第19話 メドューサの思い出6(マリア2)

文字数 1,688文字

「神様の愛でも授けるつもりかい?」
 メドューサが、皮肉っぽく言った。
「ゴセイが、こいつの力を欲しがると思っただけよ。」
 気絶している少女の首根っこをつかんで、猫のように持ちあげたマリアはぶっきら棒に答えた。
「そうかい。ん?なんだい、あれは?」
「金人、銀人、青銅人?まさか・・・どこから?」
 剣と盾を持った黄金色の金属の兵、弓を持ち、腕に円形の盾をつけた白銀色に輝く金属の兵、槍と盾を持った青銅のような戦士、どれも2m以上の巨体であった。数十体はいる。
「滅びた古の神々が作ったと聞いているわ。見たのは、私も初めて見たけど。でも、誰が、どうやって?」
 整然と並んで進んできた金人達の間から出てくる一団がいた。
「なかなかやるじゃないか。しかし、ここまでだ。とはいえ、どうだ、我々の傘下に入らないか?お前達を高く評価しているんだ。我々神の仲間に入れてやろうじゃないか?」
 先頭の男が、ニヤニヤと舐めるような視線を向けながら、提案してきた。その脇で、
「そんな汚い女達を仲間になんてしたくないわよ!」
と悪態をつく女達がいた。
「神?マリア様のお友達かい?」 
「私と比べないでちょうだい。あいつらは、神族よ、つ、ま、り単なる虫けらよ。」
「虫けらが、神様を称しているわけだ。でも、あいつらが、これをつくったのかい?」
「多分、どこかの遺跡で見つけたのではないかしら?こんな玩具を得て、増長したんでしょうね。」
 二人の会話をよそに、男は余裕たっぷりに黙って立っていた。金人達と神族達は、次第に二人を囲み始めた。その後ろに、人間の騎士や亜人の戦士達が続いていた。
「こっちから仕掛けてやろうか?」
「そうしましょう。虫けらをこれ以上見ているのには、さすがに我慢が出来なくなってきましたから。」
 二人は、正面の金人達に向かって突進していった。金人は、動きが軽快で、ある程度魔法まで使えた。銀人も、矢継ぎ早に放つ矢に魔法を込めることができた。青銅人は、頑丈で怪力の持ち主だった。神族達の魔力も剣や弓、槍の力量は半端ではなかった。
 青銅人の槍を片手でつかんで、それを握る青銅人ごと瞬時に持ち上げ、地面に叩きつけたメドューサは、少し息が乱れていた。もう一方の腕は、神族の女を貫いていた。
「あら、もうバテましたか?」
「人のことを言えるかい?」
 銀人の頭を引きちぎって、金人を魔法で貫いたマリアも、肩で息をしていた。
「この化け物どもが。」
 神族の一人が叫んだ。既に神族も、金人達の半ばが、既に半分以上が失われていた。さらに、人間、亜人の戦士達がその数以上が、彼女らに殺された。周囲に伏していたゴセイの軍が突入してきていた。一部では、兵達が浮き足立っていた。それでも、二人の前にはかなりの兵士がいた。
「あと一暴れ、いや、もう二暴れするか?」
「今日はどうしたんでしょうねえ。よく意見が合いますわね。」
 その時、大きな声が聞こえてきた。ゴセイだった。
「何だ、あれは?目立って、敵の的になりますよ。」
「僕達のために、あいつらの注意を引き付けているんだよ。相変わらず馬鹿だよ。」
 そい言いながら、ゴセイの姿を見て安心したようだった。
「まあ、無事なようですわね。では、もう一暴れしましょうか?」
「ああ、もちろんさ。」
 二人は、注意がそらされた神族達の中に飛び込んでいった。ゴセイが加わって、3人は縦横無尽に暴れまくった。何とか踏みとどまろうとしていた者達も神族や金人達が皆倒れ、精鋭達の死体が山になったのを見て、次第に逃げ腰になり、ゴセイの兵が四方から突入し、次々に突き崩され、逃げ惑うような声が聞こえてきて、遂に総崩れとなって逃げだしていった。
「ご苦労だったな。」
 返り血が固まってこびりついていたが、全く変わらないゴセイをしげしげと見て、マリアは思わず、
「本当に大丈夫でしたの?」
「ああ、何度も死んだと思うくらい痛かったがな。」
 笑うゴセイに、マリアも吹き出した。
「まあ、何時ものことだけどさ。また、使えそうな奴らを助けるんだろう?まずは、一人、小っちゃいのがいるぞ。」
「どれだ?」
 ゴセイは、メドゥーサが指し示す方を見た。
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