六道参り

文字数 3,021文字

9月9日普通に仕事のため、前日に投稿します。

一足先にお楽しみください。

2017/09/08 22:45
そんな、1500年前の殺人事件を調べろって、証拠をどうやって集めるんだ? 冗談も休み休み言ってくれよ。
2017/08/27 22:02
そこまで深く調べる必要はないわ。だって犯人分かってるもの。
2017/08/27 22:02
犯人は推古天皇だ。
2017/08/27 22:04
あのさ、そういう歴史的な犯罪とかさ、考古学者にやらせておけばいいと思うんだよね。
2017/08/27 22:04
で、どうやって、何を調べるんだよ。俺も自分が何の妖怪なのか興味あるし、手伝ってみたいんだけど。
2017/08/27 22:06
殺された人の気持ちよ。自分が殺されたことに納得したのか、それとも推古天皇を恨んでいるのか、そのことを調べてちょうだい。
2017/08/27 22:07
無理な話だ。殺人事件の被害者に会う、という推理小説もびっくりな方法で事件を調べよう、というのはわかるが、どうやって死者に会うのか。
2017/08/27 22:07
そうね、じゃあその場所に行ってみましょうか。
2017/08/27 22:08
到着するころには日が落ちるわ。行きましょう。
2017/08/27 22:09
オールドはテーブルを立つと、早速例の場所へ向かった。それに男と碧泉もついていった。
2017/08/27 22:09
そして舞台は庭園から変わり、京都の東のほう、鴨川を渡って少し行ったところに移る。
2017/08/27 22:10
あたりは観光客(主に外人)でにぎわっていた。道を歩けば和服姿の欧米人がキャッキャウフフとSNSで自撮りして、世界中に情報を拡散していた。
2017/08/27 22:11
そういえば、俺は何と呼ばれていればいいんですかね?
2017/08/27 22:17
疑問に思うか? 仕方がないと思うが、今お前に名前をやるわけにはいかない。六道に下るには邪魔なものかもしれないからな。
2017/08/27 22:17
かもしれない、というのは、碧泉もその場所を通るのに必要なものを知らないからだ。名前がないほうがすんなりいく、という先入観ゆえの行動。実際どうなのか誰も知らない。
2017/08/27 22:18
名前、そうねえ、あなた、これから立派な人に会うのだから、その人につけてもらえばいいわ。きっと立派な名前になるわよ。
2017/08/27 22:19
名前が立派な意味ってあるか? というか、さっきから思ってたっけど、オールドって偽名だよな? そうだよな?
2017/08/27 22:19
よく気が付いたわね。確かにオールドは偽名よ。でも偽名というより芸名といったほうがいいかしらね? 本名は推古というの。
2017/08/27 22:20
(推古? どこかで聞いたことが? いや、気のせいか?)
2017/08/27 22:22
気のせいではない。さっき、碧泉が加害者の名前に推古を出していた。つまり、犯人はオールド。1500年前だけど。
2017/08/27 22:23
(なるほどなあ、犯人こいつか。もう1500年前の話らしいから深くは言わないけど、警戒するなっていうほうが無理だよな。だけど、信頼できる相手なのは確かだ。どういうわけかそれが俺にはわかる)
2017/08/27 22:25
一行は幽霊の看板を掲げた飴屋の前にたどり着いた。
2017/08/27 22:27
さて、詳しい話をこの辺でしておきましょうか。
2017/08/27 22:29
あなたにはこれからあの世に行ってもらいます。あの世に行って、殺された人の気持ちを聞いてきて。
2017/08/27 22:29
生きて戻ってこれるかな? いや、軽い冗談だけど。
2017/08/27 22:30
あの世に行くとなると、なかなか壮大な話なのかもしれないが、オールドの物腰が柔らかかったので、特に考えない男。とはいえ、あの世、つまり死というものに無警戒、そういうわけにはいかない。
2017/08/27 22:30
俺があの世に行って、どうやって戻ってくるんだ? 記憶喪失だけど、そういう話は分かるつもりだよ。
2017/08/27 22:32
簡単な話だ。ここに飴屋があるだろう。この飴であの世の住人を買収しろ。それで済む。
2017/08/27 22:32
バカじゃないの?
2017/08/27 22:34
私は馬鹿ではないぞ。
2017/08/27 22:34
お前のことじゃない。あの世の住人がだよ。なんで飴で買収されるの?
2017/08/27 22:35
じゃあ、クッキーで買収するのはどうかしら?
2017/08/27 22:35
それは無理だな、オールドよ。いざというときのために桃味の飴があったほうが心強いだろう? 最近はハッカのほうが辛いと言われているが、あの世の住人対策は万全にしておかなくては。
2017/08/27 22:36
襲われる前提なんですか?
2017/08/27 23:58
