第58悔 女股は舞い降りた!

文字数 2,004文字

 円卓の上に静かに女神が降り立った。

 議場メンバーと救護班らは最初、イヴァノフにかかり切りで気づかなかったが、次第に、まるで太陽が落ちて来たかのような(まばゆ)い光が、そこにいる全員を照らしはじめたので異変に気付いた。

 彼らが一斉に振り返るとそこには、紫色のドレスを完全に脱ぎ去り、美しすぎる全身を露出させた皇女イサベラがいた。
 光輝いていたのは彼女の両手で開帳された皇女股(オメコ)で、体を隠すものは女股(めこ)羽衣(はごろも)だけとなっていた。

 唖然(あぜん)とする議場メンバーの胸中を代弁する声とため息が、観客席から相次いで漏れた。
 「おお! まさに女股神(めこがみ)さまの降臨だ!」、「ああっ御女股様(おめこさま)!」、「そして、胸もでかい!」、「いやいや、尻だよ尻! 最高!」、「完璧超人!」――。


 ――『皇女股(オメコ)』の噂は民草の間にも広がっていたが、イサベラ皇女が『スプレマシー・ブレスト(至高のオパイコ)』、『センシュアル・カーヴ(好色くびれ)』、『シュプリーム・アス(最高尻任者)』の持ち主であることはそれほど知られていなかったので大観衆は度肝を抜かれたに違いない。

 上記に加えて『スプレンディド・フェイス(素晴らしきご尊顔)』、『シェイプリー・レッグス(イカしたアンヨ)』、『スパーブ・ブロンド(壮麗な金髪)』、『セイクレッド・ヴァギナ(神聖不可唇)』も持ち合わせていることから――頭文字がすべて『S』であることもあり――後年、イサベラは『the Seven』とあだ名されることとなる。

 もっとも、『皇女股(オメコ)』に関しては他にも『シャイニング(あるいはシャイニー)・ヴァギナー(輝ける女股師(めこし))』、『スパークリング・ヴァギン』、『サドンリー・ヴァギナ(突然の御開帳)』など様々な異名があったし、外見だけではなく『聡明叡知(smart)』のSも加えるべきだという進歩派の意見があるなどして、議論は混迷を極めたがそれはまた別の話――。
 
 
 降臨時の位置関係上、偶然、リゴッド神話の創造の女神イザネイミホートを彷彿(ほうふつ)とさせる『神聖不可唇(しんせいふかしん)』を至近距離で見てしまったのは、さっきまでそれを見ることを必死に(こら)えていたクリストフだった。

 円卓の上に立つイサベラの皇女股(オメコ)は、クリストフの目線とほぼ同じ高さ、その距離十五センチほどのところにあった。彼女の股間一帯に塗られた何らかのオイル成分の香りが、クリストフの妄夢(モゥム)を刺激する。

 め、目が離せない! 永遠に見ていたいとすら思わせる! “美麗門(びれいもん)”の威光、恐るべし! しかし、このままでは妄夢が……!

 誰もが(うらや)む栄光の皇女股(オメコ)を目前にしながら、もがき苦しんでいるようにも見えるクリストフの姿を見た無邪気なファニチャードが、隣に立つ後悔皇子に指摘した。 
 「エンリケさま、アレを見て! まるで伝説どおりですの! あの方、きっと(よこしま)な考えを抱いているのですわ!」


 創造の女神イザネイミホートの御女股(おめこ)伝説は、現代のリゴッド皇国民にもよく知られていた。

 ――

――


 「なんと! 本当だ!」
 エンリケは本気で伝説を信じていた訳ではないが、ファニチャードの言う事ならもはや何でも受け入れたい『手淫(てみだ)らの犬』と化していた。 

 「くっ! し、失礼します」
 我慢の限界に達したクリストフは円卓を小走りで離れ、インペリアル・ガードが守るゲートから議場の外へと飛び出した。

 「あらら、やっぱりですの」とファニチャードは笑ったが、事態はそれどころではない。
 イヴァノフの命が()かっていた。
 
 「それでは、皇子。失礼します」とナナイ・ティンゲルスはじめ救護班が担架のイヴァノフを運ぼうとエンリケに挨拶した時、円卓の上を司会席側まで御開帳(OpenVagina)しながら歩いて来たイサベラが呼び止めた。

 「其処(そこ)な者、待つが良い」

 ナナイは初めて見る皇女股(オメコ)に深々とお辞儀をした。
 一方、見慣れてはいるものの、未だかつてないほど輝いている皇女股(オメコ)に息をのむ近衛騎士団員たちは、ゆっくり担架を下した。

 「()の者、近衛騎士団副長イヴァノフか……女股(めこ)の病と見えるな」と顔色を変えずにイサベラ。
 
 「御意(ぎょい)にございます」と恐る恐る答える救護係長。

 皇女は近衛騎士に命令を下した。
 「イヴァノフをひっくり返せ」

 「えっ?!」さすがの近衛騎士たちも聞き返した。
 「イヴァノフの制服のズボンを脱がすのだ。それから両の脚を大きく開かせてひっくり返し、我に()の者の女股(めこ)を見せよ」

 「し、しかし、恐れながらイサベラ様! そんなことをしたら彼女は――」と医療従事者として当然の思いで食い下がろうとしたナナイを(さえぎ)って皇女が叱り飛ばす。

 「控えおろう! この皇女股(オメコ)が目に入らぬか!」

 その声と共により一層、皇女股(オメコ)が輝きを放つ。その光の強さは、もはや直視するのが危険な域に達していた。



 第58悔 『女股(めこ)は舞い降りた!』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

フェルディナンド・ボボン


この物語の主人公。

これといった定職には就いていないが、近所では昔から情熱的な男として知られている。

その実体は……。


ノニー・ボニー


皇立ルーム図書館で働く司書で、フェルディナンドの幼なじみ。 

他薦により『ミス・七つの海を知る女』コンテストに出場し優勝。
見聞を広めるための海外留学の旅に出る。

その実体は……。


クリストフ・コンバス

フェルディナンドの竹馬の友。
皇国を代表するファッション・リーダーとして活躍中。

その実体は……。


24歳、185cm。 

エンリケ後悔皇子


リゴッド皇国の第二皇子。

人類の行く末を案じて、後悔することを奨励する。

16歳。13センチ。

トスカネリ・ドゥカートゥス


エンリケの家庭教師であり、「盲目の賢人」、「後悔卿」の異名を持つ後悔研究所所長。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み