第68悔 バック、オーライ!
文字数 2,250文字
「皇子、そろそろ……」
トスカネリが口を挟むと、エンリケもこの場が何であるかを思い出した。
「おお、そうでした。ヒューゴとサントーメ、そろそろ君たちの副長を降ろしてやってくれないか? 会議を再開しよう!」
「おお! ありがたき幸せ!」とヒューゴ。
サントーメも「さすが、エンリケ皇子!」と同意した。
「やはり、このお方は大皇や兄皇と違うな!」、「ああ! まだまだ若いが、俺たちの名前をちゃんと覚えてくださっている!」
騎士二人は目を見合わせてそう会話すると、逆さまに担いだ状態のイヴァノフをゆっくり前に降ろし始めた。
「よし、まずは下げるぞ。片膝を突こう」とヒューゴ。
「待っててくださいよ、副長。今、降ろしますからね!」とサントーメ。
そこに、さっきまで
「オーライ! オーライ! そのままそのまま」
“
「かたじけない! 道化師殿!」とヒューゴがイヴァノフの代わりに礼を言う。彼女は先ほどから顔を手で覆いずっと歓喜の涙を流し続けていた。
「なんの! なんの! 元はと言えば、オイラの『スピナチア』が強力すぎたのがいけないんだからさ!」と道化師。
彼はしかし、エンリケ皇子一行が「よし、これでひとまず安心」と玉座の方に戻っていったのを見逃さなかった。
派手な道化師衣装の下で、おっ立ったそれなりの一物を露出させる。
「オーライ! そのまま降ろしてどうぞ!」と、スピナッチが己の“道化”にイヴァノフのお
「そうそう! もう少しで入る!」
「え? 何が入るですって?」とサントーメ。彼ら騎士はイヴァノフを降ろすために前屈みになっているので、スピナッチが副長の腰をしっかりとホールドして今にも
「いや、何でもないズラ! そう! そこっ! 今ッ!」と、スピナッチが合図を送ると、二人の騎士は一気にイヴァノフを降ろした。
〈ジェスタッ!〉という挿入音が議場に轟いた。
「はうぁ!」と、この段になってようやく自分のお女股に異物が挿入されたことを気づいたイヴァノフが叫んだ。
「どうしたんです? 副長!」とヒューゴ。
「馬鹿! 早く放せ! 私のアッ! ソコに、何かがァ――」とイヴァノフが言おうとするも、サントーメがタイミング悪く「え? 〈ジェスタッ!〉って何の音です?」と声を被せてしまった。
三人の騎士は、格闘球技リグヴェーのスクラムさながらに肩をお互いに組み合っている。
二人の騎士対副長のスクラムの形だ。そこを、イヴァノフの後ろからスピナッチが挿入し、二対二の押し合いになっていた。
スピナッチが近衛騎士たちのやり取りなど気にもせず、腰を前後に振る。
こうなると、ヒューゴとサントーメも首を抜こうにも抜けなかった。
「ハハハッ! なんです、なんです副長! 腰が治ったからって、さっそく我々に対しスクラムで力を見せつけようって言うんですかい?」とヒューゴが笑う。
「ち、ちがう! 私は今、お、
「フフフッ! 凄い気合いだ! こっちだって負けませんよ~、副長!」とサントーメも
負けじとスピナッチが腰のピストン運動をさらに激化させる。
彼自身の心の中での誓いどおり、元通りになったばかりの彼女のお女股を、再び“満身創痍の女王の住処”にするつもりだ。
否、それだけではなかった。血で血を洗う剣闘士の王者だった彼は、チャンスと見たらその隙を逃さない現実主義の性犯罪者だ。
この際だ! オイラも種付けして、双子でも産んでもらおう! 今ならまだイサベラの皇女股の
という思いで、スピナッチはイヴァノフの中で果てようとしていた。
この間、大観衆はこのスクラムの熱戦を見て一人残らず、「何だろう? ずいぶん降ろすのに手間取ってるな……」と不思議に思っていた。
まさか、神聖な議場で性交が行われているなど知る由もなかった。
その頃、エンリケ皇子が玉座に就いた。
礼儀作法をわきまえるファニチャードは、エンリケが腰を下ろすのを見てから、自分も円卓の椅子に着席した。
改めて彼らがイヴァノフらの方を見ると、そこではまだスクラムが解かれていない。
「ん? どうしたのだ?」と、エンリケがさすがに不審に思い再び腰を上げて確認するも、まだ『
ただただ、時が流れていった。
人々は、スクラムが解かれるのを待っていた。それは、まさに不可思議な時の長さだった。
――と、その時だった。観客席に女性の悲鳴が響き渡った。
「何事か!」と、盲目のトスカネリが後悔三銃士リーダーに確認する。
我が目を疑いながら、タイタスが言った。
「観客席に……露出狂です!」
その露出狂は覆面を被り、観客席の出入りゲートの上に器用に立ちながら、股間の見事な一物をも立てていた。
「
そして、高らかに叫んだ。
「我が名は
第68悔 『バック、オーライ!』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