続六道参り 皇子とオールドの和解

文字数 2,379文字

今回、すでに完成してしまったので2話同時に更新します。
2017/10/06 17:42
男はオールドと一緒に、例のお寺、六道珍皇寺にやってきた。
2017/09/08 20:37
今回もカンロ飴を購入しあの世へ通じる井戸に向かい合う。
2017/09/08 20:38
やはり無数に並んだお地蔵さんが無意識のうちに何かを警告してくるが、人ならざる男にそれは届かない。
2017/09/08 20:38
さあ、行きましょうか。
2017/09/08 20:39
あのー、今更なんですけど、あの世とこの世って境目どの辺にあるんですかね?
2017/09/08 20:39
あるようでないものよ。皇子もお盆になったら普通に現世に帰ってくるし、あってないようなものよ。
2017/09/08 20:40
1500年生きてなお、この緩い死生観。いろいろと超越しているオールドなのだが、これから皇子に本心を話すとなると、やっぱり緊張する。
2017/09/08 20:41
どうして、今まで本当のことが言えなかったのかしら?
2017/09/08 20:42
そりゃ、そうじゃないですかね。だって、皇子との関係を一つ進めて、その先がわからないんですからね。
2017/09/08 20:43
ただの自分の憶測ですけど、もう会いに行く理由がなくなってしまうのが怖いんでしょう?
2017/09/08 20:59
保留にしておけば、皇子に会う理由うが作れる、何も解決しないままずるずることが続けば、皇子にかかわり続けることができる、そう考えているんじゃないですかね?
2017/09/08 20:59
当たらずとも遠からず、それだけじゃないけど、そう思いたいならそう思ってくれて構わないわ。
2017/09/08 21:00
男の考えは当たっていた。皇子はオールドから絶大な信頼を寄せている。それゆえに、その関係が終わってしまうのは、いくら不死身になったからと言って侮れない。今後、あの心のない天子が自分のところに残るのかどうか、わからない。
2017/09/08 21:01
全て解決してしまったとして、自分の一部ともなってしまった相手を切り離せるのか? 無理な話だ。
2017/09/08 21:11
(とはいえ、これって心配する必要ないよね。こんなことで関係が切れてたらさ、1500年の絆は何だったんだ、って話だ。オールドが心配性なだけだろ、これ)
2017/09/08 21:12
皇子が人間でなこと、彼が人の幸せを味わっていないこと、オールドの心配事。それらすべては時間の流れで洗い流されてしまった。ある程度のところから、オールドの決断一つの問題だったのだ。
2017/09/08 21:13
オールドは自ら井戸の中に飛び込む。それに続いて男も井戸に飛び込む。
2017/09/08 21:15
舞台は変わり冥界。暗い雰囲気とは程遠いところ。そのあの世特有の雰囲気がない場所を通り、オールドと男は皇子のいる建物のところまでやってきた。
2017/09/08 21:15
コンクリートの壁で囲まれた建物は相変わらず赤かったが、オールドも緊張のあまり顔が少し赤くなっていた。
2017/09/10 09:13
門の内側に入ると、早速皇子が出迎えてくれた。
2017/09/10 09:14
やあ推古様。また来たのかい?
2017/09/10 09:15
ええ、また来たわ。あなたに一つお願いがあってね。
2017/09/10 09:16
オールドは今まで言えなかったことを言う。
2017/09/10 09:16
私、あなたに恨んでほしかった、って言ってきたけれど、本当は違うの。あなたに人の幸せを味わってほしいの。天子だからとか執政官だからとかじゃない、私が天皇だからでもない。一人の人間として、あなたに幸せを味わってほしいの。
2017/09/10 09:16
だからその……私、あなたに幸せを味あわせることなく殺してしまって、ごめんなさい。
2017/09/10 09:18
人の幸せか。そんなもの、私が味わっていないとでも思いましたか? 私は人の幸せを味わっていますよ。今も、推古様がお元気そうで、それが一番の幸せなのですが。それではいけませんか?
2017/09/10 09:18
い、いけなくはないわ。でも、そんなもので満足なの?
2017/09/10 09:19
満足ですとも。自分が仕えていた人が今もこうして生きている、それはとても尊いことです。ただそれだけが幸せなことです。
2017/09/10 09:20
そう……。
2017/09/10 09:21
ドラマチックな展開というより、オールドは皇子の幸せ感を実感しただけだった。しかしながら、皇子は人としてではないかもしれないが、幸せを感じているようだった。
2017/09/10 09:21
自分が生きながらえているのが皇子の幸せ。1500年も生きることが幸せかどうかはさておき、皇子は自分が幸せだと、そう告げた。
2017/09/10 22:18
私、これであなたに会う理由がなくなっちゃった。この疑問を解決しないでおけば、あなたに会い続けられると思っていたのだけれど?
2017/09/10 22:19
もう会わなくていいでしょう。時間が流れすぎています。お互い、お互いに用はないでしょう?
2017/09/10 22:20
ちょっとしたおふざけ。理由がなくても会いたくなるのが人間というものだが、いいや、すでにオールドもこう考えている。
2017/09/10 22:20
(次会いに来るにはどんな理由がいいかしら?)
2017/09/10 22:22
逆に、会いに行く理由を考えるなんて、ただ遊ぶことができないタイプなのかもしれない。理由もなく付き合う相手が、ただ楽しいから付き合う相手というのが生きていくうえでどれだけ大切なことか。
2017/09/10 22:22
と、言えば何となく納得しますが、理由がないと会わない、というのもありだったりするでしょう。人それぞれです、そこは。
2017/09/10 22:23
回りくどいやり方だったが、オールドは皇子との関係を一つ完結させることができた。そのことを理解した皇子は言う。
2017/09/10 22:24
君、確か名前がないんだったな。名前をくれてやると持ち掛けたが、その約束を果たそうじゃないか。
2017/09/10 22:25
あの、俺あんまり活躍してないんですけど? 本当にいいんですか?
2017/09/10 22:26
そこ迷うなよ主人公。このまま名無しでストーリー進めるとかね、RPGの冒頭ですら名前決定するところあるのに。しかし、言うほど活躍していないのは事実。自分にとって大切な名前というものを、こんな簡単に受け取ってしまっていいのか?
2017/09/10 22:26
(まあ、いいか)
2017/09/10 22:27
君には小峠瑞生という名前をやろう。立派な名前だろう?
2017/09/10 22:28
立派ですけど……確かに立派ですね。
2017/09/10 22:28
(オールドといい、碧泉といい、カップチーノといい、立派の基準がよくわからない)
2017/09/10 22:28
こうして瑞生は名前を得る、ということを成し遂げた。
2017/09/10 22:29
しかし、名前を得たところで、自分が何者なのかわからない。瑞生だ、ということができても、プロフィールがない。
2017/09/10 22:30
(これから自分の正体を探っていきますかねえ)
2017/09/10 22:31
ここでプロローグは終了です。

