妖怪とは何か、を考える回

文字数 2,491文字

それで、伏美ちゃんを今の時代に招き入れてどうするつもりなんだ?
2017/09/28 10:54
瑞生は金閣寺を出たて、少ししたところの道を歩きながら、隣を歩く碧泉にそんなことを聞いた。
2017/09/28 10:55
迎え入れる理由としては、まあ親切といえばそれまでだが、碧泉にはもっと深い理由があるのではないか、そう考えたすえの問いだ。
2017/09/28 10:55
ふぅん、私はただの親切のつもりだがな。それで納得しないと言われると、もう少し考えを言わなくてはな。
2017/09/28 10:56
思いのほかあっさりと本心を打ち明ける碧泉。隠す意味もないし。親切以上の意味はない。
2017/09/28 10:56
妖怪という存在は貴重なのだよ。お前、妖怪がどのように発生するか知っているか?
2017/09/28 10:57
知らないなあ。って言っても、ろくな生まれ方してないのは何となくわかる。
2017/09/28 10:57
確かに知らないだろうな。知らなくてもいい。なぜならわからないのだから。
2017/09/28 10:58
私は自然発生した妖怪だが、オールドのように人間から派生した妖怪もいる。生まれ方が統一されていないのさ。ゆえに、何をもってして妖怪とするのか決めることができない。
2017/09/28 10:58
その他、っていえば確かにその他だけど、納得しにくいな。
2017/09/28 10:59
納得できないがゆえに、妖怪は人間社会では生きにくいものなんだよ。伏美が生きていた時代は人間の力がそれほどではなかったが、今はそうではない。人間が強すぎる。
2017/09/28 11:00
仮に、伏美が何も知らないで人間に助けを求めた場合、伏美は人間たちの対応によって心を病んでいくだろう。
2017/09/28 11:01
これは幸運なことなのだよ。最初に妖怪に助けを求めたのが、今や人間ではなくなった伏美には好都合なのだ。
2017/09/28 11:02
仲間意識ってやつですかね?
2017/09/28 11:02
そうだな、仲間意識だ。伏美は妖怪である以上、私たちが守ってやらねばならない。
2017/09/29 11:10
守るにしたって、俺たち妖怪が人間からどう見られているのか、そういうのを意識したことはなかったな。実際どういう風にみられてるんだ?
2017/09/29 11:11
奇妙な奴ら、程度に思っているだろう。私は怖い存在になったつもりはないが、恐れるやつはとことん恐れる。そういうのが騒いでしまうと、妖怪への差別騒ぎが激化する恐れもある。まあ、なんにしろ普通の人間は妖怪に対するリテラシーがないからな。
2017/09/29 11:12
うおおおおお、妖怪に対するリテラシーだと? 頭よさそうな言葉使ってるけど、そんなもの誰が理解するというのだ? ちょっと方向音痴な言葉じゃないか?
2017/09/29 11:15
リテラシーか。人間は妖怪の常識を知らないだろうからな。無理もないか。
2017/09/29 11:22
さらっと納得するな! トンデモ理論だぞ!
2017/09/29 11:23
ああ、本当にな、妖怪の両親が娘を学校に通わせると、気が付いたら学校からモンスターペアレント扱いされる。世の中は理不尽だ。
2017/09/29 11:57
これはギャグで言っているだけなので真に受けないでください。妖怪の両親はモンスターなペアレントではなくて、モンスターそのものという考え方もできますが、妖怪は基本的には平和を愛する大人しい種族ですので、まあわかるだろう? 本当に怒らせない限り心配はないんだよ。本当に怒らせなければな。
2017/09/29 11:58
それはさておき、金閣寺を見たのだから、今夜伏美に金閣寺の様子を伝えて、一日終了だな。
2017/09/29 12:00
うーん、確かに金閣寺見たけど、思ったほどではなかったよな。ショボかったというか、これが現実というものなのだろうか?
2017/09/29 20:00
何が現実という話もあるがな、あいにくと、広告で見ている観光地というのは、写真家の検閲が入っているからな。現実よりも立派に見える。おかしな話だがな。
2017/09/29 20:01
そんなにおかしいか? 人間の考えそうなことだと思うけれど。とはいっても、現実じゃない広告のほうが立派だなんて、まあ、確かにおかしいな。
2017/09/29 20:06
思ったより食いつきがいいな。この話は続ければ古代宗教がすでにこの話題をしていた、という話になってしまうぞ、いいか?
2017/09/29 20:06
別にいいんじゃないかな。古代エジプトの壁画に「近頃の若い者は」と書いてあったのみんな知ってるだろ?
2017/09/29 20:08
別にいいよ。それ以外に話すことなさそうだしな。
2017/09/29 20:09
現世の花より造花のほうが美しい、という話は聞いたことがあるか? そうだ、作り物のほうが美しいのだ。
2017/09/29 20:09
花より団子、かな?
2017/09/29 20:11
違うよ。
2017/09/29 20:11
違うぞ。確かにそういうとらえ方もあるがな、人間が好む華というのは、現実とは大きく異なっているのだ。
2017/09/29 20:12
花ではなく華。簡単に言えば見た目。芸術の世界の話。
2017/09/29 20:13
人間は悩みのない華やかな世界を夢見ているが、それは夢にすぎない。現実があまりにも過酷だから、せめて華を持たせようとする。それがいつのまにか華があるのが当たり前になり、気が付いたら華しかない現実離れしたものが生み出されていく。
2017/09/29 20:15
現実世界は穢れや泥にまみれているのに、人間はきれいなものを求めてしまうんだよなあ。
2017/09/29 20:17
じゃあ、それなりに汚れたものしか現実にはないのか? って考えると碧泉、お前って相当闇を抱えているんじゃないか?
2017/09/29 20:18
ふふふ、私は腹黒だぞーっ。
2017/09/29 20:20
碧泉はかわいく言ったつもりだったが、日々の大人らしさというのが逆に作用し、胡散臭さが前面に押し出てしまう。
2017/09/29 20:21
とはいえ、泥や穢れがない、きれいなだけの土では、大きな花が咲かないだろう? 少しくらい汚れた土のほうが養分豊富ともいえるし、穢れがあったほうが良かったりする。
2017/09/29 20:23
なかなかありがたい話だな。でも、人間であるからこそ理解できない話だよな。やっぱりきれいなほうを人間は好むだろうし。
2017/09/29 20:25
うまいこと言ってやったぜ、ドヤ! とはいえない。今回の内容は2500年前の文章のマルコピだからだ。
2017/09/29 20:32
なんやかんやで現実世界には泥がある、という感じで碧泉の話は終わった。
2017/10/22 14:10
浮世離れした、ある意味現実的な話だった。
2017/10/22 14:13
(うーん、碧泉、お前、もう少し気楽に構えたほうがいいと思うんだけどなあ)
2017/10/22 14:14
真面目な話しかしない碧泉を少しうるさく感じつつも、ありがたい存在であることに変わりはない。
2017/10/22 14:15
それに……、
2017/10/22 14:16
(さっきの腹黒だぞっ、が妙にかわいかったな。お茶目な部分をおあえて出したのだろうか? そういうの、信頼している相手にしかしないよね、こういうタイプ)
2017/10/22 14:16
なかなか碧泉への好感度が上がった瞬間だった。
2017/10/22 14:17
(碧泉、お前、俺に生きる方法をあれやこれや教えてくれるな。素直にありがたいと思うよ)
2017/10/22 14:22
今回はここまで。

