種族について、カプ論争ぐらいどうでもよかった

文字数 2,483文字

瑞生は結姫を布団に寝かせた後、家の中を物色しようと思っていた。
2018/01/16 21:24
ルナがスマホを持っていれば、家の中にいるだろう。もう近くまで来ているのだから、慌てなくてもルナは見つかる。
2018/01/16 21:24
ふぅん、黒幕と思われるやつは眠ってるし、ゆっくり探せるな。
2018/01/16 21:25
あの……どちら様ですか?
2018/01/16 21:25
現段階で瑞生はルナの顔は知らない。目の前に現れているのはルナなのだが、それに気づいていない。
2018/01/16 21:26
(こいつ……雲に乗ってた結姫だから、たぶん魔法使いの弟子か何かだな。不思議な力を使ってきそうだ)
2018/01/16 21:26
そんな当たりもしない予想を垂れ流して、ふと瑞生はルナの制服の脇腹部分、そこが少し赤いのに気づいた。
2018/01/16 21:27
出血してない?
2018/01/16 21:27
まあそうですけど、この家は税金を納めていないので救急車が来てくれないんです。
2018/01/16 21:28
それは嘘だな。小学校ですら給食費を納めていなくても最低限給食は出してくれるのが現状だ。逆に税金を払っていないから医者が動かないとか、世紀末すぎると思う。
2018/01/16 21:28
あの……私人間やめてるんで、医者が手当てしてくれるかどうかわかりませんよ。
2018/01/16 21:30
人をやめている、という言葉に瑞生は反応しない。人でないにしても、傷があるなら治療してやるのがマナーだ。

お前らだってネトゲで人倒れてたらケアル放つだろ? 常識すぎてこれ以上語ることはない。

2018/01/16 21:31
痛くないの? それ?
2018/01/16 21:32
痛いですけど、もう傷は縫い合わせてありますから。
2018/01/16 21:33
ふーん、何針ぐらい縫ったの?
2018/01/16 21:33
100から先は数えてないって、結姫さんに言われました。
2018/01/16 21:33
わお、マッドサイエンティストもびっくりだな。命を何だと思ってやがる。
2018/01/16 21:34
えーと、私生きてません。死んでもいませんけど。
2018/01/16 21:35
そろそろ本題に入らなければならない。瑞生はグロ耐性が多少はあるものの、100針縫うような傷は考えたくない、というのが本音だ。
2018/01/16 21:35
実は、久遠寺ルナという人を探していて。
2018/01/16 21:36
それ、私です。
2018/01/16 21:37
ああ、君が……。
2018/01/19 18:34
お父さんが探してるよ。早く家に帰ってはどうかな?
2018/01/19 18:35
そうですか。でも、お父さんにサプライズプレゼントを用意しないといけないですし。
2018/01/19 18:35
どうやら、結姫が言っていたサプライズプレゼントは本当のようだった。
2018/01/19 18:35
でもねえ、そういうプレゼントより、元気な姿を見れたほうが、お父さんも幸せというか。
2018/01/19 18:36
それはできませんよ。だって私、もう人ではないですから。ゾンビですよ。できれば、こんな姿お父さんに見せたくないです。
2018/01/19 18:36
ああ、そっちか。そういう種族の問題とかはさておきさ、お父さんに顔を見せたほうがいいと思うよ? 心配してるし。
2018/01/19 18:37
そのことについて、結姫さんから聞いてないんですか?
2018/01/20 20:09
ふぁ?
2018/01/20 20:10
私、瑞生さんのことは少し知ってますよ。私を探していたの、隣で聞いてましたから。結姫さんと一緒に調べたりもしました。
2018/01/20 20:10
私がここまで調べてるんですから、瑞生さんもある程度のことを調べていて当然ですよね。
2018/01/20 20:12
え? なんかの圧迫面接ですか? 調べるって……
2018/01/20 20:12
私の家族関係について、どこまでご存知ですか?
2018/01/20 20:13
知っているわけがない。いくらミステリー芸風に手を出した作品だからと言って、素人がプロの探偵並みの調査力を持つのは不可能だ。ルナについて深くは知らない。
2018/01/20 20:13
えっと、何かあったんですかねえ?
2018/01/20 20:14
私の口からは言いたくありません。ごめんなさい。
2018/01/20 20:15
えーと、なんていえばいいですかね?
2018/01/20 20:15
詳しくは結姫さんに聞いてください。あの人も悪意があってやってるわけじゃないので、話せばわかると思います。
2018/01/20 20:16
あーあ、眠らせてしまった。お薬で眠ってるから、しばらくは起きない。
2018/01/20 20:16
だが、話をすればするほど怪しいストーリーが浮かび上がってくる。
2018/01/20 20:17
ルナちゃん、ところで君はさっき自分のことをゾンビだと言ったね? あれはどういう意味かな?
2018/01/20 20:17
実は私、一度死にました。仮死状態だったかもしれませんけど、そこに結姫さんがやってきて私を治してくれたんです。
2018/01/20 20:18
私がやり残したことをちゃんとやれるようにって、助けてくれたんです。
2018/01/20 20:19
結姫は怪しい人物だったが、どうやら善意からの行為のようだった。
2018/01/20 20:19
今回の事件の裏に、いわゆる悪の波動はない。
2018/01/20 20:20
(やべー、やべーぞこれ。不法侵入に薬物混入といい、一番悪いの俺じゃん!)
2018/01/20 20:21
正義を貫くことの愚かさ、それが露になった瞬間だった。
2018/01/20 20:22
悪がないなら正義もないんだよなあ、的な感じで。
2018/01/20 20:22
ところで、ルナちゃん。さっき自分のことをゾンビだって言ったけど、あれは本当なの?
2018/01/20 20:23
本当かどうかはわかりませんよ。私自身、自分が何者なのかわからないんです。
2018/01/20 20:25
お腹の針の具合から人間でないことは確かですし、死んでもいません。ゾンビというにも意識ははっきりしてます。
2018/01/20 20:26
ヤゴコロジック特有の種族を気にしたら負け芸風発動中。
2018/01/20 20:26
とはいえ、元人間がジョブチェンジするのはどんな気持ちなのだろうか?
2018/01/20 20:27
仮に生きているとして、種族不明の存在をお父さんは受け入れてくれるのか? サプライズプレゼント以前の問題ではないだろうか?
2018/01/20 20:27
肉体が生きているにしても、社会的には死んでいる扱いなのだろうか? ある意味、生きていくために捨てたものが多すぎて大ダメージ。
2018/01/20 20:31
うーん、結論から言うと、俺にもわからん。
2018/01/20 20:32
序盤のスマホ騒動、中盤の謎調査、終盤の謎が解けないという、お前は何を目指しているんだ?
2018/01/20 20:33
そもそも論として瑞生も自分の種族が何なのかわからない。それでも生きていられる。つまり、どうでもいい問題だ。
2018/01/20 20:34
しかしその感覚を相手と共有できるのか、と言われるとそんなことはない。ルナちゃんは自分の種族をはっきりさせたうえで生きたい、そう思っているかもしれない。
2018/01/20 20:35
自分の種族気になる?
2018/01/20 20:36
気になる。
2018/01/20 20:38
気になるようだった。
2018/01/20 20:38
超客観的視点からしてみれば種族なんて存在しない、と言ってしまうことはできるが、ここで問題になっているのはルナの主観だ。
2018/01/20 20:41
主観的な観点を客観だけでねじ伏せるのはアホのやること。瑞生はそんなことしない。
2018/01/20 20:42
私の種族は何だと思いますか?
2018/01/20 20:42
わからん。
2018/01/20 20:48
お手上げになった瑞生は本音を言う。
2018/01/20 20:48
ですよね。知ってました。私が知らないんですもの。あなたが知ってるわけないですよね。
2018/01/20 20:48
いいよ、どうせ知ってることしか知らないんだから。
2018/01/20 20:49
恐らくこの問題は考えても分からないだろう。理屈だけ振りかざしていれば安定じゃないのは明らかなので、ここから先は気持ちの問題ではないだろうか?
2018/01/20 20:55
次回に続きます。
2018/01/20 20:56
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

