ルナの正体、その経緯について

文字数 3,165文字

夕日が陰るころ、結姫は目を覚ました。
2018/01/26 09:23
あら? どうして私は眠っているのかしら?
2018/01/26 09:24
俺が眠らせたからだよ。
2018/01/26 09:24
瑞生は結姫が目覚めるまで枕元でじっと待っていたのだった。
2018/01/30 16:44
どうせほかにやることもないし、ひたすら待機していたのだ。
2018/01/30 16:45
一方ルナは夕飯の支度をすると言って台所に立ってしまった。種族不明、というかゾンビに近いやつに夕飯の支度をさせて、この家は大丈夫だろうか?
2018/01/30 16:45
むっ、お前っ! 一体なぜここがわかった?
2018/01/26 09:24
結姫は冗談っぽく瑞生がいることに反応して見せた。もともと悪意のない犯行だ。案外、加害者意識がないとびっくりする、ということはしないのかもしれなかった。
2018/01/30 16:46
まあ、それはどうでもいいですよ。一応、結姫さんに聞きたいことがありまして。
2018/01/26 09:25
そう、ルナちゃんについて、かしらね? 何となく予想はできるわ。
2018/01/26 09:25
結姫は瑞生がいる理由を、その鈍い頭でも理解することができた。ルナを追ってここまで来たのだろう、と。
2018/01/30 16:47
ルナちゃんを、どうして死の淵から呼び起こしたのですか?
2018/01/26 09:25
なるほど、もうそこまで知っているのね。死の淵から呼び起こすなんて言葉、知ってる人しか使わないだろうし。
2018/01/26 09:26
そうね、あなた……人はなぜ生きるのだと思う?
2018/01/26 09:26
そうですね、感動するためじゃないですかね?
2018/01/26 09:26
結姫は少し悩ませるつもりでそういったのだが、瑞生はすんなりと答えてみせた。
2018/01/30 16:48
私は、人は愛されるために生きているのだと思うわ。恋人であれ、家族であれ、ね。
2018/01/26 09:27
ルナちゃんは、お父さんからあまり愛されていなかったの。
2018/01/26 09:27
それで死んでいくなんてあんまりだ、と思って私はルナちゃんをああしたわ。
2018/01/26 09:27
お父さんに愛されていなかったんですか。それは、どういうことですかね?
2018/01/26 09:28
泉さんは、仕事が忙しくてね、それに、ドライな性格で、子供なんて愛していなかったのよ。そんな中での暮らしが、ルナちゃんの心を殺していったの。
2018/01/26 09:29
愛か……そういう理由でルナちゃんは種族不明になったのか。面白い話だが、色々と取り返しがつかない。
2018/01/26 09:30
延命といえば聞こえはいいのだが、種族を不明にしてまで生きる意味があるのか?
2018/01/30 16:48

ルナちゃんは病気で死んだ。でも私はルナちゃんに第2の人生を歩んでもらって、お父さんに愛してもらうつもりよ。ルナちゃんはお父さんにサプライズプレゼントを送って、喜ばせることによってお父さんに愛してもらうつもりらしいけれどね。

