第52悔 とあるプロデューサーの夢想

文字数 2,471文字


 フェルディナンドの思考が()える。
 
 元々、燃え盛る炎のようなオレンジ色だった髪の毛が、さらにその色合いを増し赤毛に近く変化していた。
 
 「あんなに中まで桃色の牝穴(メスアナ)を見せられた日には、例えずにはいられない!」
 そう決意したフェルディナンドが、皇女の『皇女股(オメコ)』にプロフィールを与える。

 「アレは……そう! まるで、メスアナグループ『桃色ヴァギーナー』のピンク担当といった風情(ふぜい)!」

 そこで彼に更なる妙案が浮かんだ。一気にその構想を(まく)し立てる。

 「そうだ、そうだ! 実際に『桃色ヴァギーナー』のメンバーを集めよう! プロデューサーはこのオレが務める! プロデューサー時の異名は何にしよう……。『牝穴探偵』のままじゃアレだしな。……普通、探偵は表に出ないし。
 そうだ、『襞淫(ヒダイン)』というのはどうだ?! いかにもヤってくれそうな良い名前だよな! よし、最高のグループにするぜ!
 もちろんセンターは『皇女股(オメコ)』だな!
 それから、イヴァノフは紫色担当で決まりだ。
 で、後悔三銃士のキャスは、そうだな……いや待てよ。アレも綺麗なピンクローズだったなぁ……。
 しかし、『皇女股』がダンチなのは間違いないからなぁ……。どうする? キャスは赤色担当か? だが、そうなるとアレだな……もし――もしもだよ? 今後、加入が期待されるノニーの“器”がみんなのモノにさらに輪をかけて桃色だった場合には――宇宙最高のメスアナだった場合よ?
 皇女をセンターから外していいものなのか? うむぅ、確かに権威主義は良くないし、反面、実力主義は美しいかも知れないけど……。
 オレがプロデュースするグループでは出来るだけそういった内紛の起こりそうな問題をクローズアップしたくはないなぁ!
グループ内競争も大切かも知れないけどさぁ。
となると“器”の色でメンバーのイメージカラーを決めるのはナシかなぁ……。ピンク系が増えるだろうし――『桃色ヴァギーナー』なのだから当たり前ではあるけど――難しいなぁ……」

 などと言って夢想(むそう)はさっそく頓挫(とんざ)してしまった。

 この、本来『心の声』にすべき一連の構想を声にのせてしまっていたことにフェルディナンドが気づいたのは、竹馬の友の笑い声が聞こえてきたからだった。

 「アーハッハハハハ! さっきから、何をぶつぶつ言ってるんだフェルディナンド! 少し聞こえたぞ、『皇女股(オメコ)』がどうとかピンクがどうとか!」と、いつの間にか円卓に腰掛けているクリストフ・コンバス。
 すっかり意識を取り戻しているようだった。

 むっ、円卓の下から出てきたのかクリストフ、と今度は心の声に成功したプロデューサー、襞淫(ヒダイン)

 しかし、構想の全てを聞かれた訳でもなさそうなのは幸いだ。キャスの件を見ていた事を知られたら今後の関係が気まずくなりそうだし、『桃色ヴァギーナー』の件を聞かれていたら、名も力のある新進気鋭のデザイナーにアイディアを盗られていたかもしれない。
 いや、待てよ……。オレとクリストフで共同プロデュースってのはどうだ? その方が実現性が高そうだな……、などと妄想が続く。

 「しかし、いよいよフェルディナンドもノニー以外の女性に興味を持ち始めたようだな! 友として嬉しいよ! ま、そういう僕は皇女のアレとかはあんまり興味ないけどね」
 そう笑ってみせる親友に対し、フェルディナンドがやはり心の中で毒づいた。

 素知らぬ顔して何を言ってやがるんだ、クリストフのヤツ! オレのグループのメンバーの“器”をペロペロしてた(クセ)に! 友のよしみでアンナマリアには黙っておいてやるが……そういえば、アンナマリアの“器”はどんな感じなのだろう? 今まではノニー以外の女の子に全く興味がなかったから気にもしなかったけど。まぁ、彼女はパスリン美人だから“器”も美器かも知れないな! あとで機会があったら見たいもんだ。――とにかく、今後は心の中でクリストフの事を、“素知らぬ顔で器をペロペロするヤツ”……『バター人』と呼んでやろう。

 同時刻、フェルディナンドと同じような思いを胸中に抱えていたのが、トスカネリのすぐ後ろで玉座に立つ皇女を見上げていた後悔三銃士リーダー、タイタスだった。

 イサベラ皇女の母親はパスリン出身だと聞いたことがあるが、パスリン美人の血を引く者は、みんなあんなにアソコが綺麗なのか? じゃあ、シルレールのアソコも無毛で……いや、そう言えば若干の“若草”が生えてたな……。しかし、肝心の色は桃色で……柔らかくて……まさに桃の香りがしたりして……。ああ、シルレール……会いたいよ!

 皇女の『皇女股(オメコ)』を見ながら十六歳の少女を想い天幕を張るなどして贅沢(ぜいたく)な有様であった。

 あるいはクリストフも実は、心中穏やかではなかった。
 ちくしょう! アンナマリアとバルトロイが応援に来ていなければ、僕ももっと近くで『皇女股(オメコ)』を見ていたのに! ここからじゃ、イマイチよく見えない! ああ、『皇女股』! フェルディナンドは良いな! 視力を上げることが出来て!
 だけど、僕の場合――じっくり見たら見たで“妄夢(モゥム)”が登場し兼ねない。この大観衆の前で変身するのは危険性が高すぎる。まぁ、今日のところは我慢だ。デザイナーとしてもっと名を挙げれば、いつの日か『皇女股(オメコ)』との謁見(えっけん)のチャンスが来るだろう。
 それにしても『プッシー・ハイジーン』より綺麗な“城門”なんてあるんだろうか? 想像もつかないな! とりあえず僕が今日、この場で出来る事としては『皇女股(オメコ)』を僕流に『美麗門(びれいもん)』と名付けておくことぐらいかな……。

 
 それにしても……、とはフェルディナンド。
 
 あの姉弟のあの関係性、怪しいな……。徹底的に『皇女股(オメコ)』を取り調べる必要があるかも知れない。だとすると、探偵よりも強権的な……。

 そこまで言うと“器”への熱情で髪の毛を逆立たせたフェルディナンドが、ズボンのポケットに手を突っ込んでポーズを決めてから皇女に向かって叫んだ!
 
 「『女器刑事(ジョキデカ)』の登場だ!」



 第52悔 『とあるプロデューサーの夢想』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆

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登場人物紹介

フェルディナンド・ボボン


この物語の主人公。

これといった定職には就いていないが、近所では昔から情熱的な男として知られている。

その実体は……。


ノニー・ボニー


皇立ルーム図書館で働く司書で、フェルディナンドの幼なじみ。 

他薦により『ミス・七つの海を知る女』コンテストに出場し優勝。
見聞を広めるための海外留学の旅に出る。

その実体は……。


クリストフ・コンバス

フェルディナンドの竹馬の友。
皇国を代表するファッション・リーダーとして活躍中。

その実体は……。


24歳、185cm。 

エンリケ後悔皇子


リゴッド皇国の第二皇子。

人類の行く末を案じて、後悔することを奨励する。

16歳。13センチ。

トスカネリ・ドゥカートゥス


エンリケの家庭教師であり、「盲目の賢人」、「後悔卿」の異名を持つ後悔研究所所長。

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