第14話 メドューサの思い出1

文字数 2,699文字

 「こんな奴らが、魔王?この程度の実力で?」
 メドューサは、嘲笑うように倒れている魔族達を見下ろしていた。あまりのことに立ち尽くしていたマーガレットとシルビアは、ゴセイとともに駆けつけて来たマリアに、いきなり槍で身体を貫かれた。
「お前といると、本当にもめ事ばかりに巻き込まれるな。」
 森の中で、満月と満天の星空の下で、裸の身体を並べて、荒い息と快感の余韻にひたりながら、メドューサが悪態をついた。
「お前が原因だろう。まあ、半分以上は仕方がないとはいえるが。」
 隣で、やはりあお向けになっているゴセイが反論した。
「それで、満足したのか?」
「とってもよかった…じゃなくて、お前が不能でないことだけは、よ~くわかったよ。」
 この日、三百人の人間、亜人を相手に戦った。何故そうなったかというと、町に着いて宿の酒場で食事をとりながら酒を飲んでいると、メドューサに、男が声をかけてきた。ゴセイには、売春婦と直ぐ分かる女がよってきた。強引に、誘う男の腕を握りつぶし、
「こんな臭い女なんて、ほっといてさ、あたいとさ。」
と言った女を吹っ飛ばした。
「こいつは、臭い女が好きな変態なんだよ。」
 その後、そいつらの関係者やらが、襲って来た。それを撃退すると、…が繰り返し、だんだんと拡大して、町を出たところで、300人以上の男女の人間、亜人に取り囲まれることになったのである。ここまでになったのは初めてだった。用心のため、メドューサは、初めは力を押さえつつ、目の前の連中を一人づつ倒し、危なくなったらいつでも逃げられるようにして戦い、ゴセイは一人で敵の中に突っ込んでいった。“本当に、あいつはどんどん強くなっていくな。”と彼女は戦いながら思った。彼の進むところ、死体の山ができた。それでも、聖剣を持った男女に剣を折られ、数人の魔道士達も加わった火球やら、雷電玉の連続攻撃に倒れ、氷付けにされたところを、爆裂魔法を食らい、聖剣で切り裂かれ、その後は本当に切り刻まれ、それはひどく嗜虐的なやり方だった、それで死んだ仲間の恨みを晴らそうとするように。最後は聖剣の力で、本当にぐちゃぐちゃにされた。“こいつらは、勇者のチームだったんじゃないのか?世も末だな。”
「お前さんの男は、もう終わったな。」
 目の前の女が言った。聖剣を持った男の唇が、
「最早、再生は不可能だ。」
と言っているようだったが、彼女も半ば同感、さすがに逃げようかと思った。その目に、その勇者崩れの男の後ろから羽交い締めにして、何本もの雷を落とすゴセイの姿が映った。聖剣を奪った彼は、また縦横無尽に暴れ回った。三分の一程度になった時、メドューサも力を全開にして暴れ始めた。最後は、何人かを残して皆殺しにした、ご丁寧にしっかりとどめを刺した。彼の殺され方が流石に酷すぎて、“身体は大丈夫でも、心は大丈夫なのかい?僕の体を求めないのは、したくてもできないんじゃないのかい?”とさすがに思ったほどだった。二人で野営して、食事が終わり寝ようとする時に、もじもじしながらメドューサがゴセイにすり寄ってきた。
「別に、お前に惚れたわけではないぞ。お前がちゃんと、やれるのかどうか調べたいだけなんだからな。」
 唇を重ね、撫で回され、なめ回されて、4回、彼の機能が大丈夫であることを、快感で大声で喘ぎ声を出し、激しく動き、確認した。
「試しただけだからな。もう、終わりだからな。」
「別にいいさ。残念ではあるがな、いい身体だったからな。」
 彼は笑いながら、スープをすすった。
「当たり前だよ。まあ、お前との旅が面白いとは思っているよ。」
 仕事での報酬、殺した連中からの戦利品を売って得た収入、それをゴセイの手下の商人に預けながら、旅を続けていた。彼は助けた連中を、手下にしていった。というより、彼に命を、いや、何かしら助けられたら、そして、彼が望むなら、彼らは彼に絶対逆らえない下僕になるのだ。このとんでもない関係に自分もあるということに気がついた。自分がそういう関係にあることに気づいて、他の連中もそうだということに気が付いたというほうが正確かもしれない。
「あいつもそうだったのかい?」
 ポーラン帝国首都ライプの酒場でワインを飲みながら、メドューサが睨みながら罵るように尋ねた。
 同様にワインを飲んでいたゴセイは、
「私が望めば、自動的になるからな。ただ、あいつは命令するまでもなく、喜喜として共に戦ったがな。」
「ふん。あんな破壊魔のサディストみたいな奴と一緒にするなよな。」
 何故か、自分から言い出して悔しさを感じて、メドューサはプイッ横を向いた。その時、
「お楽しみのところ、申し訳ないな。一寸いいかい?」
 ベテランの傭兵と思われる、大柄な男がやってきた。そして、返事も待たずに、
「どうだ、俺の隊に入らないか?帝国の兵士の募集に応じようときたんだろ?2時間前に、あのアマゾネスどもを、瞬殺したのをみたんだよ。あの強さに惚れちまったというわけなんだよ。ほら。」
 オーガや魔族との血が入っているような連中だった。奴らが追っていた魔獣を二人が勝手に殺した、そして死骸を売ったことに文句を言ってきたのである。
「表に出ろ!」
 剣にも、魔法にも耐えられると自信をもって思っていたようだが、二人に瞬殺された。
「副隊長格で入ってもらうがどうだ?報酬は隊長格でだ。隊に入った方が手柄を立てやすいぜ。どうだい?」
 にやにやと笑いながら、回答を求めてきた。
「いい話ですね。ただ、妹と話し合ってから、ご返事したいので、明日の朝、また、ここに来ていただけませんか?」
 男は、メドューサの顔も見て、舌なめずりするのを隠して、
「ああ、いいさ。ただ、他の連中からの誘いは受けないで欲しいね。」
「そういう非礼は、しないだけの分別はあるつもりですよ。」
「それならいいさ。じゃあ、明日。」
 男は、笑いながら、立ち去っていった。
「如何するんだい?」
 同時に店員を呼んだ。
「胡散臭さそうなやつだな。」
 ノロノロとやって来た店員が来ると、彼女は自分とゴセイと自分のワインを注文した。
「ここのビールは不味いけど、ワインはまあまあだからね。」
 ゴセイはそれに同意しながら、
「隊に入ったほうがいいかもしれないな。お前の言うように、胡散臭い奴だが、まあ、大したことでない。何を企んでいるかもみたい。それに、お前の能力も心配しなくても、いい程度に回復しているからな。」
 店員が持ってきたきたワインの杯を受け取りながら、言った。メドューサは、それを受け取りながら、
「分かったよ。僕はどちらでも、暴れられるなら、それでいいさ。」
 二人は、乾杯した。
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