次回から、第一章『永すぎた夢』が始まります。

次回更新はすでに行われていますが、一度眠ったら次いつ目覚めるのか、なんて気にしないほうが幸せだろう?

2017/09/10 22:32
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登場人物紹介

小峠瑞生(ことうげ ずいしょう)

自分が何の妖怪なのか思い出せないかばんちゃんポジション。

人間の特性を使って、謎を解決していく。

碧泉(あいぜん)

謎の女。

瑞生が誰なのか知らないけど、その素質を見抜いて利用している。

浮世離れが非常に深刻で、秋元康はAKBのメンバーだといまだに勘違いしている。

ナレーション。

突っ込み不在の世界に救いを。

地の文に革命を巻き起こすべく生み出された新兵器。

基本的に神視点だが、感情が高ぶると特定のキャラに肩入れする。

オールド

謎の女2

かつて日本の首領(ドン)だったが、部下が有能すぎて出番がなかった。

その部下を愛しさゆえに食べたところ、不死身になったと本人は言うが、大抵の人は信じない。

また、本人にグロ耐性がないので、この話題は避けたがる。

厩戸皇子(うまやどのおうじ)

時代と場所、年代によって呼び方が変わるややこしいひと。

オールドの部下、しかもいつも冷静で取り乱さない。できる人に見えるがただのサイコパスかもしれない。

オールドと1500年くらい前に謎の約束を交わしている。

実は1万円札にその顔が採用されたことがあり、俗世の人間は彼の顔を見ただけで興奮してしまう。年もばれる。

寂推カップチーノ(じゃくすいかっぷちーの)

オールドのメイド。手下。

多分1000年くらい存在しているが、明治維新文明開化後、頭の中お花畑な毎日を過ごしている。名前も常に前時代性を排除して新しいものに改名している。

種族は幽霊。

寂織伏美(じゃくおりふしみ)

種族、幽霊寄りだが例にもれずその他。

出身は尾張の国で相手を馬鹿にするとき『たわけ』という。

何百年も前に封印されて以来、目覚めの時を待っているが、現代の進みすぎた文明を前に、目覚めるに目覚められない。

久遠寺ルナ

種族 ある人は人間だと言い、ある人は死者という。ある人はゾンビだというし、ある人は解脱者だという。答えは藪の中。安定のその他。

作者がさぼっているのではなく、そこが話の主題なので安心してほしい。

天寺結姫(あまでら ゆいき)

種族 ネクロマンサー

ルナちゃんをゾンビに変えた張本人。

しかし、悪意があるわけではないようだ。

また、頭が悪く自然に会話していてもボケに回ってしまう。

伊早坂酒々井(いそざか しすい)

瑞生の過去を知る人物。

瑞生の姉を名乗っているし、瑞生の過去の日記をねつ造して瑞生を都合のいい方向にもっていこうとするが、瑞生の理解が早すぎるため、続きの執筆に追い立てられる。

名前はただのペンネームにすぎず、しかも登録されていないため本名はわからない。

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