(一)

文字数 918文字

 あの後、私は気絶してしまっていたらしく、近くの病院に寝かされていた。その間に例の高校生擬きが、ペラペラと真相を話したらしく。社長以下が黙秘しようとしたのだが、全く功を奏さなかった。ちなみにペラペラと口を割ったのは男子高校生擬きの方で、女子高校生擬きはずっと、しらばくれていたとのことである。
 私はと云うと、その男子高校生擬きのお蔭で、警察からは簡単な事情聴取で済んだ。しかし、それからが大変だった。
 親がやって来たかと思うと、「娘がご迷惑掛けました」と相手かまわず謝りまくって、私に半日近くもの間、お説教をし続けたのだ。もう私は完全に加害者扱いだ。
 それから学校からは、担任、学年主任、校長などが次々と現れ、最初は私をいたわるような事を言っておきながら、最後は説教になっている。これを皆が皆、同じ様に繰り返すのだ。それだけならまだしも、生徒代表とか言って、訳の分からない奴がやってきて、「みんなから」とか言って花と色紙を持ってきた。
「早く良くなって、学校に戻ってきてください。みんな待ってます」って、私は病人か!
 見舞いに来た中で一番まともだったのが田中文枝だった。
「何やってんだ、ばーか」
「うっせえなぁ、仕方ないだろ、場の勢いってやつだよ」
「ほんと、お前見てると飽きねえよなぁー」
 文枝はベッドで寝ている私の脇に腰掛けながら、馬鹿にして笑っていやがった。
「見舞いに来てやったんだ、感謝しろよ」
「しかたねぇなあ、一番安いもんじゃ焼き半分奢ってやるぜ」
「うわー! ケチ臭え!」

 そんなこんなで、二日が過ぎた。意識を取り戻した私は、早々に退院し、翌日からは学校に復帰している。そこでまた、担任、学年主任、校長に退院の挨拶をし、例の生徒代表を見つけてお礼の挨拶をした。
 この面倒臭さは、本当に私を閉口させた。もう二度とこんなことはしない。あそこで撮影されたとしても、ここまで私は反省しなかったんじゃないだろうか? 流石にそれはないと思うが、そんな事すら頭に浮かぶくらい本当にうざかった。
 この面倒と奇異の目から解放されたのが、略一週間後。その日、前日に貯金を全て下ろし、私は全財産を手にして登校したのだった。
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