夢の中で
文字数 2,185文字
瑞生は迷いを抱えながら、夢の中の伏美ちゃんに会いに来た。
2017/11/14 09:35
いつもは伏美ちゃんが会いに来るのだが、今日は夢の中で瑞生が進んで伏美ちゃんを探した。
2017/11/14 09:36
自分自身の夢の中を探索するのは変な話だが、瑞生も3回それをやれば慣れてきてしまう。白い襖の空間を2、3部屋移動すれば伏美のいる場所にたどり着いてしまった。
2017/11/16 10:58
来たんだね、瑞生さん。私、まだ勇気が出ないわ。
2017/11/14 09:36
でも、いずれは出なきゃいけないだろう? この夢の中で永遠に過ごしていても意味がない。それはわかるだろう?
2017/11/14 09:36
分かっているつもりよ。私だって外の世界は見てみたいわ。他人の記憶からではなくて、自分の目で世界を見てみたいの。
2017/11/14 09:37
当たり前の話ですが、新しいことにチャレンジするとき、いつも勇気が足りないのは誰にでもあることです。妖怪特有の感覚ではありません。あしからず。
2017/11/14 09:37
ふぅん、だったらこういう提案はどうかな?
2017/11/14 09:38
俺も京都にやってきて間もないけど、俺が知ってるところを俺と一緒に歩こう。
2017/11/14 09:38
俺と一緒に体験しよう。一人だけだと怖いだろうから、一緒にやってみないか?
2017/11/14 09:39
悪くない提案ね。案内人がついてくれるのはありがたいことだわ。
2017/11/14 09:39
私のこと、瑞生さんに任せて大丈夫かしら?
2017/11/14 09:40
任せておけって。いくらでも頼っていいぞ。
2017/11/14 09:40
本当に頼っていいの? 迷惑じゃないかな?
2017/11/14 09:40
うーん、悲しいけど、俺、やることないよ? 別に暇だし、伏美ちゃんの相手くらいお安い御用というか。
2017/11/14 09:42
現役ニートなの?
2017/11/14 09:42
そういういい方やめろって。
2017/11/14 09:42
と記憶喪失で自分のことを知らないのだから、一週間程度で社会復帰できるか、というとそんなことはないのでニートでも当たり前である。
2017/11/14 09:43
まあ、頼もしいわね。瑞生さん優しいもの。そういう人が助けてくれるなら、私も知らない世界でやっていけそう。
2017/11/14 09:44
そう、じゃあ現実世界に来る?
2017/11/14 09:45
行くわ。そこで生きてみせる。しばらくは瑞生さんの力を借りて、だけど、瑞生さんなら大丈夫そう。
2017/11/14 09:45
おめでとう、瑞生は伏美からの信頼を勝ち取った。
2017/11/14 09:46
私、明日の朝、竜安寺に現れるわね。そこでまた会いましょう。
2017/11/14 09:50
迎えに来てくれる?
2017/11/14 09:52
わっかったよ。迎えに行ってやるって。
2017/11/14 09:52
それじゃあ、よろしくね。
2017/11/14 09:53
夢の中の空間から伏美がチリになって消え始めた。きっと、現世にその体が移動しているのだろう。
2017/11/14 09:53
完全に消えてなくなったとき、瑞生は目覚めようとしたが、いかんせん睡眠時間がまだまだ必要なのかなかなか目覚められない。
2017/11/14 09:53
目が覚めて部屋を移動したと思ったら布団の中にいるという夢中夢の無間ループにはまったが、そこはつまらないのでカット。
2017/11/14 09:54
瑞生は本当に目を覚ますと、いつものように碧泉がいないことに気づいた。
2017/11/16 10:59
部屋には自分しかいない。碧泉がいない。しかしながら、伏美との迎えに行くという約束は果たさなければいけない。
2017/11/16 11:00
(あのタクシーは今も来てるんだろうか?)
2017/11/16 11:01
疑心暗鬼になりながらも瑞生は宿の廊下を移動し、ロビーまでやってきた。案の定、いいや案外例のタクシーはいつものところにとまっていた。
2017/11/16 11:01
瑞生はタクシーに乗り込み、竜安寺まで行きたい、とドライバーに伝えると、ごく当たり前のようにタクシーが走り出した。
2017/11/16 11:02
今まで夢の中でしかあったことがない相手、というものに会いに行くのはとても不思議な気分だった。それも自分を頼って現実世界に来たというのだから、何もかもが変な話だ。
2017/11/16 11:03
(変な話か。どうせこの世界はその他が集まって成り立ってるんだ。変なんて、当たり前じゃないか。そういう事情を抱えた奴らしかいないのに、変なんて成立しないだろうな。すべてが変なんだ)
2017/11/16 11:03
うわー、こういうマジレスしてくる人迷惑だわー。
2017/11/16 11:05
(最初、なんて伝えればいいのかな? なにを言えば伏美ちゃんのためになるかな?)
2017/11/16 11:05
結論は出ない。しかしながら、タクシーは京都の北へ向かっており、目的地に到着するまでが制限時間になっている。赤信号で車が止まっている時間が増えろ増えろと念じるが、祈りなど通じない。
2017/11/16 11:06
しかも祈ればその分思考のメモリが食われて、今考えていることを妨害。
2017/11/16 11:08
難しい話ではない。お前らだってオフ会前は緊張するだろう? 瑞生が味わっているのもそれと同じ感覚で、むしろ普通。
2017/11/16 11:08
タクシーの運転手がエンジンを停止させ、目的地に到着したことを告げた。
2017/11/16 11:09
瑞生はタクシーを降り、竜安寺の参道を歩き始めた。
2017/11/16 11:10
朝早くの参拝なのか、他に人が誰もいない。神聖な場所として静まり返ったその寺を奥へ、奥へと進んでいく。
2017/11/16 11:10
参道の左に大きな池があるが、それが朝日を受けて光り輝いている。水面に浮かぶ華が純麗で、見事に水と調和していた。
2017/11/16 11:14
それは一種非現実的な光景で、今ここが夢の中だった、と言われても納得してしまうくらい。
2017/11/16 11:17
そしてもっと奥、建物の中まで入って、突き当りを左に。伏美はそこにある広間の縁側に座っていた。
2017/11/16 11:19
意外と早かったわね。私、もう少しこのお庭を眺めていたかったわ。
2017/11/16 11:23
伏美は始めて見る光景をとても気に入ったようで、もう少しこの場所にいたい、と意思表示。
2017/11/16 11:23
別に、見ていればいいじゃないか。どうせだったら俺もこれから適当なところで時間つぶしてくるし、見ていたいなら見ていればいいじゃないか。
2017/11/16 11:23
伏美は少し微笑んだ。そして冗談交じりに言う。
2017/11/16 11:24
嘘つき。瑞生さんが案内してくれるって言ったんでしょう? 私がこの場所をもう少し眺めていたい、っていうなら瑞生さんは付き合ってくれるんでしょう?
2017/11/16 11:25
まあそうだね。嘘はつかないよ。付き合ってやるって。
2017/11/16 11:25
ふふっ、ありがとう。
2017/11/16 11:26
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