冥界の主の証言

文字数 2,029文字

瑞生は六道珍皇寺の井戸から冥界へ降りた。
2017/12/29 17:58
余りにもすんなり入れるので、なんか不思議な感じはしないが、ともかく瑞生は冥界へ入った。
2017/12/29 17:58
冥界の井戸を出てすぐのところでジミヘンドリクスのイベントのチラシが落ちていた。どうやら、死んだところで芸術的業から逃れることはできないらしい。死んだ後もご苦労様である。
2017/12/29 17:59
瑞生はあの世の街道をゆき、地獄の市役所っぽいところに入っていく。
2017/12/29 18:02
門には確かに文献保管所、と書かれており、中に入ればいろいろな情報が手に入るという期待がわく。ネット世代からしてみれば情報が手に入るのは当たり前だが、あの世にはまだそういう技術がないのだろう。
2017/12/29 18:03
時代遅れだなあ。アーティストが死んでるならスティーブジョブスあたりも来てるだろ。技術もらえよ。
2017/12/29 21:24
そう愚痴りながらも瑞生はテクテクと規則的な歩みで建物に入っていく。
2017/12/29 21:25
建物の中は大量の書類であふれており、奥に行くほど日を浴びて茶色くなっている。どこまで続いているかわからない廊下は、確かにすべての情報を保管しておくのであれば無限の広さは欲しいところだ。
2017/12/29 21:29
しかし、調べようと思えばその人はその膨大さにやる気を失うだろう。
2017/12/29 21:30
やあ、どうしたんだい?
2017/12/29 21:26
厩戸皇子だ。こんなところで出くわすなんて、きっと運命のめぐりあわせか、シナリオ上でキャラ増やせないから、冥界ポジションとして登場しなくてはいけないかのどちらかだろう。
2017/12/29 21:26
とはいえ、文献の中から久遠寺ルナが死んだかどうかのチェックを行うなら、あの世の住人に意見をもらったほうが早い。
2017/12/29 21:27
えーと、最近死んだ人のリストがほしいんだけど、そこに久遠寺ルナっているかな?
2017/12/29 21:28
という質問を投げかけてみる。
2017/12/29 21:28
少し待っていたまえ。
2017/12/29 21:29
厩戸皇子は入り口付近に放置されていた一枚の紙を手に取る。
2017/12/29 21:31
これは大変だなあ。6000年ぐらい生きてようやく死んだ人がいる。こちらかかわいそうに、1年生きてないのに死んでしまった。命というのは不平等だなあ。
2017/12/29 21:32
とはいえ、今年は久遠寺家は死者を出していないようだね。30年ほど前に死んだ人ならいるだろうが、久遠寺ルナは死んでいないね。
2017/12/29 21:32
一応、棺桶には入ったようですが、それでも死んでないですか?
2017/12/29 21:33
死んだ後蘇ったにしても、あの世には必ず来る。ということは、その人は死んでいない、ということだ。仮死状態になったということもあり得ない。どうやら死を克服したようだな。
2017/12/29 21:33
あのすいません、あのすいません、そう簡単に死を克服して、俺が住んでる世界はサザエさん基準なの? 声優ですら死んでるのに……。
2017/12/29 21:34
アニメキャラのほうが寿命が長い、まるでお茶の間が神話をテレビで見ているような感じ。ドラえもんは天国に行けない。だって死なないんだから。生物じゃないから、という理由ではなく。
2017/12/29 21:35
ふーん、じゃあ死んでないならどうして棺に入ったんですかね? 医者はどういう診断をしたんだろう?
2017/12/29 21:36
生きるのをやめるのは、何も死ぬ時だけじゃない。人間は解脱できる。生きてるとか死んでるとか関係ない状態にもなれるからね。そっちじゃないかな?
2017/12/29 21:36
アバウトすぎる。生死の狭間のどんぶり勘定。しかし、厩戸皇子の意見はこれ以上ない。
2017/12/29 21:37
なんか、もっと正確なこと言えませんか?
2017/12/29 21:38
記録にない以上は、これ以上の言葉はないなあ。記録が万能、というつもりはないが、記録されていないんじゃ無能だ。とはいえ、死んだら必ずあの世に来る。そして記録されていないなら、死んでいないことになる。でも棺桶に入ったんだろう? そういう話になるなあ。
2017/12/29 21:40
すまん、意味がよく分からないんだけど……死んでるの? 生きてるの?
2017/12/29 21:41
シュレディンガーの猫は50パーセントの確率で生きていて、50パーセントの確率で生きている、という話かい?
2017/12/29 21:42
違うと思うけど、いいや、どうですかね? 生きてる死んでるがわからないなら、生死を超越してるってこと?
2017/12/29 21:42
死とか案外簡単に超越できるからね。そんな難しい話ではないよ。
2017/12/29 21:43
すまない、今の話は日本政府の教育委員会や文部科学省の前では言わないでくれ。子供が死ぬのにためらいを感じなくなる、とか、蘇生系魔法は禁じ手、とか言い始める。生きている人間はゲームみたいに墓地に送ったほうが強い、ということはないからね。
2017/12/29 21:44
この被害者が死んでるかどうか、という話題から始まるミステリーは、一体どこへ向かうか。
2017/12/29 21:46
まあ、あの世に出入りできるミステリーですよ。殺人事件なんて被害者に話を聞けば一発解決。わかりきった話ですね。
2017/12/29 21:49
うん、まあ久遠寺ルナが死んでないのは一つ覚えておくよ。生きているかどうかも怪しいけどね。
2017/12/29 21:50
納得はできないだろうけれど、そういうことだから。
2017/12/29 21:50
瑞生は一礼して文献保管庫を出る。
2017/12/29 21:51
ルナちゃんが死んでない、というのが確定しただけで収穫だが、そうなるとどうして棺桶が用意されたのか。ルナちゃんはどういう病気で入院していたのか。いろいろと謎である。
2018/01/04 09:33
厩戸皇子は、ルナちゃんが死を超越した存在になった、と言っているが、そんなファンタジーが存在するのか、瑞生にはもっと謎だった。
2018/01/04 09:34
今回はここまで。