2018/01/26 09:31
そんな事情があったのか……。
2018/01/26 09:35
そう、そういう事情があるから、私はルナちゃんに手を貸しているの。瑞生さん、あなたは協力してくれるかしら?
2018/01/26 09:35
あのさ、やっぱりお父さんに愛されてないと、子供は寂しいのかな?
2018/01/26 09:36
そうね、私は愛されていたから知識としてしか知らないけれど、とても寂しいことのはずよ。人間なら耐えられないほどね。
2018/01/26 09:36
瑞生は迷った。
2018/01/26 09:37
確かに結姫のやっていることは犯罪である。一種の誘拐のようなものだ。しかしながら、その目的に不純物はない。協力してやってもいいのではないか……。
2018/01/26 09:37
だが、それなりに強い動機を結姫は持っているようだった。愛されていなかった、程度の理由だが、心が動くには十分な理由だ。特にルナのような子供はそうだろう。
2018/01/30 16:49
あのー、というか結姫さんはどういうスキルをお持ちなんですか? ルナちゃんをどうやってよみがえらせたか、とか気になっているんですけど……。
2018/01/30 16:50
そうねえ、死者蘇生ぐらい、勉強すればだれでもできるようになるけれど、ネクロマンサー、という表現が一番近いかしらね? ほかにもいろいろできるけれど、今はその認識で構わないわ。
2018/01/30 16:51
それって儲かるの?
2018/01/30 16:52
鋭い質問ね。ネクロマンサーでお金を稼ぐと、法律的には色々とデンジャラスなのよ。当然私も普通の仕事をいつもはしながら、ネクロマンサーをやっているわ。
2018/01/30 16:52
あーあ、ネット作家よりは安定した暮らしだな。作者もネクロマンサーになろうかな。
2018/01/30 16:54
で、ルナちゃんがお父さんに愛されるために、あなたは協力してくれるの?
2018/01/30 16:55
協力というか、自分はルナちゃんのお父さんにルナちゃんを探して来いって言われている部分があるので、最終的にお父さんに会えればそれでいいというか……。
2018/01/30 16:55
ふぅん、協力してくれる、という意味でいいかしら?
2018/01/30 16:56
瑞生は少し迷ってスマホを取り出す。そしてオールドに連絡を入れてみる。
2018/01/30 16:57
あ、もしもし、オールド? ルナちゃん見つけたけど、なんかお父さんに愛されないから、拗ねてるみたい。子供の家出みたいな感じだけど、どうする? この場で捕まえようか、それとも放っておく?
2018/01/30 16:58
家出かあ……、よくあるわねえ。泉さん、ルナちゃんは家出してるみたいよ。そうそう、そんな感じ。危なくはないみたい。もうじき帰ってくると思うわ。
2018/01/30 16:58
どうやら隣に泉がいるようだった。哀れ、結姫の作戦情報は駄々洩れになってしまった。
2018/01/30 17:00
というか、これって久遠寺家の問題であって、自分の問題じゃないですよね。探すだけ探しましたけど、これ以上は責任もてないというか……。
2018/01/30 17:00
その後、少し通話して終了。ルナちゃんはもうすぐお父さんが迎えに来るとのことだった。
2018/01/30 17:01
あら、協力してくれないの? 残念ねえ。ルナちゃんはもうすぐお父さんとご対面か。
2018/01/30 17:02
そうだね。残念でした、この世は所詮大人の事情が勝つんです。常識だねえ。
2018/01/30 17:02
とはいえ、どうだろうな、愛がないという問題は小さくはない、しかしながら大きく扱いのはばかばかしい。でも無視できない。
2018/01/30 17:03
お父さんがもうすぐ迎えに来る、というのならルナちゃんの失踪は無事解決だが、本当に解決か? お父さんが愛してくれない問題は、置き去りになっていないだろうか?
2018/01/30 17:04
瑞生さん、ルナちゃんの家庭の問題、見て見ぬふりをするのかしら?
2018/01/30 17:05
わからない。いろいろありすぎて頭が混乱してる。ルナちゃんが死んでないだとか、ネクロマンサーが現れただとか、失踪しただとか、それが見つかって終了っていうのもわけがわからないし、俺もどうしていいのかわからない。
2018/01/30 17:07
ふぅん、あなたはつまらない男ねえ。さっき、人は何のために生きるか、という話をしたけれど、あれにあなたは感動するため、と答えたわね。私は愛されるためだと思うけれど、あなたは親子関係に感動したりしないのかしら?
2018/01/30 17:09
親子関係……瑞生は理解できないだろう。そういえば、瑞生は自分の親が誰なのか知らないからだ。それゆえに、ルナちゃんが愛されないから悲しい、という感覚もいまいち理解できない。
2018/01/30 17:10
理解できない、とはいえ、想像することはできる。愛されていない、というのがどういうことなのか。
2018/01/30 17:11
(想像でしかない感覚で動いていいのだろうか? それこそ、心の入っていない言動にならないだろうか。これから俺が言う言葉に説得力はあるのか?)
2018/01/30 17:12
というか、ここ数日ルナちゃんを探して、結局は家族愛、なんていう課題に納得したくなかった。
2018/01/30 17:12
瑞生の期待としては、もっと大きな何かを望んでいたのだが、たったこれだけしか課題がない。家族愛という、まるで日常系そのもののような光景に、瑞生は言葉を失う。
2018/01/30 17:16
瑞生、種族だとかファンタジーだとか、近未来だとか異世界だとか、そういう次元の壁や認識の壁を一つ乗り越えると違った世界が見えてくる、なんていうのは嘘なんだ。そこにはその世界の日常がある。瑞生の冒険心は空振りした。
2018/01/30 17:17
ヤゴコロジック特有の納得しにくい終わり方発動中。
2018/01/30 17:19
(終わり方、か。納得できないけれど、これが現実なんだな。受け入れたうえで、どうするべきか考えないと。そうじゃないと、頭が働いている意味がない)
2018/01/30 17:20
結姫さん、ルナちゃん、今夕飯の支度をしてるんですよね? それって何人分作っているんですか?
2018/01/30 17:20
私は知らないわ。だけど、釜のごはんならもともとたくさん作るものだから、瑞生さんが食べる分はあるかもね。今晩はうちで食べていくかしら?
2018/01/30 17:22
遠慮しておきますよ。それ、泉さんに食べさせてあげてください。娘が作ったごはん、嬉しいはずでしょう?
2018/01/30 17:23
そうね、それがいいかもね。ナイスアイディアじゃない。月並みだけれどね。
2018/01/30 17:24
次回に続きます。
2018/02/02 09:48
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登場人物紹介

