(三)

文字数 994文字

「あんたが私と対等になろうなんて、十年早いわ!」
 で、でも、たった十年でいいんだ……。
「ええ、そうよ。十年経ったら、あなたも一人前の女性。社会にも出ている筈よ。そうなったら対等の立場で付き合うわ。その時は、勘定は割り勘ね。それまでは奢られなさい! ほら、座って!」
 私は、耀子さんの言われるまま、向かいの席の腰かけた。
「あのー、私、もう藤沢君とは付き合っていないんです。それなのに……」
「私は、私があなたを好きで奢ってんの。息子の機嫌取ろうなんて少しも思ってないからね。だから晶ちゃんが修一とどうであろうと関係ないの。私はむしろ、二人は別れて良かったんじゃないかと思ってるのよ」
「え?」
「あなたたち、異性と付き合おうと思うのなら、二人とも、もう少し大人にならないとね。今のままだと、誰と付き合っても、きっと喧嘩別れになるわね」
 私には何も言えない。私自身、そんな気がする。
「でもね、あなたたち結構良いコンビなのよ。割れ鍋に綴じ蓋ってね。他人事ながら、このまま別れちゃうのは、少し勿体ない気がする。どう、もう一度、やり直しデートして見たら?」
「でも……、どうせまた、上手くいかないし……」
「そうかもね。今のままなら。でね、デートは六年後の最初のデートと同じ日なんて、どうかしら? 同じ場所で、同じ時間、結構ロマンチックじゃない? その頃には二人とも少しは大人になっていると思うわよ。で、良ければ修一にも話しておくけど……。あいつ、晶ちゃんに未練たらたらだから」
「六年後ですか……、その頃には、修一君、彼女が出来ているんじゃないですか? 私なんかより、ずっと素敵な……」
「二人とも、もう恋人が出来ていたら、来なければいいのよ。その時は、お互いに相手を祝福すればいいだけでしょう? それ位出来るわよね?」
「そうですね……」
「でもね、この二人には付き合ってくれる相手なんて、絶対、他じゃ見つからないと思うけどね」
 それはそうかも知れないけど……、耀子さん、少し失礼!
 丁度、その時私たちのテーブルに、4つのチーズのピザがやって来た。
「どうぞ、晶ちゃんの分ね。ここはリストランテの癖に、ピッツエリアみたいにピッツァまで出すのよ。それもナイフとフォークも無しに……」
 私、こんなの頼んだっけ? でも、いいわ。私はそのピザを、二切れ重ねて思いっきり一口に頬張った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み