逆だ。襲われることはない。だが、あの世に歓迎されたら最後、わかるな?
2017/08/28 00:01
死ぬのか? 俺は死ぬのか?
2017/08/28 00:01
違うわ。あの世の住人に歓迎されたら最後、二度と来るんじゃないぞって追い返されるわ。
2017/08/28 00:01
じゃあ、どうして飴で買収するんですか?
2017/08/28 00:02
簡単な理由だ。お土産を持っていくのが、あたりさわりがないからだ。
2017/08/28 00:03
碧泉の頭の中はお花畑のようだった。妖怪ゆえの常識の歪みか、男の心配事をいまいち理解していない。
2017/08/28 00:03
逆に、男は自分が何を心配すればいいのか、それすらも分からなくなってきた。
2017/08/28 00:05
そんな男を放置して、碧泉は飴を買い、例の場所に向かう。
2017/08/28 00:13
また場面が映り、ここは六道珍皇寺、一般的にはただの寺だが、実は知る人ぞ知るあの世に通じる門がある土地だ。
2017/08/28 00:14
灯りはなく、隅に配置された無数のお地蔵さんが恐怖を煽り立てているが、碧泉もオールドも警戒していない、妖怪ゆえに。
2017/08/28 20:45
当然幽霊が現れそうな場所であり、夜になると誰も来ない、恐怖ゆえに。しかし、男と碧泉とオールドは平然とその場所に立っており、自分たちに違和感がないとか思ってやがる。
2017/08/28 00:15
寺に入っていくところを目撃した付近の住民は、関わりたくなさそうに男たちを無視した。違和感丸出しなのに早く気付いて。
2017/08/28 00:18
碧泉、そういえば飴は何を買ったの?
2017/08/28 00:19
カンロ飴だ。桃味はなくてな。現状これが限界だ。
2017/08/28 00:22
カンロ飴についての知識がない男は、その飴に興味を示す。
2017/08/28 00:22
ちょっと食べてみていいかな?
2017/08/28 00:22
いいだろう。一つならな。
2017/08/28 00:22
(うお、しょっぱい、でも甘い。なんだこれ? わけがわからない。そういえば、さっき碧泉が高級な塩は甘いって言ってた。あれと何か関係があるのか? この飴は相当高級な品)
2017/08/28 00:23
ごめん碧泉、疑って悪かった。
2017/08/28 00:24
高級な塩ってやっぱり甘いんだな。
2017/08/28 00:25
ははは、面白いことを言うな、お前は。やはり心に余裕があるな。
2017/08/28 00:26
いや、本当だってば。この飴、しょっぱいのに甘いぞ。高級な塩で作った飴なんだろう? なかなかいいものを頂いてしまったな。お礼も言っておくよ。ありがとう。
2017/08/28 11:06
カンロ飴を食べたことがある前提の話をしてしまって申し訳ないのだけれど、あの甘いとしょっぱいを両立する伝統芸能は素晴らしいものだと思う。
2017/08/28 11:08
さて、ここね。
2017/08/28 11:09
オールドは六道珍皇寺の小さな井戸の前で立ち止まる。
2017/08/28 11:10
その井戸にはふたがされていて、いかにも中に入ってはいけません、というオーラがビシビシ出ているが、オールドはためらいなくその蓋を取った。
2017/08/28 11:10
さ、ここからあの世に行けるわ。帰ってくるときは別の場所に出るけれど、そこには迎えを送っておくから。それじゃあよろしくね。
2017/08/28 11:11
分かったよ、じゃあ行ってくる。
2017/08/28 11:11
男は井戸に飛びこんだ。
2017/08/28 11:12
井戸の底で何かが別の世界に吸い込まれる音、風が強く吹き抜ける音がして、無事男は向こう側の世界へ行ったのだと、オールドはわかった。
2017/08/31 05:52
オールド、あいつの種族は何だと思う?
2017/08/31 11:27
そうねえ、彼、ここまで私たちがドッキリを仕掛けてるのに、全く驚かないものね。少なくとも、肝は据わっているみたい。人間でないのは確かね。
2017/08/31 11:27
面白くなってきたなあ。オールドも、長く生きていると退屈するだろう? ここで一つ賭けでもしないか?
2017/08/31 11:28
いいわよ。じゃあ私は彼が人間ではない、何かほかの妖怪、に500億円かけるわ。
2017/08/31 11:28
うーん、その条件だと、私が引かざるを得ないなあ。
2017/08/31 11:29
碧泉からはスタバのコーヒーだけでいいわ。
2017/08/31 11:30
和風ファンタジーを目指したいのに、オールドが現代に対応しすぎていて辛い。そして碧泉は!
2017/08/31 11:33
スターバックスコーヒーのことか? 私は豆茶が飲めないのだよ。緑茶か、紅茶が精々の限界だ。抹茶をたてる腕はいいつもりだがな。
2017/08/31 11:33
時代への対応をさも当然のように怠っていた……。
2017/08/31 11:38
今回はここまでになります。