小峠瑞生(ことうげ ずいしょう)

自分が何の妖怪なのか思い出せないかばんちゃんポジション。

人間の特性を使って、謎を解決していく。

碧泉(あいぜん)

謎の女。

瑞生が誰なのか知らないけど、その素質を見抜いて利用している。

浮世離れが非常に深刻で、秋元康はAKBのメンバーだといまだに勘違いしている。

ナレーション。

突っ込み不在の世界に救いを。

地の文に革命を巻き起こすべく生み出された新兵器。

基本的に神視点だが、感情が高ぶると特定のキャラに肩入れする。

オールド

謎の女2

かつて日本の首領(ドン)だったが、部下が有能すぎて出番がなかった。

その部下を愛しさゆえに食べたところ、不死身になったと本人は言うが、大抵の人は信じない。

また、本人にグロ耐性がないので、この話題は避けたがる。

厩戸皇子(うまやどのおうじ)

時代と場所、年代によって呼び方が変わるややこしいひと。

オールドの部下、しかもいつも冷静で取り乱さない。できる人に見えるがただのサイコパスかもしれない。

オールドと1500年くらい前に謎の約束を交わしている。

実は1万円札にその顔が採用されたことがあり、俗世の人間は彼の顔を見ただけで興奮してしまう。年もばれる。

寂推カップチーノ(じゃくすいかっぷちーの)

オールドのメイド。手下。

多分1000年くらい存在しているが、明治維新文明開化後、頭の中お花畑な毎日を過ごしている。名前も常に前時代性を排除して新しいものに改名している。

種族は幽霊。

寂織伏美(じゃくおりふしみ)

種族、幽霊寄りだが例にもれずその他。

出身は尾張の国で相手を馬鹿にするとき『たわけ』という。

何百年も前に封印されて以来、目覚めの時を待っているが、現代の進みすぎた文明を前に、目覚めるに目覚められない。

久遠寺ルナ

種族 ある人は人間だと言い、ある人は死者という。ある人はゾンビだというし、ある人は解脱者だという。答えは藪の中。安定のその他。

作者がさぼっているのではなく、そこが話の主題なので安心してほしい。

天寺結姫(あまでら ゆいき)

種族 ネクロマンサー

ルナちゃんをゾンビに変えた張本人。

しかし、悪意があるわけではないようだ。

また、頭が悪く自然に会話していてもボケに回ってしまう。

伊早坂酒々井(いそざか しすい)

瑞生の過去を知る人物。

瑞生の姉を名乗っているし、瑞生の過去の日記をねつ造して瑞生を都合のいい方向にもっていこうとするが、瑞生の理解が早すぎるため、続きの執筆に追い立てられる。

名前はただのペンネームにすぎず、しかも登録されていないため本名はわからない。

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