第34話 決着

文字数 1,012文字

グラントはその様子を注意深く見ていた。
「攻撃が通った?」
討伐隊の部下は一瞬の間をおいて、一気にベルグールの近くに駆け寄り、彼を獣から遠ざけた。
だが、ベルグール自身は当たり所が悪く即死だった。
彼の表情が心なしか満足しているように見えたので部下は少し不思議に思った。
隊長を失った討伐隊だったが、獣が予想外にダメージを受けていたので、どうするのが正しいのか少し混乱が生まれていた。
グラントはその隙を見逃さなかった。
「おまえら、いけ。奴にとどめを刺してこい」
レイルはうなずくと部下たちを引き連れて、倒れてのたうち回っている獣のさらに後方から獣を一心不乱に攻撃した。
獣はおとなしい時と違い、明らかにダメージがあった。
そしてその手ごたえをグラントの部下たちも感じていたのか、ここで畳みかけようとさらに攻撃の手が強まった。
だがその瞬間、獣はとたんに動かなくなり、獣の体から瘴気があふれ出した。
グラントは普通なら攻撃を続けるが、今回は獣の様子が変わった瞬間に、瞬時に攻撃を中止させた。
「くそ、いったん引くぞ」
レイルは追いつめているのにどうして撤退の指示を、という表情を浮かべたが、グラントの真剣な表情に指示に従って部隊をいったん獣から引かせる。
グラントは部隊を引かせながら、あることが気になったので、一人の部下に指示をだす。
「お前そこからあの心臓を狙えるか?」
言われた部下はボウガンを構えて心臓部に向けて矢を放った。
心臓部に矢が命中する。
だがその矢はゆっくりと抜けて、そこから瘴気がゆっくりと滲み出してくる。
だがダメージがあった様子は見えなかった。
グラントは読みが外れて少し落胆した。
討伐隊も相当数がやられ、残りもベルグール亡き今なすすべはなく、前回のグラント同様撤退するしかなかった。
全部隊が獣の元から去ると、獣は落ち着きを取り戻しまたそこから動かなくなった。
部隊と獣からかなり離れた所に二人の人影があった。
レンドとリコはここにいて、この戦いの一部始終を見ていた。
彼らの陣どっていた丘は、そこから獣たちの様子を一望できる場所であり、
レンド達はグラントの様子を探りながら、様子が見えるここに戦闘が始まる前に陣取ったのだった。
レンドは入れ墨を回収しながらつぶやく。
「グラントの読みはかなり正確だったように見えたが…」
「あの獣、どうやったら死ぬの?」
リコの疑問にレンドは答えなかった。
レンド自身もまた、何が答えなのかを測りかねている様子だった。
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登場人物紹介

少女:リコ

小太りの男:カルケル

入れ墨の男:レンド

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