殺された元偉い人の気持ち しかし、

文字数 3,622文字

9月15日更新

明日仕事なので本日投稿します。

お楽しみください。

2017/09/15 20:29
男はあの世の入り口で特に迷うことなく、目的の人がいるところまでたどり着けた。
2017/08/28 21:05
三途の川のようなところで鬼に事情を説明すると、二人組になっていた赤鬼と青鬼は「ああ、またか」といって男をターゲットのところまで案内してくれた。
2017/08/28 21:06
冥界といっても特に不気味な感じはなく、なんかみんなファンタジー生活でもしているかのように、その場に溶け込んでいた。死神も鬼も死者もそこでの生活が根付いているようにみえる。絶望がどこにもない平和なあの世。
2017/08/28 21:07
建物は少し自己主張の強い屋根のとがったものが多かったが、その軒下で生活している悪魔たちは、のんきにお茶を飲んでいた。ちらほら天使のような服装をしたやつもいるくらいで、どこも不気味ではない。
2017/08/31 06:04
死後訪れる楽園にしては少し雑だったが、死んでもないのに来れるのだからこのくらいの芸風が限界だろう。芸風と言ってしまえばそれまでだが、男の知識ではこれが一般的に言われているあの世とどう違うのか、さっぱりわからなかった。
2017/09/09 21:29
ちなみに赤鬼と青鬼はカンロ飴が好物だったらしく、たまに前回の飴屋に訪れると言っていた。
2017/08/28 21:08
(あの世緩いなあ、大丈夫かこれ?)
2017/08/28 21:09
しかし、自分が何の妖怪なのか知るために必要なこと。背に腹は代えられない。
2017/08/28 21:09
男は赤鬼と青鬼に案内されて、地獄の本部にありがちな、高級そうな建物に入っていく。他とは違って、明らかに何か潜んでいそうだ。
2017/08/28 21:10
その建物は厳重に警備された、いかにも刑務所のようなところだった。周囲は高い壁で囲まれており、その壁には『逃げることなど不可能!』と落書きされていた。それは芸術的に手の込んだフォントで、一見ただの芸術にしか見えなかったが、落書きは落書きだ。
2017/08/28 21:11
壁はコンクリート製で、一部に穴が開いており、そこから別の鬼に飴を渡して逃げていく罪人の姿があった。
2017/08/28 21:14
(あの世にも爆発しちゃう芸術家いるんですねえ)
2017/08/28 21:15
男は壁の内側に入り、その中の建物に目をやる。
2017/08/28 21:16
壁の中の建物は、屋根が飛び出て上に沿っている、いわば派手な作りで、壁は赤く塗装されていた。
2017/08/28 21:16
赤鬼が、趣味の悪い館だろ、といったので、青鬼がすかさず、お前もな、と仲良く漫才をやっていた。赤鬼は男を館の入り口近くの小さなテーブルで待たせると、館の中へ消えていった。
2017/08/31 06:11
(建物に入るんじゃないのか。まあ、あの中に入るよりはなあ。これから俺はどうなるんんだ?)
2017/08/28 21:17
やあ、君だね、推古からの遣いというのは。
2017/08/28 21:19
結構早いうちに別の男が現れた。相手を警戒させないようにと、自己紹介を始める。
2017/08/28 21:19
私は厩戸皇子(うまやどのみこ)っていうんだけど、通じるかな?
2017/08/28 21:20
誰?
2017/08/28 21:21
いや、どちら様ですか? 自分、記憶がないんで失礼なことをしてしまうかもしれないんですけど……。
2017/08/28 21:21
厩戸皇子は気にしないそぶりを見せて、男を椅子に座るよう、目線を送った。
2017/08/28 21:22
聖徳太子って言ったほうが通りはいいかな? 1500年前、推古様の下で政治をしていたんだ。
2017/08/31 06:14
まあ、まずはお茶でも飲もう。青鬼が持ってきてくれるだろうから。少し待とう。
2017/08/28 21:23
しばらくして青鬼が紅茶をもって現れた。ついでに持っている白い粉。どうやら塩ではないようだが、男はちょっと残念そう、通は塩。
2017/08/28 21:23
あの、それで本題いいですか?
2017/08/28 21:24
何となく、天気の話題をした後、男はそういって切り出した。
2017/08/28 21:25
推古天皇に殺されたって本当ですか?
2017/08/28 21:25
本当だよ。だって私が殺せと命じたのだからね。
2017/08/28 21:26
こいつただのバカでは? と男は思ったが、口にはしなかった。
2017/08/28 21:26
逆に、1500年前にオールドと厩戸皇子の間に何があったのか、それを知りたかった。
2017/08/28 21:27
どうして推古天皇に殺せと命令したんですか? 自分自身を?
2017/08/28 21:27
簡単な話だよ。あの頃は私も随分と体を弱らせていてね、もう役に立たないから殺してくれ、そうお願いしただけだ。
2017/08/28 21:28
あ、皆さん、体が弱ってたのはただの寿命ですからね。そこに陰謀はありませんよ?
2017/08/28 21:29
役に立たないから殺してくれって頼んでも、推古様は戸惑っていたよ。あんな感情、人間には不要だと思うのだがね。
2017/08/28 21:29
無駄にサイコパス。実際無駄かどうかはさておき、役に立たなくなったら自分を殺せという、それはあからさまに人間の持つ感情ではない。
2017/08/28 21:30
びしっと言ってやれ、主人公!
2017/08/28 21:31
そうですか、余裕がなかったのでしょうね、当時は。
2017/08/28 21:31
ええーっ!
2017/08/28 21:31
そう、余裕がなかったんだよ。かっこ悪い話ではあるんだがね。
