第57話 黒い製作者

文字数 1,555文字

男たちは見知らぬ声に後ろを振り向くと、そこには男と小さな男の子が一人立っていた。
男は続ける。
「私は基本的にはよその街の儀式に口を出すつもりはないし、だからその子供達を君たちがどうしても別にかまわないのだが、さすがに二人目はね…」
男たちは互いに顔を見合わせる。
「なんだこいつ?どっから現れた」
男のいでたちは上下黒く、特に上着にはマントのような物を羽織っていた。
「あまり好きじゃない理論なんだ。一人を殺したから二人殺すのも一緒だ!という考え方はね。君たちが最初からその子を二人とも殺すつもりだったのなら特に気にしないんだが、よくよく聞くと元々は女の子の方だけを殺すつもりだったと聞く。勢いで奪われる命もあることは知っているつもりだが、さすがに大義名分がない状態で子供が殺されるのを見過ごすと後々寝覚めが悪そうだ」
男が急に饒舌に語りだすので3人はあっけにとられた。
そして全員の意見は
「頭がおかしい奴だ、だが見られたからにはこいつらも殺さなくてはならない」
というところで一致した。
だが黒ずくめの男はそれを察したうえで男たちをなだめるようにに話す。
「だがここで標的を私たちに変えるのもあまり得策とは思えない。それこそ命を粗末にしている…正確に言うと私を殺すのは別にかまわないのだがこの子には手を出さない方がいい」
男たちは困惑する。
「どういう意味だ?」
男は申し訳なさそうに反応する。
「今の見た目だと私の言う意味は分かりづらいよな。すまないルブー。姿を変えてもらえるか?」
男がそう言うと隣にいる男の子から突然真っ黒い瘴気があふれ出した。
男たちは驚いて後ずさりする。
瘴気が少年の体を包み切ると、徐々に瘴気が引いていく。すると中から少年ではなく真っ黒いサルのような獣が現れた。
獣はニヤニヤと男達を見つめている。
男たちは言葉を失った。
いくら彼らが兵士の経験があるからとはいえ、3人で害獣を相手にするのはさすがに無謀だからだ。男は続ける。
「それにおそらく君たちは僕らよりも先に対処しなきゃいけない相手がいる」
男達は言われても何のことだかわかっていなかった。
だが男に後ろを見るようにうながされて、後ろを見てみると。
ピントとエルの周りから瘴気があふれ出ていた。
ピントはエルに話しかける。
「エル?」
エルは傷つきながらも男たちに敵意をむき出しにしていた。
そしてついに瘴気がエルの体を包んだ。ピントはエルを瘴気から助け出そうと近づいたが、瘴気が溢れすぎてエルに近寄れなかった。
そして少し経つと瘴気が晴れ、エルより2回り大きくなった黒い獣が現れた。
その獣は男たちを見ると大きく吠えた。
そして男の一人、大柄な男に一目散に向かっていくと、男にかみついた。
大柄な男は必至で振りほどこうとしたが、黒い獣は離れない。
周りの男たちが獣に切りかかって、犬の獣は大柄な男から離れた。
「貴重だな。自然な覚醒に立ち会うのは久しぶりだ」
後ろで黒ずくめの男が他人事のようにつぶやく。
一方3人は必死だった。
大柄な男は噛まれたところから血が止まらず、ほどなくして意識を失った。
レイを刺した男ともう一人は半ば恐れで戦意を喪失しかかっていたが、犬の獣が足を引きずっているのをみて、少し希望を取り戻した。
「エル!」
ピントの叫びに犬の獣は反応する。だが切りかかられている影響なのか、黒い獣になってもなおエルは足を引きずったままだった。
二人の男が一斉に犬の獣に襲い掛かろうとするが、ここでまた爆音が鳴り響いた。
男のうちの一人、レイを殺していない方の男に雷が直撃し、男はそこに倒れこんだ。
衝撃であたりの皆は一瞬あっけにとられた。いよいよレイを殺した男は残り一人になってしまった。
だがエルも息絶え絶えだった。
エルと男は間合いをはかりながら睨みつけ合う。
ここで黒マントの男が仲裁に入った。
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登場人物紹介

少女:リコ

小太りの男:カルケル

入れ墨の男:レンド

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