26 09:48
男はこれから怪しげな密会に参加させられることが決まって、一瞬身震いした。
しかし、この部屋にいるよりはましだろと思って、謎の女についていくことにした。
2017/08/26 09:48
次回に続きます。
ご一読ありがとうございました。
2017/08/26 09:49
悲しいお知らせです。
次回更新日は9月２日土曜日の朝11時に決まりました。
社畜に毎日更新は厳しい世界なんだ。
2017/08/26 22:45