次回に続きます。

2017/10/22 14:27
追記
2018/03/05 22:37
ここだけ閲覧数が顕著に伸びている。

特殊な生まれ方をしている、あるいは穢れに満ちた人生を歩んでいる人が多いんですかね。

2018/03/05 22:37
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

小峠瑞生(ことうげ ずいしょう)

自分が何の妖怪なのか思い出せないかばんちゃんポジション。

人間の特性を使って、謎を解決していく。

碧泉(あいぜん)

謎の女。

瑞生が誰なのか知らないけど、その素質を見抜いて利用している。

浮世離れが非常に深刻で、秋元康はAKBのメンバーだといまだに勘違いしている。

ナレーション。

突っ込み不在の世界に救いを。

地の文に革命を巻き起こすべく生み出された新兵器。

基本的に神視点だが、感情が高ぶると特定のキャラに肩入れする。

オールド

謎の女2

かつて日本の首領(ドン)だったが、部下が有能すぎて出番がなかった。

その部下を愛しさゆえに食べたところ、不死身になったと本人は言うが、大抵の人は信じない。

また、本人にグロ耐性がないので、この話題は避けたがる。

厩戸皇子(うまやどのおうじ)

時代と場所、年代によって呼び方が変わるややこしいひと。

オールドの部下、しかもいつも冷静で取り乱さない。できる人に見えるがただのサイコパスかもしれない。

オールドと1500年くらい前に謎の約束を交わしている。

実は1万円札にその顔が採用されたことがあり、俗世の人間は彼の顔を見ただけで興奮してしまう。年もばれる。

寂推カップチーノ(じゃくすいかっぷちーの)

オールドのメイド。手下。

多分1000年くらい存在しているが、明治維新文明開化後、頭の中お花畑な毎日を過ごしている。名前も常に前時代性を排除して新しいものに改名している。

種族は幽霊。

寂織伏美(じゃくおりふしみ)

種族、幽霊寄りだが例にもれずその他。

出身は尾張の国で相手を馬鹿にするとき『たわけ』という。

何百年も前に封印されて以来、目覚めの時を待っているが、現代の進みすぎた文明を前に、目覚めるに目覚められない。

久遠寺ルナ

種族 ある人は人間だと言い、ある人は死者という。ある人はゾンビだというし、ある人は解脱者だという。答えは藪の中。安定のその他。

作者がさぼっているのではなく、そこが話の主題なので安心してほしい。

天寺結姫(あまでら ゆいき)

種族 ネクロマンサー

ルナちゃんをゾンビに変えた張本人。

しかし、悪意があるわけではないようだ。

また、頭が悪く自然に会話していてもボケに回ってしまう。

伊早坂酒々井(いそざか しすい)

瑞生の過去を知る人物。

瑞生の姉を名乗っているし、瑞生の過去の日記をねつ造して瑞生を都合のいい方向にもっていこうとするが、瑞生の理解が早すぎるため、続きの執筆に追い立てられる。

名前はただのペンネームにすぎず、しかも登録されていないため本名はわからない。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色