闇より昏き道
北杜市武川町の一木一族の末裔、一木孝治です。
ガンダムなどロボットアニメだけでなく、子供がテレビで見る戦隊モノでも魔法少女でも、戦いに巻き込まれる主人公は当たり前に正しい側の正義の味方で、敵は疑いなく悪の組織で倒すべき存在です。
では、もし貴方が戦争に巻き込まれ、そして貴方が属する組織や国が悪い侵略者の側であったとしたら、貴方ならどうしますか?
政治には特に興味はない、機械いじりが好きな心優しい平凡な青年、ペーター・ドレシャー。彼はナチスの時代のドイツに生まれ育ったというだけで、否応なくナチスの戦争に巻き込まれて行く。
最初は二線級の歩兵師団で技術将校としてのんびり働いていたが、親衛隊のエリートであった従兄の誘いで親衛隊に入ってしまった為に、彼の運命は暗転して行く。
機械工学を学ぶ為にドイツに留学していた日本人の学生杉村史生は、ペーターとはベルリン工科大学で共に学んだ学友であった。
戦争が始まった1939年、史生は国防軍士官学校の生徒として出征するペーターを見送る。
そして1945年4月の末、ロシア軍に重包囲され猛攻を受けて陥落寸前の荒廃したベルリンの街で史生はペーターと再会する。その時ペーターは、悪名高きナチス武装親衛隊の歴戦の将校となっていた。
勝ち誇り略奪しながら進撃するロシア軍と激闘を続ける合間に、史生はペーターから、彼が時代に流され己の心の弱さもあって、ゲシュタポや強制収容所で働くことになり、どんな凄惨な体験をしてきたかを聞く。
目次
完結 全30話
2022年04月22日 04:50 更新
- 第1話 二〇二一年五月一四日(東京)2021年09月14日
- 第2話 一九四五年四月二六日(ベルリン)2021年09月14日
- 第3話 一九三九年四月二〇日(ベルリン、ペーター)2021年09月14日
- 第4話 一九四五年四月二十六日(ベルリン)2021年09月14日
- 第5話 一九四二年八月(フランス、ペーター)2021年09月14日
- 第6話 一九四五年四月二六日(ベルリン)2021年09月14日
- 第7話 一九四二年夏(パリ、ペーター)2021年09月14日
- 第8話 一九四五年四月二六日(ベルリン)2022年04月08日
- 第9話 一九四二年夏(パリ、ペーター)2021年09月14日
- 第10話 一九四五年四月二六日(ベルリン)2021年07月28日
- 第11話 一九四五年四月二七日(ベルリン)2021年09月15日
- 第12話 一九四二年秋(フライシュタット強制収用所、ペーター)2022年04月20日
- 第13話 一九四五年四月二七日(ベルリン)2021年09月14日
- 第14話 一九四三年夏(フライシュタット強制収用所、ペーター)2021年09月14日
- 第15話 一九四五年四月二七日(フライシュタット強制収用所)2021年08月02日
- 第16話 一九四五年四月二八日(ベルリン)2022年04月14日
- 第17話 一九四三年秋(ロシア戦線、ペーター)2022年04月14日
- 第18話 一九四五年四月二十八日(ベルリン、総統用地下壕)2022年04月14日
- 第19話 一九四五年四月二九日(ベルリン)2022年04月14日
- 第20話 一九四四年二月(チェルカッスィ、ペーター)2022年04月14日
- 第21話 一九四五年四月二十九日(ベルリン)2022年04月14日
- 第22話 一九四五年四月三十日(ベルリン)2022年04月14日
- 第23話 一九四五年四月三〇日(アストラハン、ドイツ兵捕虜収容所)2021年09月15日
- 第24話 一九四五年四月三〇日(ベルリン)2021年09月14日
- 第25話 一九四五年五月一日(ベルリン、日本大使館)2021年09月14日
- 第26話 一九四五年五月二~三日(ベルリン)2022年04月14日
- 第27話 二〇二一年五月一四日(東京)2021年08月14日