2017/08/28 21:31
それで、俺が聞きたいのはここから先なんですけど、推古天皇に殺されたことをどう思っていますか?
2017/08/28 21:32
推古には、感謝している、そう伝えてくれ。
2017/08/28 21:32
だが、この話題はもう150回目だ。何度言われても、同じ答えしか返せない。
2017/08/28 21:33
まあ、こんな話をしても、推古様は納得しないんだがね。あの人も人情のある人だ。
2017/08/28 21:33
(違和感があるな。皇子、強がってる? 今はあの世生活だけど、普通殺されたら、相手のこと恨むよな?)
2017/08/28 21:34
恨んでなんていないよ、恨んでなんてね。
2017/08/28 21:36
この反応! 男は即座に察知する。
2017/08/28 21:37
(こいつツンデレだ!)
2017/08/28 21:37
そう、皇子はツンデレなのだ。簡単に恨んでいる、そう伝えればオールドも納得するのに、自分の中の何かにあらがって、感謝している、なんて言ってる。
2017/08/28 21:37
(余裕がないから殺せとかさ、この国ヤバいね。さておき、皇子を素直にさせてオールドに、恨んでいる、と言わせられないだろうか?)
2017/08/28 21:38
皇子、素直になってみてはどうかな?
2017/08/28 21:41
皇子は首を横に振る。
2017/08/28 21:41
いいや、感謝しているのは本当なんだ。信じてくれ。
2017/08/28 21:42
厩戸皇子、一応、オールド、というか推古からあなたに名前をもらうように、と言われているんですが?
2017/08/28 23:03
名前、そうだね、名前がほしいのかい。だったら『恨んでいない』で推古を納得させたら立派な名前を付けてやろうじゃないか。君はかっこいい名前がいいだろうな。
2017/08/28 23:06
すいません、それは気をそらすために言ったものなんですよねえ。本題はそこじゃなくて、本当に推古を恨んでいないんですか?
2017/08/28 23:06
むしろね、恨むというか、私が恨まれるのがものの因果というものだよ。推古様は私を恨んでいるだろう。殺してくれ、なんて願いを受けてしまったのだからね。残酷な決断をさせてしまった。
2017/08/28 23:07
あのすいません、このやり取り150回目らしいですけど、そのたびにお使いが雇われているんですかね? その所を詳しく……。
2017/08/28 23:09
違うよ、前までは推古様が自分の足でここに来ていたんだ。それも無駄とわかって君を向かわせたんだろう? おそらくは。違うかね?
2017/08/28 23:09
何もかもが違う。オールド、もとい推古は皇子に何度も会いに来ているんだ。この世界の緩さを利用して、死にもしないのにあの世へ出かけている。しかも149回も。
2017/08/28 23:10
こんなんじゃね、殺された恨みなんてなくて当然なんですよ。むしろ場違いなのはお前だぞ、主人公!
2017/08/28 23:11
(困ったな。この人意外と頭が固いぞ。だけど、オールドはオールドで、恨んでほしいのかな? 恨んでないって言われて今まで納得してないんだし、オールドの気持ちも考えたほうがいいんじゃないだろうか?)
2017/08/28 23:12
さて、今明かされる衝撃の真実だが、この辺で言っておかないと変な期待を寄せる人が現れるから言っておくよ。この謎は、ただの痴話げんかで、歴史的陰謀とか関係ないから、リラックスしてくれていい。
2017/08/28 23:13
1500年にわたる長き気持ちの行き違いでも、所詮はその程度のものだ。こんなもので世界が揺らぐわけがないからね。
2017/08/28 23:15
(しかしだなあ。オールドはこの行き違いで、本当に悩んでいるんだろうな。じゃなきゃ、149回も会いに来たりしないだろう)
2017/08/28 23:16
些細な問題かもしれないが、男はそれを軽視しなかった。男の種族の、その特性ゆえに。
2017/08/28 23:17
どうやらこの行き違いを解決するためにはオールドの気持ちも理解しなくてはいけない。そういう状態だった。
2017/08/28 23:18
(オールド、いや推古。お前、何を考えているんだ?)
2017/08/28 23:22
答え、単なる気まぐれ。推古と皇子の関係は成熟されきっていて、もはやこれ以上進展しない。
2017/08/29 22:33
しかし、置き去りにしてしまった問題が、これなのだ。皇子だって気にしないで推古には自由に生きてほしい、と思っているかもしれないが、あーやっぱそこがすんなりいかないのが現実なんですよねえ。
2017/08/29 22:34
(逆にね、どうして推古様はこんな話題に真剣なんだ? もうどうでもいいじゃないか)
2017/08/29 22:36
あほやろう、オールドもとい推古がお前に対して真剣なのになぜ気づかない?
2017/08/29 22:36
(時を超えた絆? いや、1500年はちょっと超えすぎじゃないか?)
2017/08/29 22:39
というか、オールド、いや推古はどうして生きてるの? 1500年前の話だろう?
2017/08/29 22:40
私の生き胆を食べて不死身になったからだ。不死身になった後彼女には、日本の永遠の王妃として君臨してもらおうと思ったんだが、なんかうまくいかなかったなあ。なんでだろう?
2017/08/29 22:40
答え、皇子が原因。人殺しが女帝なんてありえない、と推古は隠居しましたとさ。
2017/08/29 22:42
オールドの気持ちを知りたい男は、一度現世に戻ってオールドに話を聞くことにした。
2017/08/30 08:56
席を離れて、現世に帰る道を教えてもらって、その道をたどった。
2017/08/30 08:56
今回はここまでになります。

