第65悔 マイノ・リッティ・リポート(急):悪戯の神通力

文字数 1,784文字


 さあ、体が温まったところで本題に入ろう。

 会議後に起きた最も不可思議な事件について、驚くべき事実が“発掘”されたのでお伝えしたい。

 この『第一悔 皇国後悔会議』で、全く謎としか言いようのない事態が起きたのは、歴史好きの皆さまならご存じかも知れない。

 当時、円形協議場の観客席にいた複数の女性が集団妊娠した件だ。

 その数、何と五百人!
 
 会議の終盤に体調に異変を感じた女性ら全員が、会議後すぐにかかりつけの医師の元に駆け込むと、一人残らず妊娠と診断されたのだ!
 
 これまでの調査で分かっていたのは、入場ゲートを十二時の方向とするならば、九時を基点に前後一時間の範囲の観客席の女性が軒並み妊娠したらしい、という事だけだった。

 これには、十代前半の少女から果ては六十代、七十代の老女までが当てはまった。
   
 ほぼ全員に性交渉相手の心当たりがなく、しかも、ほぼ全員が妊娠三か月で出産してしまった。

 まさに神の御業である。

 ……待てよ。神? 
 そう、こんな“悪戯(イタズラ)”が出来るのは“神”しかいないのである。

 と言うことで、俺の中で簡単に容疑者は一人に絞られた。
 
 皇国第一皇女イサベラ・パルメルである。

 ここで議事録に残された彼女の発言を思い出してみて欲しい。
 
 《 イサベラ皇女、「これで、万事解決よ。この件についてはな」、とエンリケ皇子に告げる。 》

 そうである! この「この件についてはな」に(かか)る“他の件”が、この『集団妊娠』の件だったのである。

 『集団妊娠』は当然、このあと世界をひっくり返す社会問題となった。
 だから、イサベラ皇女もそれを予見してエンリケ皇子に告げたのだ。 


 俺としても、この調査には大変な労力を費やした。
 実に、九千人近くの関係者に聞き込み、六万五千点にのぼる文献資料を読み込んで真相を立体化させることに成功した。

 俺のライフワークと言っても良い“発掘”が出来たのでぜひ聞いてほしい。

 真相はこうだ。


 イサベラの皇女股(オメコ)が強烈な光を発し始めると、彼女のすぐ足元の椅子に座っていた彼の一物がぐんぐん極大化し始めた。

 そう、ギッザゾズ・ガザザナの“超巨人”、あるいは“世界蛇(せかいじゃ)”である。

 だが、彼に非は無い。眠っていただけなのだから。
 そして、皇女股光(おめこう)にはそういう不思議な力があるのだから仕方がない。

 何とその時、彼の“世界蛇”は、八十センチまで伸びたのだというから驚きだ。
 (恥ずかしながら、俺のモノはその半分の四十センチ程度しかない。え? いやいや、自慢じゃないですよ? ええ、“超巨人”は凄いと言いたいんです、はい。)

 ――で、やはりエンリケ皇子と同じように、皇女股光(おめこう)が衝撃波となって弾けた時、“世界蛇”も極大射精した。
 ……したのだが、ここで不運なのか奇跡なのかよくわからないことが起きた。

 椅子の背もたれに体を預けていたガザザナ蛇の、二リットルはあろうかと言う“毒液”は、衝撃波と共に後方に飛んだ! 

 精子の一つ一つが光子によって加速され、観客席の八時から十時の方向へと拡散した!
 それは刹那(せつな)の間に未知のエネルギー体となり、人の体を透過し、あるいは女性の子宮に着床(ちゃくしょう)した!

 
 ――と言うことなのである。
 
  
 恐ろしい話だが、この『第一悔 皇国後悔会議』の最中に妊娠してしまった女性たちの子供の父親は、一人残らず超巨人ギッザゾズ・ガザザナなのである。
 そして、妊婦らはイサベラの皇女の神通力(フォース)で、わずか三か月で母親となってしまったのだ。

 皇女の「この件についてはな」という言葉の意味が、後世の歴史に重く圧し掛かった出来事であった。 
 
 彼女らの子供たちはどうなったか? 
 
 ――それは、皆さんが良く知る史実が示す通りなので、ここでは書かない。

 ところで、最近ひょんなことから手に入れることが出来た、メルモモ・カベルスキーという当時流行していたらしい女流作家が(あらわ)した『V for Vaginatta (Vは『皇女股』のV)』と言うタイトルの本に『集団妊娠』の真相と、それよりもっとすごい事が全部、包み隠さず書かれていた。

 つまり、俺が十年かけて“発掘”するまでもなく、当時すでに出版され、知る人は知っていたのだ。

 ――これには、ホントに俺もマイッタね!



 第65悔 『マイノ・リッティ・リポート(急):悪戯(イタズラ)神通力(フォース)

 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆

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登場人物紹介

フェルディナンド・ボボン


この物語の主人公。

これといった定職には就いていないが、近所では昔から情熱的な男として知られている。

その実体は……。


ノニー・ボニー


皇立ルーム図書館で働く司書で、フェルディナンドの幼なじみ。 

他薦により『ミス・七つの海を知る女』コンテストに出場し優勝。
見聞を広めるための海外留学の旅に出る。

その実体は……。


クリストフ・コンバス

フェルディナンドの竹馬の友。
皇国を代表するファッション・リーダーとして活躍中。

その実体は……。


24歳、185cm。 

エンリケ後悔皇子


リゴッド皇国の第二皇子。

人類の行く末を案じて、後悔することを奨励する。

16歳。13センチ。

トスカネリ・ドゥカートゥス


エンリケの家庭教師であり、「盲目の賢人」、「後悔卿」の異名を持つ後悔研究所所長。

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