閲覧ありがとうございました。

次回更新は9月16日です。

2017/08/31 11:40
小型あとがき。

今回出てきた飴屋と寺は実在します。

2017/09/09 21:50
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登場人物紹介

小峠瑞生(ことうげ ずいしょう)

自分が何の妖怪なのか思い出せないかばんちゃんポジション。

人間の特性を使って、謎を解決していく。

碧泉(あいぜん)

謎の女。

瑞生が誰なのか知らないけど、その素質を見抜いて利用している。

浮世離れが非常に深刻で、秋元康はAKBのメンバーだといまだに勘違いしている。

ナレーション。

突っ込み不在の世界に救いを。

地の文に革命を巻き起こすべく生み出された新兵器。

基本的に神視点だが、感情が高ぶると特定のキャラに肩入れする。

オールド

謎の女2

かつて日本の首領(ドン)だったが、部下が有能すぎて出番がなかった。

その部下を愛しさゆえに食べたところ、不死身になったと本人は言うが、大抵の人は信じない。

また、本人にグロ耐性がないので、この話題は避けたがる。

厩戸皇子(うまやどのおうじ)

時代と場所、年代によって呼び方が変わるややこしいひと。

オールドの部下、しかもいつも冷静で取り乱さない。できる人に見えるがただのサイコパスかもしれない。

オールドと1500年くらい前に謎の約束を交わしている。

実は1万円札にその顔が採用されたことがあり、俗世の人間は彼の顔を見ただけで興奮してしまう。年もばれる。

寂推カップチーノ(じゃくすいかっぷちーの)

オールドのメイド。手下。

多分1000年くらい存在しているが、明治維新文明開化後、頭の中お花畑な毎日を過ごしている。名前も常に前時代性を排除して新しいものに改名している。

種族は幽霊。

寂織伏美(じゃくおりふしみ)

種族、幽霊寄りだが例にもれずその他。

出身は尾張の国で相手を馬鹿にするとき『たわけ』という。

何百年も前に封印されて以来、目覚めの時を待っているが、現代の進みすぎた文明を前に、目覚めるに目覚められない。

久遠寺ルナ

種族 ある人は人間だと言い、ある人は死者という。ある人はゾンビだというし、ある人は解脱者だという。答えは藪の中。安定のその他。

作者がさぼっているのではなく、そこが話の主題なので安心してほしい。

天寺結姫(あまでら ゆいき)

種族 ネクロマンサー

ルナちゃんをゾンビに変えた張本人。

しかし、悪意があるわけではないようだ。

また、頭が悪く自然に会話していてもボケに回ってしまう。

伊早坂酒々井(いそざか しすい)

瑞生の過去を知る人物。

瑞生の姉を名乗っているし、瑞生の過去の日記をねつ造して瑞生を都合のいい方向にもっていこうとするが、瑞生の理解が早すぎるため、続きの執筆に追い立てられる。

名前はただのペンネームにすぎず、しかも登録されていないため本名はわからない。

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