閲覧ありがとうございました。

次回更新は9月23日になります。

お待ちください。

2017/08/30 08:57
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登場人物紹介

小峠瑞生(ことうげ ずいしょう)

自分が何の妖怪なのか思い出せないかばんちゃんポジション。

人間の特性を使って、謎を解決していく。

碧泉(あいぜん)

謎の女。

瑞生が誰なのか知らないけど、その素質を見抜いて利用している。

浮世離れが非常に深刻で、秋元康はAKBのメンバーだといまだに勘違いしている。

ナレーション。

突っ込み不在の世界に救いを。

地の文に革命を巻き起こすべく生み出された新兵器。

基本的に神視点だが、感情が高ぶると特定のキャラに肩入れする。

オールド

謎の女2

かつて日本の首領(ドン)だったが、部下が有能すぎて出番がなかった。

その部下を愛しさゆえに食べたところ、不死身になったと本人は言うが、大抵の人は信じない。

また、本人にグロ耐性がないので、この話題は避けたがる。

厩戸皇子(うまやどのおうじ)

時代と場所、年代によって呼び方が変わるややこしいひと。

オールドの部下、しかもいつも冷静で取り乱さない。できる人に見えるがただのサイコパスかもしれない。

オールドと1500年くらい前に謎の約束を交わしている。

実は1万円札にその顔が採用されたことがあり、俗世の人間は彼の顔を見ただけで興奮してしまう。年もばれる。

寂推カップチーノ(じゃくすいかっぷちーの)

オールドのメイド。手下。

多分1000年くらい存在しているが、明治維新文明開化後、頭の中お花畑な毎日を過ごしている。名前も常に前時代性を排除して新しいものに改名している。

種族は幽霊。

寂織伏美(じゃくおりふしみ)

種族、幽霊寄りだが例にもれずその他。

出身は尾張の国で相手を馬鹿にするとき『たわけ』という。

何百年も前に封印されて以来、目覚めの時を待っているが、現代の進みすぎた文明を前に、目覚めるに目覚められない。

久遠寺ルナ

種族 ある人は人間だと言い、ある人は死者という。ある人はゾンビだというし、ある人は解脱者だという。答えは藪の中。安定のその他。

作者がさぼっているのではなく、そこが話の主題なので安心してほしい。

天寺結姫(あまでら ゆいき)

種族 ネクロマンサー

ルナちゃんをゾンビに変えた張本人。

しかし、悪意があるわけではないようだ。

また、頭が悪く自然に会話していてもボケに回ってしまう。

伊早坂酒々井(いそざか しすい)

瑞生の過去を知る人物。

瑞生の姉を名乗っているし、瑞生の過去の日記をねつ造して瑞生を都合のいい方向にもっていこうとするが、瑞生の理解が早すぎるため、続きの執筆に追い立てられる。

名前はただのペンネームにすぎず、しかも登録されていないため本名はわからない。

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