03.【88星座のお導き】
文字数 2,751文字
第二学期も始まって数日たったある日の夜。柑菜は天文術の教科書を机の上に開いて、とあるページを眺めていた。八十八の星座の図とラテン語名、そして各星座から読み取れる性格や性質が、見開き四ページにまたがって載っている。
明日はいよいよ、待ちに待った星座診断の日。当日に自分の性質やらなんやらをパッと把握したいがために、彼女はこうした行動を起こしたのだ。しかし、開始から僅か五分。
エイミーの属性は多分――と言いかけて、やめた。自分ならまだしも他人を勝手に分析するのはいかがなものなのか。確かに柑菜から見たエイミーの第一印象は、典型的なお嬢様だった。それに違わず今でも言葉使いは丁寧だし、振る舞いも優雅で上品。柑菜の頭の中で、候補は一つしか浮かばなかった。寧ろそれ以外に何が当てはまるんだと言いたくなるくらい、彼女の頭の中で結論ははっきりしていた。
別に柑菜自身はそういった魔法属性に関する研究の権威でもなければ、そういった分野を専攻しているわけでもない。でもそんなぺーぺーが持つ必要最低限の知識を以てしても、(魔法属性に限った話だろうが)どういうわけだか知らないが「察し」はついてしまうのだ。そしてそれはおおよそ当たるという恐ろしさ。過去の経験からそれが分かっていた彼女は、咄嗟にこう切り返した。
テンションが上がったらしく、頬に手を添えてうっとりし始めるエイミー。ロマンチストなルームメイトのそんな行動を見て、不思議と柑菜の口元に笑みが浮かぶ。どこか焦りと不安で荒んでいた柑菜の心は、いつの間にか凪いでいた。
明日は診断日だ。二人が果たして何者なのか、手がかりを掴む日。そしてそれ即ち、二人の人生の導き手が分かる日――。