小峠瑞生(ことうげ ずいしょう)

自分が何の妖怪なのか思い出せないかばんちゃんポジション。

人間の特性を使って、謎を解決していく。

碧泉(あいぜん)

謎の女。

瑞生が誰なのか知らないけど、その素質を見抜いて利用している。

浮世離れが非常に深刻で、秋元康はAKBのメンバーだといまだに勘違いしている。

ナレーション。

突っ込み不在の世界に救いを。

地の文に革命を巻き起こすべく生み出された新兵器。

基本的に神視点だが、感情が高ぶると特定のキャラに肩入れする。

オールド

謎の女2

かつて日本の首領(ドン)だったが、部下が有能すぎて出番がなかった。

その部下を愛しさゆえに食べたところ、不死身になったと本人は言うが、大抵の人は信じない。

また、本人にグロ耐性がないので、この話題は避けたがる。

厩戸皇子(うまやどのおうじ)

時代と場所、年代によって呼び方が変わるややこしいひと。

オールドの部下、しかもいつも冷静で取り乱さない。できる人に見えるがただのサイコパスかもしれない。

オールドと1500年くらい前に謎の約束を交わしている。

実は1万円札にその顔が採用されたことがあり、俗世の人間は彼の顔を見ただけで興奮してしまう。年もばれる。

寂推カップチーノ(じゃくすいかっぷちーの)

オールドのメイド。手下。

多分1000年くらい存在しているが、明治維新文明開化後、頭の中お花畑な毎日を過ごしている。名前も常に前時代性を排除して新しいものに改名している。

種族は幽霊。

寂織伏美(じゃくおりふしみ)

種族、幽霊寄りだが例にもれずその他。

出身は尾張の国で相手を馬鹿にするとき『たわけ』という。

何百年も前に封印されて以来、目覚めの時を待っているが、現代の進みすぎた文明を前に、目覚めるに目覚められない。

久遠寺ルナ

種族 ある人は人間だと言い、ある人は死者という。ある人はゾンビだというし、ある人は解脱者だという。答えは藪の中。安定のその他。

作者がさぼっているのではなく、そこが話の主題なので安心してほしい。

天寺結姫(あまでら ゆいき)

種族 ネクロマンサー

ルナちゃんをゾンビに変えた張本人。

しかし、悪意があるわけではないようだ。

また、頭が悪く自然に会話していてもボケに回ってしまう。

伊早坂酒々井(いそざか しすい)

瑞生の過去を知る人物。

瑞生の姉を名乗っているし、瑞生の過去の日記をねつ造して瑞生を都合のいい方向にもっていこうとするが、瑞生の理解が早すぎるため、続きの執筆に追い立てられる。

名前はただのペンネームにすぎず、しかも登録されていないため本名はわからない。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色