第106悔 天国までの道しるべ
文字数 1,901文字
それは奇しくも、クリストフとアンナマリアによる弟バルトロイへの道しるべとなった――。
兄を心配して観客席から特別誂えの入場ゲートまで降りて来たバルトロイだったが、すでにクリストフも義姉も騎士たちもそこにはいなかった。
――が、代わりに通路の上の何かに目が行った。
「これは……なんだろう?」
血に塗れた白濁液が、医務室まで点々として床に落ちていた。
膝を突いた十七歳の青年が、指でそれをなぞってすくい上げた。
「赤と白の……なんらかの……液体……?」
ソレが何なのか全く分からない純粋無垢な素人探偵が、少しでもソレから情報を得ようとして臭いを嗅いでみた。
「これは……雨期を目前にした木々の臭い……? どうも妙だな。兄貴と
それから、ソレを〈ぺろり〉と舌で舐めた。
「この味は! ……なんだ? ぜんぜん分からないな。練乳? と……イチゴのしぼり汁かな?」
しかし、そんな彼の胸中にも、点々と続くソレのあとを追えば兄らに行きあたるのではないか、という予感めいたものがあった。
「……行くっきゃないか!」
そう決意したバルトロイは、クリストフとアンナマリアが残した道しるべを一つ一つ手に取り、舐めながら通路を進んだ。
「うん、なるほど、慣れてくるとなかなか美味いや!」
一方、議場では――。
「かならずマーカスの失われた肉棒を探し出してみせる!」という、後悔三銃士キャスの心の奥底に秘めた決意を知ってか知らずか、エンリケ後悔皇子が露出した“十三センチ砲”は今――キャスの
何か心地よいことがあると言いな、という軽い気持ちで一物を出したエンリケ本人も、先ほどの口奉仕よりも更に夢見心地の事態が訪れようとは思っていなかったのだろう。
キャスが円卓の下で皇子に背を向け、自ら後背位で“十三センチ砲”を挿入した時――あっという間に果てた。
まっ、まさか、こんなところで……こんな形で……初めての……アレを済ませることになろうとは……。ああ、ファニチャード! 初めてのアレは君で済ませたかった……。済まない……。いや、済んだのだけど……。愛しのファニー……せっかくだから……しばらくこのまま居させてくれまいか? いや、この場合まずキャスに許しを得るべきか……。ああ、キャスよ、
そうしてエンリケは、椅子にもたれて天を仰いだ。この時、背後の入場ゲートで一悶着が起こっていたというわけだ。
しかし、皇子の“十三センチ砲”は、長身を誇るキャスの子宮の入り口にも届かなかったし、なにより
それもそのはず、今日だけでもう半ダースは射精しているのだ。いくら幼少のころから『
片や、死に別れた恋人と同じサイズの一物からの射精を受け止めたキャスは、満足したのか女股に肉棒を残したまま前に突っ伏し、眠りについた。
書記席から見守っていた艶やかなる男ロニーは、キャスの心中を
エンリケの昇天する際の
書記のノギナギータも――憐れなキャスの事には一切触れず――皇子の言葉だけをそのまま記録した。
しかし、これは後世の歴史家の間で些か議論になった。
「これは、本当に賛意を表したものなのか? その前の『ダ、ダメ』というのは何なのか?」
確かにこれにはファニチャードも若干、困惑した様子でエンリケに問いかけた。
「エンリケさま? いけませんの? それとも賛成してくださったのですか?」
ここにグンダレンコ・イヴァノフが挙手をして割って入ろうとしたが、ちょうど入場ゲートの騒動で
大勢の観客がクリストフと騎士らの一件を落着するまで見守る中――エンリケはひとり、抜かずの二発目をキャス壺に注ぎ込んでいた……。
第106悔 『天国までの道しるべ』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