次回をお楽しみに。

2018/01/04 09:35
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登場人物紹介

小峠瑞生(ことうげ ずいしょう)

自分が何の妖怪なのか思い出せないかばんちゃんポジション。

人間の特性を使って、謎を解決していく。

碧泉(あいぜん)

謎の女。

瑞生が誰なのか知らないけど、その素質を見抜いて利用している。

浮世離れが非常に深刻で、秋元康はAKBのメンバーだといまだに勘違いしている。

ナレーション。

突っ込み不在の世界に救いを。

地の文に革命を巻き起こすべく生み出された新兵器。

基本的に神視点だが、感情が高ぶると特定のキャラに肩入れする。

オールド

謎の女2

かつて日本の首領(ドン)だったが、部下が有能すぎて出番がなかった。

その部下を愛しさゆえに食べたところ、不死身になったと本人は言うが、大抵の人は信じない。

また、本人にグロ耐性がないので、この話題は避けたがる。

厩戸皇子(うまやどのおうじ)

時代と場所、年代によって呼び方が変わるややこしいひと。

オールドの部下、しかもいつも冷静で取り乱さない。できる人に見えるがただのサイコパスかもしれない。

オールドと1500年くらい前に謎の約束を交わしている。

実は1万円札にその顔が採用されたことがあり、俗世の人間は彼の顔を見ただけで興奮してしまう。年もばれる。

寂推カップチーノ(じゃくすいかっぷちーの)

オールドのメイド。手下。

多分1000年くらい存在しているが、明治維新文明開化後、頭の中お花畑な毎日を過ごしている。名前も常に前時代性を排除して新しいものに改名している。

種族は幽霊。

寂織伏美(じゃくおりふしみ)

種族、幽霊寄りだが例にもれずその他。

出身は尾張の国で相手を馬鹿にするとき『たわけ』という。

何百年も前に封印されて以来、目覚めの時を待っているが、現代の進みすぎた文明を前に、目覚めるに目覚められない。

久遠寺ルナ

種族 ある人は人間だと言い、ある人は死者という。ある人はゾンビだというし、ある人は解脱者だという。答えは藪の中。安定のその他。

作者がさぼっているのではなく、そこが話の主題なので安心してほしい。

天寺結姫(あまでら ゆいき)

種族 ネクロマンサー

ルナちゃんをゾンビに変えた張本人。

しかし、悪意があるわけではないようだ。

また、頭が悪く自然に会話していてもボケに回ってしまう。

伊早坂酒々井(いそざか しすい)

瑞生の過去を知る人物。

瑞生の姉を名乗っているし、瑞生の過去の日記をねつ造して瑞生を都合のいい方向にもっていこうとするが、瑞生の理解が早すぎるため、続きの執筆に追い立てられる。

名前はただのペンネームにすぎず、しかも登録されていないため本名はわからない。

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