第61悔 蓄光装置、希望の光

文字数 1,997文字

 前悔までの『ニュー・イェア!』は……。


 皇女股が()ぜた!

 『Splendid Face:素晴らしきご尊顔』
 『Superb Blonde:壮麗な金髪』
 『Supremacy Breast:至高のオパイコ』
 『Sensual Curve:好色くびれ』
 『Supreme Ass:最高尻任者』
 『Shapely legs:イカしたアンヨ』
 『Sacred Vagina:神聖不可唇』
 
 ――の持ち主、 “the Seven”こと完璧な人類、皇女イサベラが祝詞(のりと)(とな)えた時、皇女股が発する光が円形協議場内を包み込んだ。

 貝合わせによって密着させられていた“満身創痍の女王の住処”に全ての光が収束し、そして――()ぜた!



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 皇女股と“満身創痍の女王の住処”を基点に、青白い光の衝撃波が円形協議場内に発せられた!


 ――それは、皇女イサベラの神通力を最大限に解放する祝詞『グロリアス・メコリューション』の力によるものだった。

 彼女の皇女股には人々を幸せにすることの出来る不思議な力があったわけだが、逆に人々からの返礼としての感謝や尊敬の念を吸収し、蓄える能力もあった。
 そこで蓄積されたエネルギーは皇女股を光輝かせる、ひとつの蓄光装置(ちっこうそうち)となる。

 光を蓄えたままにするか、一息に放射するかはイサベラの祝詞のさじ加減ひとつでどうにでもなった。
 
 この原理を発見したのは、幼いエンリケの顔面に跨り、皇女股を駆使して物語の読み聞かせをしてあげていた初代家庭教師時代だった。
 
 赤子ながら姉の物語を楽しんだエンリケは、おそらく皇女股に喜び、感謝したのだろう。 
 股間が光を蓄え始めた当初は少女イサベラもさすがに驚き、泣きどおしだったが、そのうちその光を利用し夜の宮殿内でも不自由なく歩けることがわかると、足繫く宮中書庫に通いさらに熱心に勉学に励むことが出来た。

 そこで『リゴッド神話』を学んだ彼女は、女神イザネイミホートの逸話を知ることとなり、今に至るのである――。

 イサベラの神通力と共に発せられる青白い光は、大観衆から集めた感謝と尊敬の念をエネルギー源にしているだけあって、『希望の光』そのものと言えた。
 ……であるので、どんなに強い勢いでそれが発せられようと、人に危害が加えられることは無かった。

 光の波が巻き起こす旋風により、帽子を飛ばされるものなどが観客の中にいたが――天井が吹き抜けになって自然光が入る造りになっているからと言って――それは、屋根のある円形協議場内で脱帽しない観客自身の礼儀作法の問題と言えた。

 光の波は、しばらくの間、場内を寄せては返していたが、ある程度落ち着きを取り戻した時に大観衆がまず気になったのは、皇女股に密着していた“満身創痍の女王の住処”の安否だった。

 議場内のメンバーは、あまりの光の勢いに気圧され、皆一様に転倒していた。

 “超巨人”のギッザゾズ・ガザザナも椅子に座ったまま後ろに倒れていたが、どういう訳か先ほどまで力を一〇〇パーセント近くまで回復していたはずの“世界蛇”は、すっかり鳴りを潜めていた。

 光の衝撃波の中でも、悪戯心(イタズラゴコロ)あふれる少女によるこの日何度目かの『手淫(てみだ)奉仕(サービス)』を受け、果てていた皇子エンリケが気を取り直して立ち上がった。
 「あ、姉上! どうなりましたか?」と円卓の上を見上げる。

 紫のドレスを着こみながらイサベラは言った。
 「これで、万事解決よ。この件についてはな」

 すると、近衛騎士二名が膝を突き踏ん張りをきかせたおかげで、何とか転倒を免れたイヴァノフの股間に誰もが注目した。

 「おおっ! キレイさっぱり血が拭われている!」と観客が叫ぶ。

 もちろん『皇女股の力』は、そんなものだけではすまなかった。

 イヴァノフの股間は、すっかり剃毛されていた。

 「まず、患部を清潔に保たねばならんからな」と皇女イサベラ。このあたりはさすが『聡明叡知(そうめいえいち)』の彼女らしい医学的な配慮だった。

 そして、よく見れば“満身創痍の女王”と識者にあだ名されるほど傷だらけだった彼女の女股が回復していた。

 「皆の者にもイヴァノフが無事であること、見せてやるが良い」とイサベラが近衛騎士に声を掛けると、ヒューゴとサントーメの二人は歓喜の涙を流してその(めい)に従った。
 「ハハーッ!」、「ありがたき幸せ!」

 二人は、すやすやと寝息を立てる尊い騎士団副長を再び抱え上げると、大観衆に回復した女股を見せつけるかのように更に両脚を大開(おおビラ)きにさせ、円卓の大外を回りだした。

 ヒューゴが高らかに、サントーメが誇らしげに叫んだ。
 「セイヤッ! セイヤッ! お女股神輿(めこみこし)のお通りだぁ~い!」

 「これぞ、我らのお女股輿(めこし)だぁい!」

 そこには、先ほどの悲壮感漂う七周回とは違い、晴れやかなパレードのような趣があった。



 第61悔 『蓄光装置、希望の光』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆

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登場人物紹介

フェルディナンド・ボボン


この物語の主人公。

これといった定職には就いていないが、近所では昔から情熱的な男として知られている。

その実体は……。


ノニー・ボニー


皇立ルーム図書館で働く司書で、フェルディナンドの幼なじみ。 

他薦により『ミス・七つの海を知る女』コンテストに出場し優勝。
見聞を広めるための海外留学の旅に出る。

その実体は……。


クリストフ・コンバス

フェルディナンドの竹馬の友。
皇国を代表するファッション・リーダーとして活躍中。

その実体は……。


24歳、185cm。 

エンリケ後悔皇子


リゴッド皇国の第二皇子。

人類の行く末を案じて、後悔することを奨励する。

16歳。13センチ。

トスカネリ・ドゥカートゥス


エンリケの家庭教師であり、「盲目の賢人」、「後悔卿」の異名を持つ後悔研究所所長。

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