- 第28話 一九七五年(ウィーン)2022年04月14日
- 第29話 二〇二一年五月一四日(東京)2021年08月16日
- 第30話 一九四五年五月三日(ベルリン郊外、ペーター)2022年04月22日
登場人物
ペーター・ドレシャー……ただ機械が好きなだけの、大人しく心優しい青年。興味があるのはナチスの政治的な主張ではなく、ナチスが作らせた戦車や装甲車。それで戦争が始まると、一兵卒として召集される前に戦車の整備をする技術将校を目指して士官学校に入学する。
杉村史生……ペーターと同じく、機械が大好き。ベルリン工科大学に留学し、ペーターと親しくなる。第二次世界大戦が始まった為に帰国できなくなり、ベルリンで機械工学の勉強を続ける。そして大戦末期のロシア軍に包囲され陥落寸前のベルリンで、旧友ペーターと再会する。
ヨーゼフ・ヴェーゲナー……ペーターの従兄でナチスの若きエリート。ナチス思想に心から染まっているわけではなく、第一に考えているのは己の出世。愛想は良いが心は冷たい。だが従弟のペーターのことは彼なりに大切に思っており、親衛隊に誘ったり、ペーターが窮地に陥ると救いの手を差し伸べたりする。しかしその為、ペーターはますます悪の道に堕ちて行くことになる。
ケーテ・レンスキ……ポーランド国境に近いポメラニアに住む少女。略奪や暴行をしながら進撃するロシア軍の猛攻に追われ、撤退するミュンヘベルク師団と共にベルリンまで逃げる。その間、師団の看護婦の役目を務める。
ユーリ・アレクサンドロヴィチ・スミルノフ……ロシア軍の大尉で正義感あふれる熱血漢。政治将校だが、ナチとドイツ軍は憎むが、ドイツの民間人は守ろうとする。
ステパン・グレゴリオヴィチ・フョードロフ……ロシア軍の上級中尉。NKVD(後にKGBとなる国家保安人民委員部)の職員。
花井孝三郎……表向きは駐独日本大使館の旅券課員だが、実は陸軍中野学校で教育された特務機関員。杉村史生に総統官邸に潜入しヒトラーの動向を探るよう命じる。
ハンナ・ベルツ……ベルリンに住む少女。父親が反ナチ思想の持ち主で、「ナチスよりロシア軍の方がマシ」と教え込まれている。
エルナ・ウルマン……ハンナの友達。父親がドイツ軍の将校である為、ロシア軍をとても恐れている。
アントン・ブリュックラー……SS中尉で強制収容所の副所長。楽をして生きている要領の良い男。ドイツ軍の敗戦を見越し、収容したユダヤ人から略奪した金品を横領している。
レーナ・フェスマン……強制収容所に収容されているユダヤ人の少女。頭の良い文学少女で、ふとしたことから知り合ったペーターと親しくなる。しかしそれは決して許されない恋だった。
バウル・リッター……ベルリン郊外で退却しながら戦うドイツ第九軍の少年兵。故郷の東プロシアはロシア軍に占領され、絶望しながら西へと逃げている。
マックス・シュペート……第九降下猟兵師団の伍長だが、本来は空軍の整備兵。兵力不足で東部戦線に駆り出された際に、ロシア兵の残虐さを目にした為、ロシア兵の捕虜になることを死ぬより恐れている。
ファンレター
こんにちは。「悪」とされる側にいる「個人」の思いや行動。こんな悲惨な状況ではもちろんないですが、現実の、例えばお仕事世界にも置き換えて読める気がします。そしてここまで、人物関係や描写の詳細さにも感心して読ませていただいております。未読ですが独ソ戦の岩波新書も最近出ていましたよね。読んでみようと思いました。引き続きよろしくお願いいたします。
小説情報
闇より昏き道
- 執筆状況
- 完結
- エピソード
- 30話
- 種類
- 一般小説
- ジャンル
- 歴史
- タグ
- 第二次世界大戦, ナチス親衛隊, 武装SS, ゲシュタポ, 強制収容所, 独ソ戦, ベルリン攻防戦, 戦争犯罪者, シリアス
- 総文字数
- 164,022文字
- 公開日
- 2021年07月17日 23:14
- 最終更新日
- 2022年04月22日 04:50
- ファンレター数
- 3