第30話 マリアとメドューサの思い出2(テンリュウ)

文字数 2,968文字

 彼らの目的はまだあった。ゴセイの飛び地の領地の一つに、ドラゴンが封印されているという話しが伝わってきたことと、比較的少数の魔族がやって来て住み始めているという知らせを聞いたからだった。
 不思議なことに、何故か封印されている場所を二匹の巨大なドラゴンが守っているということだった。その場所まで行くと、直ぐにドラゴンが人間の臭い(一人は魔族、もう一人は神だが)を嗅ぎつけたのか、3人の上に現れた。威嚇するように大きなほえ声を上げた。生臭い、強烈な風のような息が吹き付けられた。見たところ、普通の剣や矢どこらか、格の低い聖剣、魔剣の類いでは、その皮すら貫くことすら出来そうにもなかった。
「高度な知恵のある奴ではありませんわね。下級の、力だけはある奴が、魔法でこのように作り変えられた奴でしょうか。」
 首をひねった。
「何のためだろうな、奴らがいるのは?」
 ゴセイも分かりかねていた。
「復活させたくないんだろ。復活させてみればわかるさ。早く行こうよ。」
 メドューサは気軽に言ってのけた。
「ああ、そうだな。2人で一匹づつやってくれ。先に行くから、後から追いかけて来てくれ。」
メドゥーサとマリアは、“自分一人で十分!”という顔だったが、競うように飛び上がった。ゴセイは苦笑しながら、歩み始めた。直ぐに、土人形のような人間より大きいくらいのドラゴンが現れた、幾体も現れた。背の超長剣をすぅーと抜いた。
 12体目を突きで砕いた時に、2人が争うように追いついて来た。残りは、彼らが火球で一掃してしまった。
「もっと残しておいてくれよ~。」
 メドューサが、不平を言いながら、抱きついてきた。マリアが、慌てて引き離そうとしながら、
「まだ先は長そうですわ。色々出てきそうですわ。いえ、もうでてきましたわ。」
 マリアの言葉どおり、何かが近づいてきた。森の道を、次々襲ってくる連中を倒しながら進むことになった。すると、岩山のようなところに出た。其処には、いかにもというように、洞穴があった。当然のように入り、ある程度、トラップや襲ってくるものを倒した後、引き返して外に出た。そして、メドューサとマリアが穴が塞がらないように魔法で、魔法のカラクリを壊した。それを何度か繰り返した。最後に、巨大なドラゴンが固まるように横たわっていた。
「おい。封印を解いて助けてやる。」
 ゴセイが語りかけた。直ぐに、頭の中に反応があった。
“危険だぞ。やめておいた方がよい。”
「気にするな。私なら解ける、それだけだ。」
“そこまで言うなら、やってみるがいい。上手くいけば、一つ願いをかなえてやる。”
「ふん、そんなのはいらない。欲しいものは手に入る。」
「??」
 彼がドラゴンに触ると、雷のような電撃が落ち、炎が覆い、冷気が吹き付けてきた。その全てが消えてしまうとドラゴンは起き上がった。
「礼はいらないと言ったな。我は行くぞ、ではさらばだ。」
「お前はこのままでは大きすぎる。それに食事が大変そうだ。小さくなれるか。」
「なにを言っているのだ?」
 そう言いながら、ドラゴンは大柄で、褐色肌の栗色の髪の女になって立っていた。
「センリュウ。どうして、お前は封印されたのだ?」
「何だ、センリュウとは?我の名は別に…。」
 彼女は、身の上話しを始めた。彼女は高次元最強のドラゴンだった。彼女を疎む、他の高次元のドラゴン達のだまし討ちにあい、傷ついて動けなくなったところで封印されたと言うのである。
「我を殺すまでには至らなかったのだろうな。そして、長い封印の後、力の大半を失った我を、簡単に殺せると考えたのかもな。気の長いことだ。」
 今は、はっきり言葉を発していた。
「それで、これから如何するつもりだ?直ぐ復讐に向かうか?」
「さすがにかつての力はない、見る影もないほどにな。まあ、下界の下等なドラゴン共相手なら、無敵だろうがな。しばらく力を蓄えてから、高次元に向けて攻め入ってやるさ。礼を言う。何も望まぬというのだから、これで。」
 ゴセイは最後まで言わさず、
「巨体では連れて歩けないし、目立って困るな。それに、食べる量がが心配だ。その小さい体のままでいられるか?その体は、体の大きさに比例して小食になっているか?」
 よく分からないが、彼女は多分不快にだろうと思われるように、顔を歪めた。
「何を言っている?もう…。」
 そう言いながらも、そのままでいられること、今の力ではこちらの方が力の消耗が少ないこと、体に比例して食事量は少なくてすむし、元々高次元のドラゴンは体の大きさから見れば、かなりの小食だと説明した。
「何だ、どういうことだ?」
 そんな自分に、驚く相手に、
「お前は雌、女だったか。衣服付きとは、感心だ、センリュウ。ここに持っていった方がいい物があるか?あれば、それを持って出発するぞ。」
「そんなものはない、いや、そんなことではない、我の名前は…そんなことではない、お前、我に何をした?」
 狼狽える彼女に、悪戯っぽく笑い、
「私がつけた名前だ。なければ行くぞ、この世を恐怖と力で支配するために。高次元のドラゴン達も含めることにしてやるが。」
 さっさと、背を向けて歩き始めると、女の子たちが2人、彼に左右から追いかけてきて、
「まさか、ドラゴンともやるつもりではないでしょうね!」
「この変態!ドラゴンともやるつもりか?」
「あんな姿を見たら、やる気は失せる。それに、3人しか枠はないし、それは変えるつもりはないと言っただろう。」
 2人は、まだ疑わしいという顔をしていたが、彼の腕を取って自分の腕を絡ませた。
「おい。お前が礼はいらないと言うなら、もう関係はない。我は去るぞ。」
と言いながら、センリュウは彼の後を徒歩でついてきた。その表情には当惑の色がはいっていた。山を降りると、人間達、亜人達も半ばを占めていた、総数50人ばかりの一団だった。お宝探しの連中だ。降りてきたのを見て、取れるものなら取っておこうというのだろう、とゴセイ達は当然考えた。案の定、
「ドラゴンのお宝を置いていってもらおうか?」
 リーダー格らしい、巨体の獣人とのハーフらしい男が下卑た笑いを浮かべてい言った。身分を言って、下がらせるかとも思ったが、確実に退くとも限らない。それならばと、
「センリュウ。」
 ゴセイが振り返った。取り敢えず、力を試してみようと思った。
「やってみるか?」
 何も言わずに、センリュウは飛び出した。勝負は、少し時間がかかったが、返り血を浴びて立っているのはセンリュウだけだった。
「まあ、封印解除した直後でこれだけやれれば、まあ合格点といったところ
だな。」
 センリュウは憤然としていた。
「お前。我に何をした?」
「聞き漏らしたが、食べ物はどういうものなのだ?人間の食べ物で大丈夫か?何か特殊なものか?」
 質問に答えようとしないゴセイに怒りを爆発するはずなのに、
「いや、人間のものでも大丈夫だろう。それで、何かが不足することはない。高次元のドラゴンの食事は、特殊なものもあるが、それがなければならないというわけではないし、この体なら、人間の食べ物が調度いいだろう、かえって。」
 彼の質問に答えてしまい、唖然としてしまった。
「それならいい。早く元の力を回復させて、恐怖と力で支配することに協力してもらうからな。」
「お前は…何なんだ?」
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